発行:明石書店
この版元の本一覧
A5判 168ページ 上製
定価:2,000円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2355-8(4-7503-2355-1) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年06月
書店発売日:2006年06月05日
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紹介
利用者がケアを自分でコントロールするオルタナティブな福祉の方向性とは何か。障害者自立支援法の成立という,障害福祉の制度政策の激変期にあたる日本社会において,真に当事者主体といえる福祉モデルを創出するための概念整理とモデルの提示を試みた労作。
目次
はじめに
序章 障害福祉/運動 2003−2005
1 上限問題——補助金による政策誘導の行き詰まり
2 支援費制度——障害福祉の利用制度化/給付制度化
3 統合問題——障害福祉を保険化する政策動向
4 障害者自立支援法の「グランドデザイン」
第1部 障害者の自律/自立生活支援と福祉の保険化
第1章 障害者の自律/自立生活支援
1 自律/自立生活支援の概念について
2 障害者施策と自律/自立生活支援
3 障害福祉制度と自律/自立生活支援
第2章 障害福祉と社会福祉基礎構造改革
1 福祉政策の文脈における社会福祉基礎構造改革
2 財政政策の文脈における社会福祉基礎構造改革
3 社会福祉基礎構造改革と福祉の保険化
第3章 障害福祉の保険化
1 介護保険制度制定の背景
2 社会保障体制の再編と福祉の保険化
3 障害福祉の保険化とその規範的制約
4 障害福祉の保険化と日本型コーポラティズム
第2部 障害福祉の利用制度化/給付制度化
第4章 利用の原理と給付の基準をめぐる考察
1 受給者本位
2 必要と割当
3 選別の方法
4 必要に応じた/必要な者すべてに対する分配
第5章 必要と割当の調整基準とメカニズム
1 サービス費用の供給における割当と必要
2 ミクロのレベルでの基準とメカニズム
3 マクロのレベルでの基準とメカニズム
第6章 給付調整と受給支援
1 利用制度化/給付制度化された福祉における給付調整
2 利用制度化/給付制度化された福祉における受給支援
第3部 パーソナルアシスタンスとダイレクトペイメント
第7章 自律/自立生活支援とそのためのシステム
1 パーソナルアシスタンスとダイレクトペイメント
2 日本のパーソナルアシスタンスとホームヘルプサービス
3 アシスタンスとエージェンシー
第8章 自律/自立生活支援のシステムモデル
1 ダイレクトペイメントのためのシステムモデル
2 セルフディレクテッド・サービス
3 自律/自立生活支援のための機構
第9章 障害福祉の給付制度の再編
1 自律的福祉
2 給付制度の再編
あとがき
引用・参考文献
前書きなど
はじめに
障害者権利条約成立のカウントダウンが始まり、それと呼応するように、脱施設・脱医療、合理的配慮義務を含めた積極的な差別禁止、政策決定における当事者参画の進展など、施設や医療のコントロールから逃れ、障害者の権利として自律/自立する生活を獲得しようとする国際的なうねりが高まっている。
一方で、世界的な福祉国家の再編成と新自由主義的な政策動向を背景とし、福祉サービスの市場経済化及び財政支出の抑制が、地方分権化と自己決定/自己責任論と表裏一体で進行しており、それは障害の分野においても例外ではない。
そのような状況を背景として、英国・北欧・北米などを中心に、自立生活運動を中心とする障害当事者運動からの提起を踏まえて、利用者が有償のケアラー(carer)を直接雇用するパーソナルアシスタンス(personal assistance)や、その雇用費用を現金で支給するダイレクトペイメント(direct payment)などが、これまでの福祉サービスとその供給のシステムのオルタナティブとして、制度化されるようになってきている。
障害当事者が、日常生活を自らのコントロールのもとにおき、施設に入らず、家族の介護に頼らず暮らすことを自立生活(independent living)だとすれば、そのために求められているのは、「あたりまえ」の生活人としての経済的自立(independence)と、日常的行為の延長上にある支援(assistance)をうけての自律(autonomy)生活であり、そのためのこのような援助を、これまでの家族介護の補完を暗黙の前提とし、専門家によるコントロールや施設という援助基盤を核とするものと区別して、「自律/自立生活支援」と呼ぶこととしたい。
本書は、このような自律/自立生活支援を、現在の障害福祉のオルタナティブとして、自律の力が弱いとされる障害者を含め利用可能にすることを、社会福祉基礎構造改革と福祉の利用制度化/給付制度化の延長に展望することをめざし、3部構成による検討をおこなう。
