発行:明石書店
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A5判 328ページ 上製
定価:5,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2527-9 C0015
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年04月
書店発売日:2007年04月09日
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紹介
真宗のジェンダー構造,特に宗祖親鸞とその家族・集団が位置した「坊守」を中心に据え,教団形成期から南北朝・室町にかけて真宗における「女性と仏教」を視座に真宗史の再構築に挑む。
目次
まえがき——「本書」の構成への釈明として
序 論 本書成立の風景と背景
1 一九七八年の風景・鎌倉新仏教中心史観の蹉跌
——笠原一男『女人往生思想の系譜』の風景から
2 一九八四年の風景・研究史の原点へ
——法然の「女人往生」への発言、何が議論になったのか
3 一九九一年の風景・研究史の中へ
——親鸞の性差別から「坊守縁起」の発見へ
第一部 「大谷一流」の周縁をめぐって
1 「大谷一流」の周縁をめぐって
——ゆるやかなジェンダー教団・真宗
2 親鸞の結婚説話「坊守縁起」の世界
——夫と妻・坊主と坊守の宗教活動
3 親鸞・恵信尼の念仏キャラバン
——夫と妻が行う「家族連れ」の宗教活動
4 中世仏教思想における親鸞の位相
——「僧のイエ」形成の宗教的前提として
5 「肉食夫帯の尼」の原影としての恵信尼
——恵信尼の生活・信心・宗教活動
第二部 中世真宗史における女性の属性
6 試論・覚信尼本願寺教団
——「肉食夫帯の比丘尼」の宗教活動として
7 絵系図の成立と仏光寺・了明尼教団
8 「坊守」の寺院・教団への内在化の淵源
——蓮如教団における女性の地位と役割
9 本願寺へ嫁いだ女性たち
——蓮如の妻たちをめぐりて
10 戦国期真宗における尼の諸相
——在家尼・後家尼・臨終出家
あとがき
前書きなど
あとがき
本書は、「女性と仏教」という視座に立ち真宗史を再構築するために、特にその素材として「坊守」を議論の中心に据えた文章を本編として10編、序論として3編を選んで一書となした。
第一部には、中世仏教なかでも真宗のジェンダー構造、特に宗祖である親鸞とその家族・集団が位置した位相から確かめる試行錯誤の作業・文章を配列してみた。第二部は、第一部で議論した真宗教団形成期の諸問題を踏まえて、南北朝・室町にかけて真宗における「女性と仏教」の具体的な展開を議論した文章を配列した。
これらの議論は、中世社会の体制教学たる顕密仏教が織り成す女性と仏教の様相に対置される、中世社会の宗教革新運動における女性と仏教の様相であったり、中世真宗教団がもつジェンダー構造であったりしている。これは、一九八四年を起点として「女性と仏教」という研究課題に対して、具体的には一九九一年という「時間」において私の関心が「定まり」ながらも、時々に変化しそうになる問題意識をさまよいながら書き溜めたものである。ゆえに、親鸞思想や、蓮如教団論が隠れた主題になっていて、私の真宗史への興味が尽きない形で、「坊守」の歴史的特色についての議論から現れている。
取り扱う領域は、一三世紀から一六世紀にかけての真宗という、日本仏教の一宗派ということではあるが、時間にしてはほぼ中世全体にわたる三〇〇年近く、地域は畿内から東国という列島社会の中心部、考えようによれば、厖大な時間と広大な地域を私は「ノゾキマワッタ」ことになる。
本書で扱った時期と地域の列島日本社会については、重厚な研究が蓄積していて、その研究成果を踏まえていけばもう少し豊かな結果をもつことができたのかもしれない。しかし、あえて自論に都合のよさそうな議論のみを取り込んで、真宗とともに列島中世社会を縦横にさまようこととした。これは、「女性と仏教」という視座で真宗史を考える作業を提起していくための止むを得ない作業として了解していただきたい。
序論は、本書の直接的な成立を「研究」のもつ背景から論じることとした。日本中世仏教史についての、直接的な影響を受けた先学の研究への論及と、私の位置関係を示した文章を並べてみた。初めて歴史学を志した時に読んだ笠原一男氏といった、はるかに研究を仰ぎ見てきた先学も含め、ほぼ同時期に相互の努力を語り合うという形で、惜しみなく未発表の知見や、見たことも無い史料を教示してくださった先学・同学の人びとが何人もいて、一九九二年という時期に、「本書」へつながるような、「一書」としてまとまるための課題意識の所有・維持が可能となった。そして、真宗史・一向一揆の碩学である笠原一男氏以外は、すべて、一向一揆・戦国期真宗研究と一九八四年から一〇年間にわたり開催された「研究会・日本の女性と仏教」に参加した先学・同学である。
当初、この変わった「序論」は存在しなかった。久留米工業高等専門学校で一緒に学び、現在は九州大学大学院で中国思想を専攻する木本拓哉さんの「すすめ」によった。
というのは、私は、当初は本書の中心となる議論は、「研究会・日本の女性と仏教」で行われた論議には、直接的には噛み合わない、と考えた。しかし、「仏教史に限らず歴史の研究には必ず、課題意識を共有する同時代の研究者による相互の努力により、明らかにするべき歴史像へ取り組むことによりのみ研究は前進する」ということも、脳裏に浮かんできた。それならば、課題意識を共有するための「序論」を書くべきである、と。若き朋のすすめによることとした。はや老眼鏡が必要になった、かつての若者の「思いで」の繰言かとも考えたが、研究の出発である笠原一男氏の『女人往生思想の系譜』の問題と、これについての研究状況について議論し、私の研究への筋道を示すこととした。
本来ならば、文章を書き改め全面的に統一的な叙述につとめるべきであろうが、とんでもないミスや文章の重複、目に余る表記の不統一や、舌足らずな表現の最低限の訂正・加除にとどめた。ただ、個々の論文のつながりや、時間が経つにつれて見えてきた旧稿が執筆された背景や、創ってきた風景を、初出の一覧、その後の研究の進展へコメントを兼ねながら、各論文の冒頭につけたした。「クドイ」かとは思うが。
遠藤 一
著者プロフィール
遠藤 一(エンドウ ハジメ)
1958年5月山梨県甲府市生まれ。龍谷大学文学部史学科仏教史学専攻卒業、1989年3月龍谷大学大学院文学研究科博士後期課程国史学専攻満期退学。龍谷大学非常勤講師をへて、1991年10月国立久留米工業高等専門学校一般科目文科系講師。現在、同助教授。浄土真宗本願寺派僧侶(福岡市中央区小笹3-13-42、長徳寺)。
【著書・主論文】
『戦国期真宗の歴史像』(永田文昌堂、1992年)、『仏教とジェンダー——真宗の成立と「坊守」の役割』(明石書店、2000年)、「民衆のなかの蓮如」(神田千里編『民衆の導師 蓮如』吉川弘文館、2004年)など。
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