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第24回 本屋フリペづくりのすすめ

2016年3月に始まった本連載、もともとは1年ということでご依頼いただいたものでしたが、途中で1年延長になりましたので、今回で丸2年となりました。1回に1紙誌を取り上げるのを基本としていましたが、途中、いくつかをまとめて紹介する回もありましたので、全部で50ほどの本屋フリペを取り上げることができたことになります。

ほかにもまだ紹介できていない本屋フリペはあるのですが、2年と区切りのいいこともありますので、毎月更新の連載は今回で最後とし、今後は、紹介したい本屋フリペなりテーマなりがありましたときにつど更新という不定期連載のかたちとさせていただくことになりました。

次回更新が未定ということで、実質的には最終回のような回ですので、今回は、本屋フリペのつくり方講座のようなものをお届けしたいと思います。

つくり方といってもそんなたいそうなものではありません。本屋フリペは、誰がどのようにつくってもいい、完全にフリースタイルのメディアで、それこそが魅力なわけですから、つくり方も何もないのですが、ただ、興味はあるけれど何をどうしたらいいかわからない、じっくりと企画を練っている時間やつくり方を調べている時間がない、といった声も聞きますで、そのような方々の参考に多少でもなれば、ということで、気軽に挑戦できそうなつくり方の一例を紹介したいと思います。

(あくまで一例です。このようなものでなくてはならない、ということではありませんので、こんなつくり方もあるくらいの感じでお読みください。)
 

■用紙
A4判のコピー用紙が入手しやすく、費用も安価ですみますね。たくさん刷ることを考えないのであれば、クラフト紙や色紙などを利用する手もあります。ただ、地に色がついているものや質感のあるものは、印刷ののりがよくなかったり、手書きしづらかったりすることもありますのでご注意を。いずれにしても、サイズはA4判が安価で取り回しもきくのでおすすめです。
 

■判型
A4用紙を折らずにそのまま使う手もありますが、A4判1面を広く使うのはデザイン的にもけっこう工夫が要りますし、店頭での配布時に場所もとります。A5判(二つ折り)、A6判(四つ折り)のどちらかがいいでしょう。前者はPR誌と同じサイズ、後者は文庫と同じサイズですので、店頭での置き場を確保しやすいサイズになりますね。

↑(左)二つ折りだとA5判(4ページ)、文芸誌・PR誌などのサイズで、(右)四つ折りだとA6判(8ページ)、文庫のサイズです。
 

■ページ取り
以降は、A4判の用紙を四つ折りにしたA6判の仕上がりを前提に話を進めます。

四つ折りにしてできた部分を1ページとカウントすると、8ページになります。8つを個別に使ってもいいし、2ページ分、4ページ分を組み合わせるなどしてサイズを変えて使う手もあります。

↑縦書き(右開き)の場合はページ取りはこのようになります。(ページの境、折り目がわかりやすいよう、エンピツで線を入れています。)両面コピーする場合は、1ページの裏に2ページがくるようにします(横書きの場合も同様)。

↑こちらは横書き(左開き)の場合。

↑冊子状にこだわる必要はありません。内側を、縦書きの場合は右上から、横書きの場合は左上から順に使ってもいいですし、上左のように、上下2段に分けて大きく使うのも、さらに上右のように内側全面を1つのシートとして使うのもいいでしょう。内側だけ、向きを変えて横置きにするのもありです。店内図を使って売り場を案内するなどの場合は、横置きの紙面が合う場合がありそうですね。
 

■構成
8ページものの場合、最初のページは表紙、最後のページは裏表紙(奥付)とし、記事をそれぞれ単ページの個別のものにすれば、6つの要素を入れればいいということになります。何を入れてもいいですが、たとえば以下のようなものを組み合わせれば、すぐに埋まりそうですね。音楽や映画、食など、本と相性のいいジャンルの情報を組み合わせるのもいいでしょう。
 

●本の紹介

  • 新刊紹介
  • おすすめ本紹介
  • 書評
  • 新刊発売カレンダー

●お店の紹介

  • 売上ランキング
  • 店内フェア案内
  • 店内イベント案内
  • 店内売り場案内

●その他

  • スタッフ日記
  • 4コママンガ
  • 編集後記
  • 寄稿(お店にゆかりのある作家・出版関係者などからの寄稿)
  • 投稿(お客さんからの投稿)

第8回で紹介した吉祥寺書店員の会「吉っ読」発行のフリペ「ブックトラック」の例を紹介します。
 

  1. 表紙(短詩+イラスト)
  2. 記事1
  3. 記事2
  4. 記事3
  5. 記事4
  6. 記事5
  7. 記事6
  8. 裏表紙(編集後記+奥付)

 

「ブックトラック」は上記をスタンダードとしつつ、号によって構成をアレンジしています。たとえば、過去の号では、記事3と記事4(ページ4〜5で、ちょうど真ん中の見開きになります)のスペースを吉っ読に縁のある方のインタビュー・対談記事などにあてていたこともありました。また、記事6のところには、各店のフェアの案内をまとめて載せることもありました。

