版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊
イギリスの児童虐待防止とソーシャルワーク 田邉 泰美(著) - 明石書店
.
【利用可】

書店員向け情報 HELP

書店注文情報

注文サイト:

在庫ステータス

在庫あり

取引情報

直接取引:なし

出版社への相談

店頭での販促・拡材・イベントのご相談がありましたらお気軽にご連絡ください。

イギリスの児童虐待防止とソーシャルワーク (イギリスノジドウギャクタイボウシトソーシャルワーク)

このエントリーをはてなブックマークに追加
発行:明石書店
A5判
424ページ
上製
定価 6,300円+税
ISBN
978-4-7503-2349-7   COPY
ISBN 13
9784750323497   COPY
ISBN 10h
4-7503-2349-7   COPY
ISBN 10
4750323497   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2006年5月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2015年8月22日
このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

イギリスにおける児童虐待防止の史的発展と現状を,社会的・経済的諸条件の影響を受けながら発展,修正されてきたソーシャルワークの法的・専門的枠組みに児童虐待防止におけるソーシャルワーカーの対応を併せ,それらをオーバーラップした視点から考察する。

目次

はじめに
本書の構成
 序章 児童虐待とは何か
  ――イギリスの児童虐待の定義について
 〔1〕児童虐待の定義がなぜ重要なのか
 〔2〕児童虐待の定義の変遷
 〔3〕児童虐待の定義の拡大(広義の定義)
 〔4〕広義の定義と児童虐待防止ソーシャルワーク
1部 児童虐待防止ソーシャルワークの成立過程
 1章 戦前における家族への介入
  ――児童虐待防止協会の活動と児童保護
 〔1〕家族への介入と児童虐待防止協会
 〔2〕児童虐待防止協会の設立過程
 〔3〕ロンドン児童虐待防止協会と1889年児童虐待防止保護法
 〔4〕NSPCC(全国児童虐待防止協会)の活動とその展開
 〔5〕NSPCCの歴史的役割とその意義
 2章 家族への予防介入(予防的ソーシャルワーク)の展開
 〔1〕家族への予防介入の始まり
 〔2〕家族への予防介入の成立過程
 〔3〕家族への予防介入の成立
 〔4〕児童虐待防止ソーシャルワークの成立に向けて
 3章 マリア・コルウェル事件
  ――児童虐待を社会問題として政府や国民に認知させた衝撃的な虐待事件
 〔1〕マリア・コルウェル事件の社会的背景
 〔2〕マリア・コルウェル事件の概要
 〔3〕マリア・コルウェル事件のソーシャルワーク的課題
 〔4〕マリア・コルウェル事件と児童虐待防止ソーシャルワーク
2部 児童虐待防止ソーシャルワークの展開と質的変化
 4章 児童虐待防止ソーシャルワークの展開
 〔1〕児童虐待防止ソーシャルワークの実情:専門性の低下と職員の不足
 〔2〕児童虐待防止ソーシャルワークの危機:ソーシャルワークに対する信頼の崩壊
 〔3〕児童虐待防止ソーシャルワークの展開:家族分離による子の保護
 〔4〕児童虐待防止ソーシャルワークの展開:家族支援による子の保護
 〔5〕児童虐待防止ソーシャルワークの課題
 5章 ジャスミン・ベクフォド事件――消極的介入が子の虐待死を招いた事件
 〔1〕ジャスミン・ベクフォド事件とは:消極的介入から積極的介入へ
 〔2〕ジャスミン・ベクフォド事件の概要
 〔3〕ジャスミン・ベクフォド事件のソーシャルワーク的課題
 〔4〕ジャスミン・ベクフォド事件と児童虐待防止ソーシャルワーク
 6章 クリーブランド事件
  ――積極的介入が親と子の人権侵害を招いた事件
 〔1〕クリーブランド事件とは:積極的介入の難しさ
 〔2〕クリーブランド事件の概要
 〔3〕クリーブランド事件のソーシャルワーク的課題
 〔4〕クリーブランド事件と児童虐待防止ソーシャルワーク
3部 1989年児童法における児童虐待防止の展開と市場原理の影響
 7章 1989年児童法と児童虐待防止ソーシャルワーク
 〔1〕1989年児童法の挑戦:子の福祉は至高の考慮事項
 〔2〕1989年児童法の成立過程
 〔3〕1989年児童法の基本理念
 〔4〕児童虐待防止に関する諸命令
 〔5〕1989年児童法の展開と児童虐待防止ソーシャルワーク
 8章 市場原理と児童虐待防止ソーシャルワーク その1
  ――保守党政権下における児童虐待防止ソーシャルワーク
 〔1〕市場原理の導入
 〔2〕国営保健医療サービス及びコミュニティ・ケア法とソーシャルワーク
 〔3〕児童虐待防止ソーシャルワークの動向
 〔4〕1989年児童法と児童虐待防止ソーシャルワーク
 〔5〕児童虐待防止ソーシャルワークと市場原理の接点
 〔6〕購入者/提供者分離システムと児童虐待防止ソーシャルワーク
 〔7〕市場原理と児童虐待防止ソーシャルワーク
 9章 市場原理と児童虐待防止ソーシャルワーク その2
  ――労働党政権下における児童虐待防止ソーシャルワークの課題と展望
 〔1〕ブレア政権「第三の道」とは
 〔2〕ブレア政権「第三の道」のポジィティヴ・ウェルフェアとは
 〔3〕ブレア政権「第三の道」の福祉改革:『社会福祉サービスの現代化』計画
 〔4〕ブレア政権「第三の道」の福祉改革とNPM(ニュー・パブリック・マネジメント)――ベストバリューに至るまで
 〔5〕ブレア政権「第三の道」の福祉改革とソーシャルワーク
 〔6〕児童虐待防止ソーシャルワークの課題と展望
4部 児童虐待防止ソーシャルワークの実践
 10章 ACPC(地区児童虐待防止委員会)の役割と実務
 〔1〕ACPCとは
 〔2〕ACPCの成立過程
 〔3〕ACPCの理念、組織構造、活動
 〔4〕ACPCの活動内容とその展開:オクスフォドシャーACPC
 〔5〕ACPCのジレンマ
 〔6〕ブレア政権の福祉改革とACPC
 11章 児童虐待防止ソーシャルワークの方法
 〔1〕協働としての児童虐待防止ソーシャルワーク
 〔2〕1999年『児童虐待防止のための協働』:ニードをもつ子の再考
 〔3〕児童虐待防止ソーシャルワークの手順と協働
 〔4〕1999年『児童虐待防止のための協働』と児童虐待防止ソーシャルワーク
 12章 リスク・アセスメント・モデルの理論と実際
 〔1〕リスク・アセスメント・モデルの目的と開発された社会的背景
 〔2〕リスク・アセスメント・モデルの開発:サリー県の実態調査
 〔3〕リスク・アセスメント・モデルの内容
 〔4〕リスク・アセスメント・モデルの実際:研修プログラム
 〔5〕リスク・アセスメント・モデルと児童虐待防止ソーシャルワーク
 13章 FGC(ファミリー・グループ・カンファレンス)の理論と実際
 〔1〕新しいソーシャルワーク手法としてのFGC
 〔2〕FGCが取り入れられた歴史的背景
 〔3〕FGCとは何か
 〔4〕FGCと児童虐待防止ソーシャルワーク
 終章 イギリスの児童虐待防止とソーシャルワーク
 〔1〕試行錯誤としての児童虐待防止
 〔2〕イギリスにおける児童虐待防止の積極的な側面
 〔3〕イギリスにおける児童虐待防止の課題と展望
補 遺
あとがき

