発行:明石書店
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四六判 336ページ 上製
定価:3,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2427-2(4-7503-2427-2) C0336
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年10月
書店発売日:2006年10月20日
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紹介
児童福祉の現場で子どものメンタルヘルスの問題に取り組んできた児童精神科医の経験と洞察をもとに,児童福祉領域における子どもの精神保健の現状と課題を考察。治療やケアを必要とする子どもに専門的なサービスを提供する新たなシステムの構築を提唱する。
目次
まえがき
第1部 総論——児童福祉と子どもの精神保健の概念
第1章 児童福祉領域での子どもの精神保健ニーズ(小野善郎)
第2章 児童福祉領域における精神保健活動(小野善郎)
——これまでの活動と新たな試み
第3章 児童福祉と子どもの地域精神保健(小野善郎)
——システム・オブ・ケアの概念
第2部 児童福祉の現場での精神保健の現状と課題
第4章 児童相談所における精神科医療のニーズ(犬塚峰子)
第5章 児童相談所の相談事例の精神医学的評価(小野善郎)
第6章 児童養護施設におけるメンタルケアの現状(生地 新)
第7章 児童自立支援施設の入所児童の精神医学的問題(冨田 拓)
第8章 情緒障害児短期治療施設における精神科医療活動(川口孝一)
第9章 子どもの地域精神保健活動の実践と展望(本間博彰)
——児童相談と子どもの地域精神保健クリニックの実践をとおして
第10章 精神保健福祉センターと子どもの精神保健(亀岡智美)
第11章 児童虐待と子どもの精神保健(岡本正子)
——性的虐待を中心に
第12章 児童虐待と子どもの精神保健(西田寿美)
——児童精神科治療施設における現状
編者あとがき
前書きなど
まえがき
児童福祉は、もともとは保護を要する児童、いわゆる要保護児童を対象とした社会サービスであったが、戦後のわが国の児童福祉は要保護児童の援護や健全育成にとどまらず、あらゆる児童と家庭の問題を対象として発展してきた。戦後まもなく制定された児童福祉法によって全国の都道府県、政令指定都市に設置された児童相談所は、児童福祉の最前線の公的機関として地域社会の中で活動を続けながら、その時代時代の社会で問題になった子どもに関する問題に取り組んできた歴史がある。終戦直後の戦災孤児・浮浪児の保護に始まり、非行少年の処遇、心身障害児への福祉サービス、不登校児のケア、そして近年では被虐待児の保護とケアが主要な任務となり、児童福祉の概念はますます広いものになってきている。
児童福祉がこのように幅広い概念に発展してきた要因としては、わが国の子どもを対象とした社会サービスの発展の経緯と関連があると思われる。子どもを対象とした最も基本的な社会サービスは教育であり、そして身体的健康に対しては小児科医療が発展し、その後予防医学的な観点から乳幼児保健や母子保健が全国に普及してきた。しかし、教育や保健が対象とする以外の問題に対しては、新たなシステムができるまでは児童福祉がカバーしてきた傾向がある。子どもの精神医学は医学の世界では最も新興の分野の一つであり、専門的な医療機関や子どもの精神保健システムが未整備であったために、子どものメンタルヘルスに関する問題の多くは児童福祉が関わってきた。昭和五〇年代から急増した不登校児に対して、教育システムの中で教育相談や適応指導教室などの体制が整うまでの時期に、児童福祉が不登校児の相談や支援に大きなエネルギーを注いできた事実は、このような児童福祉の特性の好例といえる。
しかし、子どものメンタルヘルスの問題は、今日の社会においてますます重要性が高くなってきており、より専門的な対応が求められてきている。残念ながら、子どもの精神保健システムの発展が遅れているわが国では、子どものメンタルヘルスの問題が依然として児童福祉の中で対応される状態が持続している。しかし、近年の児童虐待の急増は、圧倒的な精神保健ニーズを持った子どもたちが児童相談所や児童福祉施設に溢れる事態を来たし、その対応に追われる毎日になっている。今こそ、児童福祉の領域における子どものメンタルヘルスの問題に目を向け、治療やケアを必要とする子どもたちに対して、専門的なサービスを提供するシステムを構築しなければならない時であろう。
本書は、児童福祉の現場で子どものメンタルヘルスの問題に取り組んできた児童精神科医たちの経験と洞察をもとに、児童福祉領域における子どもの精神保健の現状と課題をまとめたものである。児童相談所、児童養護施設、児童自立支援施設、情緒障害児短期治療施設などの児童福祉施設に加えて、子どもの精神保健に密接に関連する医療機関や精神保健福祉センターでの取り組みを紹介しながら、実践的なレベルで子どもの福祉とメンタルヘルスの問題が考察されている。読んでいただければ、今日のわが国の児童福祉の現場における子どもの精神保健ニーズがいかに高いものであるか、そこで働く児童精神科医たちにはいかに大きな期待と役割があるかがお分かりいただけると思う。この現実は、もはや児童福祉が事実上の精神保健システムとして機能していることを示唆しているだけでなく、より専門的なサービスを向上させる必要性をも強く訴えている。
専門的な精神科医療には、いつもスティグマが付きまとっていて、子どもの場合も精神科医に診せることには抵抗を感じる親も少なくない。アメリカでも長い間子どもの精神科医療は「児童相談」という言葉で表現されて、より直接的な表現を回避してきた歴史がある。わが国の児童福祉が子どものメンタルヘルスの問題を取り込んできたことも、同じようなスティグマを回避する意味もあったのかもしれない。しかし、児童福祉システムの中であろうが精神保健システムの中であろうが、子どもの示す情緒・行動上の問題に対して、児童精神医学が必要に応じて対応できるシステムがなければならない。形にとらわれるのではなく、子どもの本当の福祉のために、児童福祉と精神保健がどのような形で発展していかなければならないのかを考えることが本書の大きな目的である。私たちの社会が子どものこころの健康を守るために、今何をしなければならないのかについて、一人でも多くの人たちに考えていただければと思う。
小野 善郎
著者プロフィール
小野 善郎(オノ ヨシロウ)
児童精神科医、医学博士。日本児童青年精神医学会認定医。
1959年愛知県生まれ。1984年に和歌山県立医科大学を卒業し、国保日高総合病院精神神経科、和歌山県立医科大学助手(神経精神医学)を経て、1997年より和歌山県子ども・障害者相談センターに勤務。
現在、総括専門員兼子ども診療室長。和歌山県立医科大学非常勤講師、日本児童青年精神医学会理事を務めている。
専攻は、児童青年精神医学、精神医学、発達障害医学。主な研究領域は、児童虐待の臨床的研究、児童福祉領域における子どもの精神保健。
訳書にキャスリーン・W・ジョーンズ著『アメリカの児童相談の歴史——児童福祉から児童精神医学への展開』(明石書店、2005年)がある。
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