奥付は必ず入れるようにするといいと思います。発行店・発行者・発行日の情報を入れるといいでしょう。オリジナルのイラストなどを誌面に入れた場合は、描き手のクレジットもお忘れなく。
 

■編集・レイアウト
すべて手書きでというのがいちばん手軽そうですが、実は手書きで、見やすい字体・サイズでバランスよく字を配置し、決められた枠内におさめるのはけっこう大変です。時間をかけたくない、かけられない、という場合は、パソコン(ワープロ)のほうが簡単です。ワープロの場合、一度、フォーマットをつくってしまえば、次からはそれをベースに新しくするところだけを入れ替え、更新していくやり方でつくれますので、複数のスタッフでつくったり、担当者が変わってしまったりした場合にも向いています。

本屋フリペのつくり手のなかには、InDesignやIllustratorのような、出版の現場でも使われているレイアウトソフトを駆使してつくっている方もいらっしゃるかもしれません。それはそれですばらしいことですが、そういうソフトを自由に使える環境にあり、技術的にもすでに習熟しているという方を除けば、基本的には、作業者を選ばない、担当者が変わっても環境を引き継ぎやすい、ということで、できるだけ一般的なソフトを使ってつくるのがおすすめです。Word、Google Document、AppleのPagesなどです。吉っ読の「ブックトラック」では、編集作業は筆者が担当していますが、ぼくでなくても誰でもまねしてつくれるようにということで、Wordだけを使ってつくっています。

手書きとワープロを組み合わせるのもいいですね。手書きでつくる場合でも、タイトルやページ枠などはワープロで定型のものをつくっておいて、中身だけ手書きで埋めるとすれば、制作時の負担も軽減されますし、各号に統一感も生まれ、定期刊行物っぽくなります。

なお、次の仕上げとも関わりますが、もし、小さいサイズでつくるのが苦手、大変という場合は、大きめのサイズでつくってそれを縮小コピーしてください(A3でつくってA4にコピーする、など)。縮小コピーすると、描線やフォント、写真などがぐっと引き締まって、シャープに見えます(ただし、つぶれてしまわないよう、注意が必要です)。

逆に、小さくつくられたものを拡大コピーすると、線がぼけたり、小さいときには気にならなかった不要な線やゴミなども拡大されてしまったりなど、見た目が粗くなりますので、ご注意を。(大きめのサイズでつくったものを、仕上がりに合わせて縮小するのは、商業出版でも一般的に用いられているやり方です。「ブックトラック」もそのようにしてつくっています。)
 

■仕上げ
A4判用紙の四つ折りは、そのまま折りたたむだけでもいいですが、「ブックトラック」では、以下に写真でお見せするように、天の袋に、折り目の中心ぎりぎりのところまで切れ目を入れて、「ホッチキスで綴じられていないのに、なんとなく冊子状になっている」という状態にして配布しています。

ホッチキスの針は、とめてある部分が紙にひっかかって浮いてしまったりすることがあり、お客さんがけがしたり商品が傷ついたりなどの心配もあります。この方式だと、綴じる手間もありません(切れ目を入れるのと、どっちが面倒か、という問題はありますが……)し、単に紙を重ねてあるよりは冊子感も出せるということもあり、おすすめの方法です。

もちろん、冊子状にしない(ページを順に読ませない)場合は、このような作業は必要ありませんので、そのまま適当なサイズに折って配布すればいいということになります。

↑「ブックトラック」方式。天の袋部分のうち、紙の中心の折り目ぎりぎりのあたりまで、写真の赤い部分あたりにカッター、ペーパーナイフなどで切れ目を入れます。

↑上のように切れ目を入れると、こんな感じに開きます。紙をただ重ねた場合と違い、ばらけませんし、読みやすくてなかなか便利です。
 

■「権利」について少しだけ
最後に、権利に関わることにもちょっとだけふれておきます。本屋フリペは、本屋のみなさんが主にお客さんに向けて情報発信するメディアですので、内容は、お店オリジナルのもの、手がける方が独自に書いたり描いたりしたものであるのがいいと思います。

写真などを使う場合。書影(本の表紙写真)は、厳密にはいろいろありますが、本を紹介する際に書影を添えるのは業界慣習的にもOKとされることが多いようです。ただし、書影の一部から特定の要素を抜き出したり(たとえば、描かれている人物を切り出したり)、加工(反転、トリミングなど)したりはNGです。

書影以外の要素で、出来合の何かをそのまま紙面に掲載する場合は、注意が必要です。SNSなどではコミックのキャラ、コマ絵などがけっこう自由に使われている例があります。不正利用としてよほど目立つものでないかぎり、とくに出版社や権利者からの指摘もなく、そのままになっているケースもたくさんありますから、ついつい、あんなふうに使っていいんだ、と思ってしまうかもしれませんが、基本的には、許可なく、コミック作品などから特定のキャラの絵を抜き出したり、一部か全体にかかわらず紙面をそのまま掲載したりすることはできません。

