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民衆のアメリカ史 上巻
1492年から現代まで
原書: A PEOPLE'S HISTORY OF THE UNITED STATES: 1492-Present
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2005年1月
- 書店発売日
- 2005年2月3日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2011年9月16日
書評掲載情報
2012-03-04 |
朝日新聞
評者: 池上善彦(編集者) |
2012-03-04 |
朝日新聞
評者: 池上善彦(編集者) |
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紹介
コロンブスによる「発見」以後の北米の歴史を,支配するマジョリティの側からではなく,「民衆」の側からとらえ直す。有色人種,女性,マイノリティの目にアメリカの歴史はどう映るのか。上巻は1492年・独立・南北戦争を経て第1次大戦参戦前まで。
目次
日本語版への序文
日本語旧版(一九八二年)への序文
第1章 コロンブスとインディアンと人間の進歩と
黄金の幻影/ラス・カサスの証言/歴史をどう見るか/南北アメリカで行なわれたこと/すぐれたインディアンの文化
第2章 人種境界線(カラー・ライン)を引く
奴隷船、ヴァージニアに着く/アフリカからアメリカへ/奴隷化への抵抗/反乱への絶えざる恐怖
第3章 下積みのひどい状態にあった人たち
ベーコンの反乱/みじめな年季奉公人/広がる貧富の差/抗議する民衆/既成事実となった人種差別
第4章 暴政は暴政だ
増大する植民地の富/富める者への怒り/印紙税法反対暴動/反イギリス闘争の指導者たち/独立宣言と民衆
第5章 革命に似て……
ワシントン軍の兵士たち/下層階級の反乱/独立革命の階級性/排除されるインディアン/新国家のなかの民衆/シェイズの反乱/憲法をめぐる論議/言論の自由のゆくえ
第6章 人目につかない抑圧
開拓初期の女性/女性の従属的地位/反抗者たち/女性らしさの礼賛/初の女性労働者のストライキ/束縛に抗して/奴隷制廃止運動と女性/公正な世界に向かって
第7章 草が育ち川が流れるかぎり
全インディアンは団結せよ/白人は恥じなければならない/土地を売って金を受け取るつもりはない/ちょっとどきなさい/緑野から荒野へ/踏みにじられる条約/セミノール族の戦い/涙の旅路
第8章 われわれは征服によって何一つ奪っていない……万万歳だ
リオグランデ川まで前進せよ/膨張に走る世論/戦争反対者/兵士たちの幻滅/略奪と無差別殺戮と/指導者の栄光と民衆の悲惨
第9章 服従なき奴隷制、自由なき解放
奴隷たちは幸福だったか/抵抗の諸形態/黒人奴隷のしたたかさ/なぜ私は奴隷なのか/高まる奴隷制廃止論/リンカンの選択/奴隷解放宣言/リンカンさんはどこへ行っちまったのか/北部と南部の妥協/新たな奴隷化の始まり
第10章 もう一つの内戦
反地代闘争とドアの反乱/ジャクソニアン・デモクラシー/労働者大衆の蜂起/女性労働者の闘い/南北戦争下の労働者と企業家/労働運動の広がりと一八七〇年代の不況/全国を揺るがした鉄道労働者の反乱
第11章 強盗貴族と反乱者
赤貧から金満家へ/会社資本主義の確立/新産業時代の教育/流れ込む新移民/一八八六年の蜂起/南部の労働者/プルマン・ストライキ/農民の大連合/高揚するポピュリズム/人種問題とポピュリスト/ポピュリズムの崩壊
第12章 帝国と民衆
海外市場への期待/キューバ革命と実業界/アメリカ=スペイン戦争と労働者/キューバに群がる商売人/フィリピン問題/黒人兵士の悩み
第13章 社会主義者の挑戦
文学者たちの体制批判/搾取工場/AFLとIWW/IWWの闘争/ローレンスの勝利/労働運動から社会主義運動へ/女性の社会主義者/女性解放主義の発展/団結する黒人/「革新主義」の時代/改革運動の本質/アメリカ史上最大の争議
地名・事項索引
人名索引
前書きなど
日本語版への序文 私は自分の本を日本の皆さんに紹介することができて幸せに思います。私は日本における平和と正義を求める運動と長期にわたって交流してきました。その交流が始まったのは、一九六六年六月のことで、そのとき私はアメリカ南部における人種差別反対運動にともに携わってきた友人ラルフ・フェザーストーンと一緒に招かれて日本に来ました。招いてくださったのは、ベ平連でした。ベ平連は私たちと同様に、ベトナム戦争に反対していた日本の市民のすばらしいグループでした。私たちは札幌から沖縄まで日本国中をまわり、一三の都市で講演してベトナム戦争とアメリカ合衆国における反戦運動について語りました。 その年の夏に、私は妻や幾人かのアメリカ人と一緒に、広島の原水禁世界大会に招かれました。それはとても感動的な経験でした。世界中の核兵器の廃絶に向けて闘うことを約束して、多くの国ぐにの人びとが参集し、その経験をともにしました。 そのとき以来ずっと私は日本の友人たち、とくに倦むことを知らない人権の唱道者小田実や、生涯一貫して平和と正義にかかわってきた有能な編集者森和子とも交流してきました。 私は本書がこのような大義のために役立つよう願っています。私は歴史の研究を、それ自体を目的としてではなく、また過去を再構成する試みとしてでもなく、現在を照らす一つの方法として見てきました。労働者階級の家族のなかで私自身が育ったこと、アメリカ空軍の爆撃手として第二次世界大戦に参加したこと、南部で教職に就き、人種的正義を求める運動に参加したこと……、これらのことすべてから私は、新しい世界を導き出す一つの方法として、歴史から学び歴史を教えたいと思うようになりました。 私はアメリカ合衆国の歴史には、アメリカ人に対してのみでなく、日本や他の国ぐにの人びとに対しても伝えるべきことがたくさんあると信じます。合衆国の歴史は、私たちが政府に頼っていては、自分たちの問題を解決することはできないことを示唆しています。というのは、政府は一般に金持と有力者の利益に奉仕しているからです。また合衆国の歴史は、国ぐにが戦争を始めるのは、民主主義と自由を促進するためではなく、帝国を拡大し、経済的利益を増進するためであることをわれわれに告げています。 本書で私が強調しているのは、指導者の重要性ではなく、ふつうの人びとの行動です。重要な社会正義の問題が解決されなければならない場合に、問題が解決されるのはどの場合でも、政府の先導によってではなく、市民――それも組織をつくり異議を申し立て、なにか重要な変化がおこるまであくまでもやり抜く市民――の犠牲によってであることを、私は明らかにしています。このことは、アメリカ史のなかから出てくる教訓ではなく、日本をふくむあらゆる国の歴史から出てくる教訓です。 私はこの歴史書が、人びと、とりわけ来るべき世代の若い人びとが、戦争に反対し、軍国主義に反対し、人種的不正義に反対し、男性優位に反対する闘いに、また先住民の権利のための闘いや、きれいな地球のための闘いに立ちあがるきっかけとなるようにと念じています。 私は本書を私の孫たちだけでなく、日本の子どもたちにも献呈したいと思います。二〇〇四年冬ハワード・ジン
上記内容は本書刊行時のものです。