分断・統一時代の思想と行動現代朝鮮の悲劇の指導者たち
徐 仲錫, 林 哲:訳, 金 美恵ほか:訳
発行:明石書店
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四六判 376ページ 上製
定価:4,200円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2504-0 C0336
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年02月
書店発売日:2007年03月05日
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紹介

解放直後から70年代にいたる分断と独裁の時代の朝鮮半島南部の政治指導者たちの思想と行動を再評価する。呂運亨,金奎植,金九,李承晩,■奉岩[■は曹の縦棒が1本],朴正熙,張俊河らにみるイデオロギーと政治手法,反日と従属,統一という課題へのアプローチなどから検証する。

目次

日本語版によせて
序文
南北で尊敬されている包容と信念の民族指導者・呂運亨
 1 歳月を経るほどに尊敬される民族指導者
 2 呂運亨の民族主義と米・ソの利害関係
 3 各界の力を合わせて建国を試みた包容の指導者
 4 議会主義を通じた「第三の道」構想
 5 広い識見と透徹した信念の持ち主
尤史 金奎植の南北協商
 1 南北協商に対する視角の相違
 2 民族自主連盟の結成と南北指導者会議の招集要求
 3 南の要人会談提議と北の連席会議の提議
 4 連席会議と南北協商
 5 結び
金九路線の挫折と歴史的教訓
 1 分断と金九の政治路線
 2 一九四五年以前の政治思想と活動の特徴
 3 金九路線前期—信託統治の先鋒に立って
 4 金九路線後期—南北協商に乗り出す
 5 結び
李承晩大統領の反日運動と韓国民族主義
 1 李承晩の反日運動をどう見るか
 2 李承晩政権と民族主義の関係に対するいくつかの議論
 3 反日運動の要因1—日本の態度
 4 反日運動の要因2—李承晩の反共主義
 5 反日運動の政治的性格
 6 おわりに—李承晩の反日運動と韓国民族主義
■奉岩の社会民主主義と「第三の道」[■は曹の縦棒が1本、以下同]
 1 ■奉岩の社会民主主義を研究する必要性
 2 第三勢力と進歩主義
 3 ■奉岩・進歩党の社会民主主義の国際的背景
 4 ■奉岩・進歩党の社会民主主義経済政策
 5 ■奉岩の「第三の道」を制約した国内外の環境
朴正煕の対日姿勢と歪んだ韓日関係
 1 なぜ朴正煕政権でのみ韓日会談反対デモがあったのか
 2 李承晩の反日政策と韓日関係
 3 張勉政府の経済第一主義と韓日会談
 4 軍政下の密室外交
 5 韓日会談反対と韓日協定締結
 6 韓日協定締結以後の特殊な韓日関係
 7 朴正熙政権の性格と韓日関係
 8 韓日関係正常化のための模索
分断体制の打破に身を捧げた張俊河
 1 呂運亨・金九と張俊河
 2 一九五〇年代—親米反共から批判的知識人へ
 3 4月革命期の二つの姿
 4 宿命のライバル—張俊河と朴正煕
 5 分断体制に対する洞察
 6 民族主義者の道
 7 実らなかった悲願
「悲しき大韓民国」
 1 記念館と資料館の差異
 2 資料を残すことを不可能にさせる環境
 3 早熟でとてもひどかった韓国の冷戦
 4 「金日成偽者説」が乱舞する社会
 5 「いっそむしろ怪物を」
訳者あとがき
索引