まず、序章では、「ヘルパー基準額(上限枠)設定問題」(岡部 2004a)から、介護保険との統合問題を経て障害者自立支援法の制定にいたる2003年から2005年までの障害福祉の政策動向について記す。
第1部では、社会福祉基礎構造改革という政策の再解釈及びその基本戦略となった「福祉の保険化」(伊藤 2004他)を障害の分野まで拡大することの是非について考察をおこなう。
第1章では、国内外の政策動向を踏まえつつ、自律/自立生活支援の概念を提起し、検討の枠組を整理する。第2章では、福祉政策と財政政策の両者の文脈から戦後日本の福祉政策の動向について整理をおこない、その作業を踏まえつつ、理念的には「事業者本位から利用者本位へ」として示された社会福祉基礎構造改革のパラダイムシフトのスキームが、地方分権化と国庫負担抑制に転じた財政政策に対抗し、福祉の自主財源と中央のコントロールを確保するために、それまでの補助金に基づく制度を伝統的な社会保険制度に基づいて再編しようとする「福祉の保険化」であったことを確認する。第3章では、この「福祉の保険化」について、介護保険制度制定の背景及び社会保障体制の再編の検討を通じて考察し、現在の日本において、介護保険制度とは基本的条件が異なる障害の分野においても「福祉の保険化」をすすめることは、障害福祉の再分配の抑制に結果する懸念が高く、「社会保険年金中心主義」(広井 1999)の更なる拡大の是非に対する検討が、福祉の再分配の在り方に対する国民的な議論と合意形成を前提としつつ求められていることを論じる。
第2部では、利用制度化/給付制度化された福祉サービスの原理やメカニズムについての検討をおこない、給付制度における「受給者本位」及びそれを担保する受給調整システムとそのモデルについて論じる。
第4章では、「受給者本位」「必要と割当」「選別の方法」「必要と分配」といった福祉サービスにおける利用の原理と給付の基準を中心とする基本的な概念の検討と整理をおこなう。第5章では、利用制度化/給付制度化された福祉サービスにおいて必要と考えられるマクロとミクロのそれぞれのレベルにおける「必要と割当の調整基準とメカニズム」について論じる。そして、これらの検討を踏まえ、第6章では、給付調整における「第三者判定モデル」と「交渉決定モデル」というふたつのモデルを導くとともに、サービスの利用者が必要な給付を獲得するための受給支援という観点から、ケアマネジメント及びアドボカシーの在り方についても考察をおこなう。
第3部は、「自律/自立生活支援」の具体的な形態をめぐり、パーソナルアシスタンス/ダイレクトペイメントに対する諸外国の制度やモデルを参照しつつ、その概念及び提供システムについて整理をおこない、それを日本で実現するための検討と、給付制度再編の枠組を提示する。
第7章では、英国のコミュニティケア改革におけるダイレクトペイメントの経緯及び日本におけるホームヘルプサービスと介護保障運動や自立生活運動の関係整理を踏まえながら、日本においても、パーソナルアシスタンス/ダイレクトペイメントを、障害福祉サービスの利用制度化/給付制度化の延長上に求めるために必要な概念と機能の整理をおこなう。第8章では、諸外国の代表的なパーソナルアシスタンス/ダイレクトペイメントのシステムモデルについての検討をおこない、日本におけるパーソナルアシスタンス/ダイレクトペイメントのために必要な、自律/自立生活支援のための機構の在り方について考察する。第9章では、ダイレクトペイメント/パーソナルアシスタンスを、障害福祉におけるオルタナティブとするための概念整理をおこなう。
関連リンク
著者プロフィール
岡部 耕典(オカベ コウスケ)
1955年生まれ
1979年東京大学文学部社会学科卒業
2006年東京都立大学大学院社会科学研究科社会福祉学専攻博士課程修了
現在 リソースセンターいなっふ主宰(http://www.eft.gr.jp)
東京学芸大学教育学部・立教大学コミュニティ福祉学部非常勤講師
博士(社会福祉学)
障害をもつ子どもの父
《主要論文》
「支援費支給制度における『給付』をめぐる一考察——『ヘルパー基準額(上限枠)設定問題』を手がかりに」(「社会政策研究」編集委員会編『社会政策研究 4』東信堂、2004年)
「支援費制度における利用者本位の受給支援システムの検討——アメリカの自己決定/受給者支援本位モデルを参照して」(『社会福祉学』45巻1号、2004年)
「福祉サービスのための給付制度を『受給者本位』とすることについての考察——支援費制度と介護保険制度の検討を中心として」(障害学研究編集委員会編『障害学研究 2』明石書店、2006年刊行予定)
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