発行:明石書店
この版元の本一覧
四六判 248ページ 並製
定価:2,000円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2513-2 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年03月
書店発売日:2007年03月06日
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紹介
親や世間との折り合いの中で自己を創出していかなくてはならない季節。そんな思春期を迎える人のために,ジェンダーや性教育などの性の問題と,校則や管理教育などの学校のシステムについて,著者自身の自己分析と大学生へのアンケートを通して考えていく。
目次
第1部
第1章 思春期とは
第2章 伊藤悟の自己分析 小学校編
第3章 伊藤悟の自己分析 「ひょうたん島」編
第4章 伊藤悟の自己分析 開成〜東大編
第5章 大学生のアンケートから──大人になったことを実感した場面
第6章 性的自立
第2部
第7章 八巻香織さんの講演
第8章 伊藤悟の自己分析 親との関係編
第9章 ジェンダーから自己分析する
第10章 伊藤悟の自己分析──ゲイであること
第3部
第11章 学校というシステム
第12章 校則のルーツ
第13章 日本の学校の戦後史
第14章 私たちは学校で何を教えられてきたのか
第15章 モラル・ハラスメント
あとがき
前書きなど
あとがき
私たちの人間関係を築いていくちからが急速に失われつつあります。本文ではあまり触れていませんが、インターネットは、たくさんの人が気軽に情報を発信できるようになった一方で、匿名性に寄りかかって、面と向かってはまず言えないような、いやみ、いやがらせ、中傷などの個人攻撃を自在にすることを可能にしました。そのために傷つけ合う関係が簡単に生まれています。
この本は、2005年に法政大学の非常勤講師として1年間行った「思春期」の授業(単位を取るのは3、4年生中心)をまとめたものなのですが、翌年2006年に科目の担当が「教育原理」に変わり、より若い世代である1、2年生と接するようになりました。そこで驚いたのは、上の世代に比べて、アンケートやレポートに自分が「いじめられた」あるいは「いじめた」という体験を書く学生が激増したことです(ゆうに7割を超えています)。「いじめ」を目の当たりにして傍観していたことを悔やむ学生もいました。
もはや「いじめ」は日常の1コマになり切っている、と言っても過言ではありません。
この本の中で私は、私たちが向き合っている状況、そして私たち自身のあり方は、社会と切り離して考えられるものではなく、生まれてから絶えず、社会の中で支配的な価値観に染められ、それに気づいて自分を回復し、また染められ……といったくり返しの中で私たちが生きている(成長していく)ことを述べました。
つまり、人間関係「力」の衰退には、これまでの歴史的な経緯と日本社会の特質が深くかかわっていて、個人の問題に帰してしまうことはできない、ということです。
それなのに、現代の状況を分析する論者たちはしばしば、「最近の若者は……」という何千年と繰り返されている陳腐な議論と一緒にして、道徳や愛国心を厳しくたたき込めばいいという、解決とはほど遠い地平へと論議を導いてしまっています。これでは解決の道はつけられません。
さらに言えば「議論」だけで解決しようとすること自体に無理があるのではないでしょうか。最後の章で述べた「モラハラ」は、「モラハラ」を受けているひとりの人間の「感じ方」をまずまるごと受け入れて、それを癒やすことから始めないと、追いつめられていくばかりです。それを、こういう条件に当てはまっていないからハラスメントではないとかあるとか、議論しても始まりません。まず緊急避難することすら必要になってきています。
私たちに今必要なものは、人のこころへ向かっていく「姿勢」であり、それを可能にする「想像力」です。その「想像力」を持つためには、私たちがぼーっとしていると、あっという間に取り込まれてしまう「社会の中で支配的な価値観」、言い換えれば「常識」「世間の目」をしっかり問い直し続けなければなりません。
常に自分の目の前で起こっていることを、「わからない」「関係ない」ではなく、「なぜ・どうして・何のために」そんなことになっていて、自分はそれに対してどう思っているのか考えていないと、いつのまにか自分が「モラハラ」するあるいはされる側になっている、そんな時代なのです。ここで、私が本文中で繰り返してきた「自己分析」がやはりキーワードになります。
自分らしく生きるためには、自分がどんなものに影響を受けて、今どんな考え方や行動指針を持っているのかをしっかりと知っておくことが不可欠であることをあらためて考えていただければ幸いです。
この本の出版に当たって、私の授業に出席して、リアクションカードやレポートなどで私に率直な感想を書いてくれて、私に発想の転換を迫る刺激を与えてくれた法政大学の学生のみなさんに心から感謝します。みなさんに、どんな風に「自分らしい」生き方を見つけるヒントを提示できるか「挑戦」する中で、私の授業も鍛えられていきました。そんな中で生まれたのがこの本です。
この本の内容は2005年4月から2006年1月までの授業をもとにしていますが、そこに至るまでに、2001年から出席してくれたすべての学生さんから受けた多様な反応が蓄積されてできたものと言えます。とりわけ、大学に来るまで「自分のことを語ってくれる教員に一度も出会わなかった」と、私が自分の経験を分析することに興味を示してくれたたくさんの学生さんに支えられて、授業の構成に自信を持つことができました。ありがとう!
2007年1月15日
伊藤 悟
著者プロフィール
伊藤 悟(イトウ サトル)
作家、音楽評論家、ひょっこりひょうたん島ファンクラブ会長、法政大学講師、翻訳家など、多彩な分野で活躍中。
高校講師・予備校講師時代から、学校の管理的な側面に疑問を持ち、10代と共に多様な活動を続けてきた。英語教育の改革にもエネルギーを注いでいる。
テレビを代表する人形劇『ひょっこりひょうたん島』に、オリジナル放映当時から熱中。詳細な記録を残して、1990年代のリメイクに協力。以後『ひょうたん島』に関するプロジェクトに多くかかわる(http://www009.upp.so-net.ne.jp/hyoutanjima/)。
現在は静岡県沼津市で、市内にひょうたん島に似た島があることから「ひょうたん島資料館」建設計画が進行中で、それを支援しており、その貢献により、市の「燦々(さんさん)ぬまづ大使」に任命されている。『ひょうたん島』に学んだ「自分らしく」「共に生きる」ポリシーをすべての活動の基本においている。
一方、自身がゲイであることから「すこたんソーシャルサービス」(http://www.sukotan.com/)を主宰、広くカウンセリング・電話相談やワークショップなどを行っている。
ヒット曲の収集が趣味で、洋楽・邦楽のジャンルを超え、所蔵レコード/CD枚数は推定数万枚におよぶ。現在、「ヒット曲が世界を変える」という個人ブログ(http://blog.oricon.co.jp/ito-satoru/)を展開中。アーティストへの愛にあふれたメッセージと、音楽業界への真摯な批判が共感を呼び、その人気に支えられ、『ヒット曲が世界を変える!』(雲母書房)として本にまとめられた。
主な著書に『3びきのこぶた式 世界一ラクラク英語がわかる本』(廣済堂出版)、『ひょうたん島大漂流記 1964-1991』(飛鳥新社)、『同性愛がわかる本』(明石書店)などがある。
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