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「君が代」の起源
「君が代」の本歌は挽歌だった
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2005年1月
- 書店発売日
- 2005年1月22日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2016年12月28日
紹介
「君が代」はほんとうに天皇賛美の歌なのか。「日の丸」の起源を万葉集までさかのぼり,挽歌としてのその本質を明らかにする。学校現場での強制が進むなかで,議論に一石を投じるユニークな「君が代」論。
目次
序文 画期をなす「君が代」の本質の解明(山本晴義)
《第一部 対談篇》
「君が代」の源流をめぐって――「賀」の歌でなく「挽歌」であった(藤田友治+梅川邦夫+久保下多美子)
一、「君が代」の経過と最近の情勢
二、「君が代」の制定
三、「君が代」挽歌論
四、「君が代」の源流の歌
五、古代人と現代人の死生観
六、戦争で亡くなった人々への想い
《第二部 論文篇》
1 「君が代」の源流(藤田友治)
一、「君が代」の由来
二、「君が代」讃歌の二重構造
三、入来神舞の構造
四、生き続ける「石」・「珠」信仰
五、鍾乳洞起源説
六、「君が代」と教育
2 「君が代」考(溝口貞彦)
一、「さざれ石の巌となりて」について
1 問題の所在
2 平安人の考え方
3 歌詩の思想的背景
二、この歌の基本的性格
1 挽歌と賀歌
2 用語の検討
3 蓬莱山思想との結びつき
三、その後の「君が代」をめぐる動き
3 「君が代」の二重構造――挽歌から讃歌へ(藤田友治)
一、はじめに
二、「君が代」の源流を訪ねて
三、「君が代」の分析と『万葉集』
四、「君が代」論の反響―讃歌と挽歌―
五、挽歌と相聞歌
六、久米の若子
七、戦闘する紀氏集団の悲劇
八、挽歌を賀の歌に変容させた紀貫之
九、古代人の死生観――転世
一〇、まとめ
4 『万葉集』の死生観(梅川邦夫)
一、死後の世界への想い
二、現身と自然
三、日常と死
四、死と魂
五、挽歌と相聞歌
六、霊魂から祖霊、そして神へ
七、まとめ
資料 「君が代」関係年表
参考文献
あとがき
執筆者紹介
前書きなど
あとがき一 「君が代」の歌詞はどこからきたのだろうか。その歌の源流を根本的に検討してみた。果たして、そもそも「祝い」の歌であろうか。われわれの先入観を問い質(ただ)してみた。 「君が代」は『古今和歌集』巻七、「読み人しらず」にあるのはよく知られている。しかし、本書で明らかにしたように『万葉集』、『古今和歌集』をはじめさまざまな検討を重ね、研究してみると「君が代」はそもそも賀の歌ではなく、元来は死者を悲しんで、枢を挽くときにうたわれる「挽歌」であった。本歌『万葉集』 挽歌妹が名は 千代に流れむ 姫島の子松が末に 苔生すまでに(二二八) が、歴史・哲学研究所にて各論文を読みこんだうえに対談をおこなったものである。(中略) 第二部は1の藤田論文を起点として、「君が代」の歌詞への問いと二重構造論を溝口氏が2で根本的に受け止められて挽歌論へ発展した画期をなすものである。さらに、3で藤田は「君が代」の源流と挽歌論を日本古代史上の謎が多い紀氏の歴史の解明とあわせておこなった。4の梅川論文は歴史・哲学研究所にて三年間、毎月行ってきた折口研究・『万葉集』の研究をまとめたもので、本書の挽歌論の背景にある『万葉集』の死生観を明確にしている。三 本書はさまざまな方法を用いて「君が代」へのアプローチをしている。文学上の『万葉集』・『古今和歌集』はもとより、「君が代」の源流を考察している。考古学、東洋思想、道教、哲学等を含めテーマに対し、あらゆる学を用いて総合的に解明しようとしている。それが本書の特徴であり、読者へのメッセージである。戦いで死んで逝った人々に想いを刻み、無惨に逝った人々への挽歌を現在、こともあろうに「賀」の歌として、しかも強制されて歌う生徒・学生が「不幸」と感じるのは私たちだけだろうか。「君が代」論の議論が真剣に起こることを期待したい。
上記内容は本書刊行時のものです。