前書きなど

はじめに
 イギリスにおける児童虐待防止は、約100年前の児童虐待防止保護法(1889年)に始まる。しかし、児童虐待が社会問題として認知されたのは戦後であり、今日の児童虐待防止制度を築き上げていったのが、児童虐待(死亡事件)調査報告書であった。イギリスでは、児童虐待死亡事件が起こると必ずメディアが取り上げ、世論の高まり→政府や地方自治体による調査委員会の設置→調査報告書の提出と勧告→制度・実務改革という手順が踏まれる。調査報告書の勧告は法的な拘束を伴うものではないが、地方自治体は勧告を受入れ、財源事情が厳しいにもかかわらず、制度・実務改革に取り組む。しかし、児童虐待(死亡事件)調査報告書が提出されると、いつも世間の厳しい批判にさらされるのがソーシャルワーカーであった。わが子を虐待死させた親よりもソーシャルワーカーに厳しい批判が向けられ、時には職を辞してまで責任を負わなくてはならないのは、ソーシャルワーカーの社会的責任の大きさを物語るといえよう。しかしそれは、批判する側にも批判の質が求められてくることを意味する。マリア・コルウェル事件の調査委員会の1人であるスティーヴンスン女史は、次のように述べている。「指導監督に失敗(マリアを虐待から救えなかった)したことは専門職チームにとって言い訳はできない。しかし、マリアやクーパー夫妻に、そして望むらくはケプル夫妻に同情を示す社会は、多大な緊張関係下に最も困難かつ複雑な課業を遂行させるために社会が雇用する者たち(ソーシャルワーカー)にも、同じ同情を寄せるべきである。」「ソーシャルワーカーを批判するのは容易である………しかし、ソーシャルワーカーたちは過重な業務を負担している場合、社会において子どもが虐待の危機にさらされていることを忘れてはならない。」と。スティーヴンスン女史の指摘は、ソーシャルワーカーのおかれている社会的かつ経済的な諸条件や制約にも目を配り、それを丁寧に紐解いて理解し、解決の方法を模索してゆくことが、ソーシャルワーカーにとって、そして何よりも子どもにとって、良い結果をもたらすことに繋がるはずである、というふうに聞こえてくる。
 このような理由から、本書は、イギリスにおける児童虐待防止の史的発展と現状を、ソーシャルワークの視点から考察している。もちろんそれは、社会的かつ経済的な諸条件から考察することも意味する。というのは、児童虐待防止は、より精確に言えば、児童虐待防止におけるソーシャルワーカーの対応は、その屋台骨となるソーシャルワーク(の法的・専門的枠組み)より強く影響を受けるが、ソーシャルワークは社会的かつ経済的な諸条件の変化に影響を受けながら、発展、変化し、軌道修正されてゆくからである。とくに、児童虐待防止の場合はそうであり、これらとの関係を抜きにして児童虐待防止を語ることはできないはずである。

著者プロフィール

田邉 泰美  (タナベ ヤスミ)  (

1961年 京都に生まれる。
1987年 明治学院大学社会学部社会福祉学科を卒業。
1992年 佛教大学大学院社会学研究科博士後期課程(社会学・社会福祉学)、単位取得。
2000年 園田学園女子大学短期大学部幼児教育学科教員、現在に至る。
社会学博士(社会福祉学専攻)。
専攻:児童福祉、保育実習、イギリスの児童虐待防止/ソーシャルワーク。

上記内容は本書刊行時のものです。