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江戸・東京の被差別部落の歴史 浦本 誉至史(著) - 明石書店
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江戸・東京の被差別部落の歴史 (エドトウキョウノヒサベツブラクノレキシ) 弾左衛門と被差別民衆

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発行:明石書店
四六判
248ページ
上製
定価 2,300円+税
ISBN
978-4-7503-1810-3   COPY
ISBN 13
9784750318103   COPY
ISBN 10h
4-7503-1810-8   COPY
ISBN 10
4750318108   COPY
出版者記号
7503   COPY
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2003年11月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2015年8月22日
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紹介

江戸の町の長吏(ちょうり・被差別民)の頂点にたった弾左衛門。江戸開府から明治維新にいたるまで,彼の支配の構造と系譜をたどり,江戸の被差別部落の暮らしとその解放への取り組みをつぶさにかたる。資料に「弾左衛門文書」等当時の貴重な文書を付す。

目次

まえがきにかえて

第一章 弾左衛門のはじまり
一 徳川氏の江戸入府とともに始まった弾左衛門の歴史
二 弾左衛門とは何者か

第二章 弾左衛門体制の確立にむけて
一 「享保非人出入」のはじまり
二 弾左衛門体制確立に向けた重要事件
三 「享保非人出入」の決着
四 弾左衛門の「栄光と憂鬱」

