まんが発達障害のある子の世界 トビオはADHD
大橋 ケン:作, 林 寧哲:監
発行:明石書店
この版元の本一覧
A5判 264ページ 並製
定価:1,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2455-5(4-7503-2455-8) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年12月
書店発売日:2006年12月14日
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紹介

アスペルガー症候群と診断された作者自身が自らの体験をもとに,ADHDやアスペルガー症候群,学習障害など発達障害のある子の個性的な日常生活を,ユーモラスに愛情をこめてマンガで描き出す。発達障害を理解するための解説と用語集付。

目次

朝寝坊のトビオ
お母さんの苦労
体育の時間
給食当番
トイレの友だち
できるかな、この問題
はじめての検査
トビオの診断
おかしな夢子
地底探検
風船実験
ピース騒動
ハナオの部屋
がんばろう水泳教室
夢子の家の大掃除
読めない礼子
朝だ、学校へ行こう!
あとがき
解説(ランディック日本橋クリニック院長 林寧哲)
親と先生のための発達障害がわかる用語解説

前書きなど

あとがき
 近年、ADHDやアスペルガー症候群、自閉症、LDなどの発達障害についての社会的関心が高まってきています。それらに関する研究書、一般書籍も多く発刊されていますが、医療や教育機関の対応はいまだ後手に回っているのが現状です。
 発達障害に関するマンガを描いてみないか、と明石書店の大江道雅さんに言われたのが2004年の9月ごろだったでしょうか。そのとき、ぼくの頭の中にはなんのアイデアもありませんでした。
 ところが関連する資料を読みあさっていたとき、これは自分の体験が生かせる分野だということに気づき、制作を承諾したのです。このマンガのうち約8割が自分自身の体験をもとにしており、残り2割は、発達障害の子どもを持つ親たちから直接聞いたエピソードをもとに脚色したものです。もちろんマンガ化する際には、イマジネーションのフィルターを通しておりますので、このままの事実があったという意味ではありません。
 ボク自身はアスペルガー症候群であると診断されましたが、不注意優勢型ADHDとの混合型ではないかと思っています。脳波検査やMRI、SPECT、WAIS—Rなども実際に受けて、客観的な診断をしてもらいました。アスペルガーにつきものの、鬱病もかかえています。ちなみに「鬱」という漢字は鬱る(しげる)、鬱ぐ(ふさぐ)、鬱ん(さかん)、鬱り(かおり)と読むことができ、草木が鬱蒼と茂って光が射さず薄暗いさまを意味するようです。英語のdepression(鬱病)のように、外からの力で気分を押し下げられるような言葉とはニュアンスが違います。
 ぼくは自分自身を理科系人間だと思っています。物語など、その主人公に感情移入するのがなかなか難しいので、小説やエッセイを読むより百科事典や辞書や図鑑を読むほうが好きで、映画やドラマよりドキュメンタリーや科学番組を好みます。動物や昆虫が大好きで、それは今でも変わりません。歴史や地理など文科系の分野に興味を持つようになったのは、成人して絵の仕事を始めてからです。作文と絵を描くことは物心ついたころより好きでしたが、20代の後半まで、言葉がなかなか声となって出てきませんでした。たとえば人に挨拶されても、即座に適切な応対をするという単純なことができませんでした。世間一般の人がごく普通にこなすような、反射神経がなかったのです。話し言葉の問題は今でもかかえていて、全然しゃべらなかったり、よけいなことを言い過ぎたりするようです。日本語より英語で挨拶したほうが楽なときさえあります。
 小学校、中学校と転校が多く、新しい環境になじむのに苦労しました。特に人間関係においてはいじめられたり、逆にいじめる側にまわったり、それに加えて交通事故やケガなど、トラブルが絶えない日々でした。多動のほうは成長するにしたがっておさまりましたが、やはり不注意や衝動性は少しも軽減しません。自分のことは、ハナオとトビオを足して2で割ったような性格だと思っています。いまでも日常生活で困っているのは、片づけられないことと金銭管理ができないこと、時間の観念がないこと、物をよく紛失すること、よけいなことをしゃべりすぎることです。それに聴覚過敏もあります。なんでもない音に、突然心臓がひっくり返るほど驚いたりします。
 制作するにあたり、最初は文章でストーリーを書きました。そうやって書いた30話を、発達障害に関係のある話だけセレクトして、約半分に絞り込みました。話の内容としてはおもしろくても、本のテーマとかけ離れているものは割愛しました。制作途中で、ゲームやその他のことに興味が移ってしまい、予定より進行がずいぶん遅れてしまったことを申し訳なく思っています。こういった長丁場の仕事は、そばに叱咤激励する人物がついていてくれないと難しいようです。
 診断の部分があまりに簡略だったので、より詳しく描写することにしました。一番苦労したのはこの診断の部分です。医学の専門的な内容を詳しく書こうとすると、読者には難解すぎ、簡単にわかりやすく説明しようとすると、正確さを欠くことになります。結果的にやや未消化になってしまったのはいなめません。また知能検査に関しては、著作権や検査の性格上、ほとんど具体的なことは描けませんでした。この分野については、ほかに良書がいくつも出版されていますので、そちらを参考にしてください。
 脳神経科学はまだ新しい学問で、発達障害の本当の原因も正確には解明されていません。こうであろうという仮説の域を出ないのです。したがって、治療法も対症療法しかなく、本人の努力と、周りの家族、友人などのサポートが重要になってきます。でもこの分野は、日進月歩の最先端の分野です。いまに新薬や画期的な治療法が開発され、発達障害に限らず、心の問題や、政治も宗教も芸術も脳神経科学ですべて説明がつく時代がやってくるかもしれません。これさえあればすべて解決! そんなことを考えるとわくわくします。
 監修につきましては、ランディック日本橋クリニック院長の林寧哲先生に大変お世話になりました。そして日本LD学会認定特別支援教育士(ADHD、LD)の秋山由美子先生(東京都文京区教育推進部)からもご助言をいただき、感謝しております。また、ADHDの自助グループWing Brainのメンバーの方々にも大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

2006年11月1日
大橋ケン

関連リンク

大橋ケンHP
ランディック日本橋クリニックHP

著者プロフィール

大橋 ケン(オオハシ ケン)

イラストレーター、マンガ家。1957年高知県生まれ。広島大学で物性物理を専攻。卒業後、畑違いの商業美術の世界に入る。ADHDのため、自分は会社勤めに向かないと自覚していたからである。仕事に関してはすべて自己流で、右も左もわからない状態から出発したため、師とする人物はいない。クリエイターで特に強く影響を受けた人物もいない。ただ、仕事をするうえで参考にし、興味を持った人物・作品は数え切れない。最近は、イタリアのバロック彫刻と漢字の世界にはまっている。
http://www.geocities.jp/daikiti_ooatari/index.html

林 寧哲(ハヤシ ヤスアキ)

ランディック日本橋クリニック院長。1993年北里大学医学部卒。1994年より北里大学病院に入局後、1996年より国立霞ヶ浦病院、1998年より国立療養所晴嵐荘病院、2003年より医療法人社団聖嶺会立川病院、2004年に同病院を退職後、ランディック日本橋クリニック開業。2003年より福島県立医科大学医学部神経精神医学講座に在籍。
http://www.l-n-c.jp

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