前書きなど

日本語版によせて
 現代史を扱った私の著作が日本で出版されることになり、大変うれしく思う。韓国と日本は最近、文化交流が盛んに行なわれるようになり、民間人の往来も頻繁になった。玄界灘の波高が高いせいか、隣国でありながら前近代の時代には、民間のレベルではほとんど交流がなかったことを想起すると驚きを禁じえない。
 しかし文化交流に比べ、韓日間の歴史理解は、未だに問題が残されているのではないかと考えざるをえない。近現代史の場合についていうと、一九四五年以後の現代史理解がより問題であると考える。おそらく、韓国現代史については、初歩的な知識もない日本人が少なくないだろうと思われる。このことも驚くべきことではないだろうか。
 現代の韓日関係においてはなぜそのように問題が多いのだろうか。一九五〇年代の韓日会談は歪みの連続であった。とりわけ韓国人は久保田妄言の記憶を通じて、日本について認識を悪化させた。韓国人は一九五〇年代の間中ずっと、反共反日デモに動員された。一九六四、六五年には規模の大きい激烈な韓日会談反対デモがあった。一九七〇年代には金大中(キムデジュン)拉致事件と朴正熙(パクチョンヒ)大統領夫人狙撃事件があり、一九八二年からは日本の教科書問題が何度も提起された。強制連行の補償問題などに加えて日本軍性奴隷問題も浮上した。そのような過程で誤解と偏見も多く重なるようになった。
 私は、幼ない頃から朝鮮を植民地にした日本についてたくさんの話を聞いて育ち、さらには、戦争責任のある日本は分断されず、日帝の侵略と太平洋戦争が一つの要因となって、朝鮮が分断されたのは言語道断であるという話も聞いた。朝鮮戦争で南と北の朝鮮人は筆舌に尽くしがたい苦痛を味わったのに、その戦争で経済発展しはじめた日本は、過去の問題にあまりにも冷淡であるという話も聞いてきた。また親日派らが社会のすべての分野を掌握し、価値観が混乱に陥り、腐敗と独裁が長期間続いているという批判が絶えることなく提起されてきた。日帝が残した軍国主義ファシズムの遺産も長い間、韓国社会を苦しめた。梶村秀樹先生や旗田巍先生のような方々もおられたが、一九五〇、六〇年代には朝日新聞や社会党のようなところでさえ、日帝の朝鮮侵略を反省するよりも、朝鮮を助けたのだというように考えているのを見て、朝鮮人と日本人の間には、あまりにも大きな障壁があると感じた。敗北する日まで、日帝に動員されていた在日朝鮮人が敗戦後、ひどい差別を受けてきたのも理解しがたいことであった。
 この本は、専門的な研究書と大衆向けの歴史書の中間くらいに位置するものといえる。実際は韓国においても現代史を研究できるようになったのは、一九八七年の6月民衆抗争以後だった。したがって、今でも現代史について分かりやすく書いた本に出会うのはむずかしく、概説書といえるくらいの本をみつけるのも稀なことである。この本には、重要人物を通して現代史の核心事項を理解しようという意図が込められている。
 この本に収録された人物たちは韓国人には広く知られているが、李承晩(イスンマン)や朴正熙を除けば日本では馴染みのない人びとがほとんどだろうと思われる。また、この本では、■奉岩(チョボンアム)[■は曹の縦棒が1本、以下同]を除けば、分断問題と韓日関係に集中されている。■奉岩の場合、平和統一を主張することで李承晩政権によって死刑に処されるが、この部分については多く知られているので、彼の社会民主主義に関する文章を収録した。
 民団と総連は日本で祖国分断の悲劇を象徴しているが、日本人は分断が、ドイツや中国とも異なり朝鮮人にどれほど大きな苦痛を与えているか、理解に苦しむことだろう。朝鮮人は一千年以上を同じ地域で単一国家として、それも中央集権化された国家生活をしてきたために、一九八〇年代まではほとんど全員が統一されなくてはならないと考えていた。戦争と離散家族の問題がもたらした苦痛も大きいものであった。それだけではない。南と北が互いに極度に対立する状態で生きねばならなかった。分断は、南北問題としてというよりはむしろ、それぞれの内部統合と政権維持に利用されてきた。このように朝鮮現代史において分断は重要な問題である。
 朝鮮現代史に関して日本で何冊かのよい紹介書が出ているのを知っている。一九四五年以後の韓日関係の書籍もある。十年ほど前に、私のルポ形式の文章を翻訳出版するよう準備してくれたことのある立教大学の石坂浩一教授が、南と北に関する一種の入門書として書かれたものも大変よいと思う。私の著作が、朝鮮現代史全体を理解するのにむずかしいようであれば、こうした本も参考になると思われる。私は昨年、簡潔なもので大衆向けに現代史概説書として「写真と絵で見る」という接頭語の付いた『韓国現代史』を刊行したが、この本も併せて読まれることを望む。

二〇〇六年四月 ソウルにて
徐仲錫

著者プロフィール

徐 仲錫(ソ ジュンソク)

1948年忠清南道 論山出身
1967年から1990年までソウル大学の単科大学である文理大学を卒業。
延世大学で修士、ソウル大学で博士の学位を取得。
1979年2月〜1988年9月まで東亜日報社の新東亜部記者と歴史問題研究所副所長および『歴史批評』編集主幹を歴任。現在は歴史問題研究所所長および成均館大学史学科教授。
主な著書としては、『李承晩の政治イデオロギー』(2005)、『尤史金奎植 2 南・北協商—金奎植の道、金九の道』(2000)、『新興武官学校と亡命者たち』(2001)、『■奉岩と1950年代(上下)[■は曹の縦棒が1本]』(1999)、『韓国民族運動研究—解放後民族国家樹立運動と統一戦線』(1991)などがある。

林 哲(リム チョル)

1946年生まれ
津田塾大学教授
朝鮮現代史、東アジア国際関係史専攻
〈著書・訳書〉
『東アジア近現代史』(共著、有斐閣)
『朝鮮戦争の起源 1』(共訳、シアレヒム社発行、影書房発売)
『20世紀を生きた朝鮮人』(共著、大和書房)
〈論文〉
「解放直後の朝鮮における『民主基地論』—統一戦線論を手懸かりに」(緑陰書房『朝鮮史研究会論文集』No. 31)
「東アジア冷戦と朝鮮における政治的暴力の起源」『東アジアの冷戦と国家テロリズム』(御茶の水書房)

金 美恵ほか(キム ミヘ)

1967年生まれ
津田塾大学国際関係学研究科修士課程修了
朝鮮現代史専攻

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