第三章 被差別民の町、浅草新町
一 上野の花見
二 浅草新町の歴史
三 浅草新町の様子
四 新町の住民――長吏
五 新町の住民――猿飼

第四章 江戸の非人たち
一 近世都市江戸と非人たち
二 浅草非人頭車善七
三 非人の生活
四 非人と町人
五 松平定信と「無宿・野非人」

第五章 大道芸を生業とした乞胸と願人
一 かなり「ユニーク」な乞胸という存在
二 天保の改革と乞胸
三 願人という存在から考える、近世という時代

第六章 弾左衛門体制――支配と自治の体制
一 長くは続かなかった「最盛期」
二 江戸の都市政策に深くかかわった弾左衛門
三 武州鼻緒騒動と弾左衛門体制

第七章 自主的解放を求めて
一 「身分引上げ」求めて活動した弾左衛門
二 新政府に独自の身分解放策提示した弾左衛門
三 中央集権と相いれなかった被差別民の自治


資料
資料1『弾左衛門由緒書』『頼朝公御証文写』
資料2『浅草非人頭車千代松由緒書』
資料3『寛政一一年乞胸頭仁太夫書上』『文政四年下谷山崎町名主書上』

あとがき

前書きなど

 江戸時代の被差別民というと、皆さんはどんなイメージをお持ちだろうか。「厳しく差別され、人のいやがるような仕事を押し付けられていた」、あるいは「社会外の存在として、一般の農民や町人たちから排除されていた」といったものだろうか、それとも「芸能や皮革の製造など、中世以来の技能を継承した職能集団」だろうか。 また同時代、関東・江戸の被差別民の社会には弾左衛門という支配者がいたのだが、この制度についてはどうだろう。ちなみに少し前までは「被差別民の専制的支配者」とか、「幕府の下で農民や町人管理の一翼を担った。幕府はこのことを通じて民衆間の分断を図った」といった説明が有力だった。しかし本当にそういった説明で、弾左衛門制度のすべてが言い表せるのだろうか。 本書がこれから皆さんと一緒に見ていくのは、まさにこうした疑問渦巻く近世都市江戸の被差別民社会である。 近世の江戸には、弾左衛門を中心にした被差別民の社会が形成されていた。それは、弾左衛門や非人頭たちを支配者とし、長吏・非人・猿飼・乞胸といった個性的被差別民によって形成された一種の自治空間だった。もちろん、江戸の町では被差別民だけがこうした独自の社会を持っていたわけではない。本書では考察の対象にしていないが、町人たち自身が町年寄・町役人を中心にして地域ごとに自治的な社会を作って生活していた。 ただ、これまで被差別民の社会と町人の社会は、別々に考察されることが多かった。両者の間に差別・被差別という垣根があったからだ。相互に関連するものというより、対立するものとして別個に理解するほうが自然に見えたのである。そして、いざ江戸の町全体を俯瞰するとなれば、町人たちの社会こそ主役で、被差別民の社会はどちらかと言えば脇役的に紹介されてきた。 江戸の人口比率を考えれば、一○○万の人口の半分は町人、半分は武士である。その他の身分、たとえば宗教関係者や被差別民は、江戸時代の全期を通じて少数派であった。だから、被差別民の存在を無視しないまでも、武士や町人を中心に江戸の町を語ること自体は誤りではないように思える。しかし、本当にそうなのだろうか。 最近の歴史学の分野では、「そうとは言えない」という意見も有力である。弾左衛門を中心とした被差別民の社会は確かに少数派だったし、差別もされていた。しかし一方で、都市江戸を機能させるうえで重要な役割を担っていた。「もし仮に、被差別民の社会を欠いたものとして都市江戸を想定するとして、はたしてそれで江戸は成立しただろうか」。 本書では、こういう疑問について皆さんと一緒に考えてみたいと思う。 まず、江戸の被差別民の社会と、その骨格をなす弾左衛門支配が、どのように形成されていったかを見てみようと思う。 少なくとも戦国末期の関東には、後の弾左衛門に匹敵するような「唯一の支配者」はいなかった。どうして江戸時代に入ると弾左衛門体制という形でそれが成立するのだろうか、またその成立までの過程はどのようなものか、あるとき突然幕府によって作られた「身分支配のための道具」だったのだろうか、さらに弾左衛門自身はこの体制の確立にどのような役割を果たしたのか、こういうことを考えてみたい。 次に、確立した弾左衛門体制のもとで、江戸の被差別民がどんな生活をしたか、その実像を探ってみようと思う。被差別民の町「浅草新町」の成り立ちや、そこに暮らした長吏・猿飼たちのこと、また江戸のほとんどの町に住んでいた非人たちの暮らしと役割、そして芸能の民である乞胸・願人のことを調べてみようと思う。彼ら彼女らの仕事や生み出した製品、技術、そして芸能はどんなものだったのか、都市江戸にとって被差別民の社会が果たした役割とは何だったのかを見ていきたい。 最後に、幕末・維新に向かう江戸後期の歴史を、被差別民社会から見ていきたい。この時代は、弾左衛門を中心とする江戸の被差別民たちにとっても、まさに激動の時代だった。その中で弾左衛門や江戸の被差別民たちはどんな選択をし、どう生きていこうとしたのだろうか、目前に迫った時代の転換を前に、彼ら彼女らはいったい何を求めたのか、そういうことを考えたい。 おりしも、二○○三年は徳川幕府の成立から四百年目の年であった。「開幕四百年」が江戸を考える起点として意義深い年かどうかについては、いろいろな意見があるだろう。私自身、疑問を感じないでもない一人だ。しかし少なくとも、都市江戸・東京について多角的に探ってみようという時に、同時に被差別民の社会を考察することは無意味ではないと思う。なぜなら、きっとそれが現代の東京を考えるうえで、大きな意味を持つからだ。 読者の皆さんが都市江戸の全体像を俯瞰するうえで、そして被差別民の実像を知るうえで、この本が一つの素材となれば幸いである。まえがきにかえて 著者

著者プロフィール

浦本 誉至史  (ウラモト ヨシフミ)  (

1965年兵庫県生まれ、1984年から東京都に在住。1989年に部落解放同盟東京都連合会に就職、現在に至る。これまで発表した論文は「江戸・東京の部落史年表」(社団法人東京部落解放研究所紀要『すいへい・東京』第20号)等。本書が初の単行本作品である。

上記内容は本書刊行時のものです。