文章の場合も同様です。今週の新聞の書評にはこんなのがありましたという掲載情報を載せるのはいいですが、特定の書評を許可なく全文掲載したり、新聞の紙面のコピーをそのまま載せたりしてはいけません。

ネットに上げないんだし、お店で紙で配るだけなんだから別にいいじゃん、ばれないじゃん、と思われる方もいるかもしれませんが、最近では、こんなのを入手したとSNSに写真入りであげる行為はごく当たり前になっていますし、いったん一般公開したものは、どこにどう広がり、誰の目にふれるかわかりません。ある本やその書き手の応援のつもりでつくったものが、結果的に、誰かの権利を侵害してしまったり、誰かを不愉快な気持ちにさせてしまったりがあってはいけませんからね。

「本屋フリペ」は、受け取る人(主にお客さん)が気持ちよく楽しめるものであるだけでなく、そのなかでふれられている人(紹介されている作品の作家や出版社など関係者)が目にしても同じように楽しめるもの、うれしく感じられるものであるのがいちばんですね。
 

いかがでしたでしょうか。本屋フリペには興味があるけれど、つくり方がわからずにいた、どこから始めればいいかわからなかった、という方がもしいらっしゃったら、本稿がそのようなみなさんの参考に少しでもなれば、本屋フリペの愛好家としてとてもうれしいです。
 
 

第23回 (番外編)「本屋フリペ」いろいろ その2

第23回 (番外編)「本屋フリペ」いろいろ その2

前回、第22回では、「(番外編)「本屋フリペ」いろいろ」として、定期刊行ではない本屋フリペを3タイプに分け、そのうち、フェア連動タイプのものをご紹介しました。今回は、2のタイプ、「特定の作家・作品・ジャンルなどをおす目的でつくられたもの」のうち、特定の作家を応援するタイプのものと、3「その他」の例をいくつか紹介します。
 
 
作家本人の書店回りがめずらしいものでなくなりつつあるなど、ひと昔前に比べ、書き手と売り手の距離はぐっと縮まった感があります。以前ならば、必ず間に版元関係者が入ったものですが、最近では、作家が単独で書店を訪問したり、書店員と交流したりすることも当たり前になって久しいですね。

そのような時代にあっても、書店員との距離の近い書き手とそうでない書き手がいますが、次に紹介する村山早紀さんは前者のタイプ、それも、もっとも書店員との距離が近い作家の一人といって間違いないでしょう。ツイッターなどのSNSを使って、多くの書店員と日常的に交流していることから、売り手にも熱心なファンが多く、このようなペーパーが複数つくられています。

↑静岡の戸田書店静岡本店で発行された「フェア「村山早紀の世界」開催記念フリーペーパー」。こう書くと1のタイプのようですが、写真のタイトル部分にある通り、内容は他店(連載第1回で紹介した東京・渋谷の大盛堂書店)で開催されたトークイベント&サイン会の詳細なレポートになっています。

SNSの普及で書店員同士、それも離れた地域の書店員同士の交流は今では当たり前ですが、とはいっても、他店のイベントのレポートをフリペにまとめて自店で配布するというのは、きわめてめずらしいケース。

しかも、A4判用紙横置き2枚、両面にびっしり(紙面は連載第7回で紹介した「本屋でんすけ にゃわら版」を思わせる6面割)と、自店のイベントレポでもなかなかここまでのものにするのは大変なはず、というようなものになっていますから、なおのこと驚かされます。

↑こちらも村山早紀さん関係で、栃木のうさぎやで発行された「「はるかな空の東」ポプラ文庫ピュアフル発売記念 うさぎやオリジナルペーパー〜村山早紀を読む〜」。著者紹介や次に読む作品リストのほか、作家本人直筆のイラスト入りメッセージが掲載されています。

↑今度は名古屋から。「吉川トリコ『ずっと名古屋』(ポプラ文庫)刊行記念ペーパー」。ジュンク堂書店ロフト名古屋店で入手したものですが、作成は同店を含む名古屋の書店員有志の集まり「名古屋書店員懇親会(NSK)」となっています。

表には名古屋の地図とそれぞれの区の解説、裏には吉川トリコさんと同じく名古屋ゆかりの作家で、NSKとも交流があるという、大島真寿美さんのコラボ小説が掲載されています。刊行記念なのに新刊の内容に直接ふれたものになっていないのは、版元作成と思われる(作成・発行の記載なし)フリペがあるためでしょう。入手したお店でも、並べておいてありました。タイプの違うフリペ複数を使った宣伝展開の例ですね。
 
 
最後は、3のタイプ、フェア連動や作家応援などに分類できない、それ以外のフリペです。

↑愛知・名古屋の七五書店の文庫棚で配布されている「吉村昭文庫作品リスト201706」。同店は、文庫をレーベル別ではなく著者別に並べているお店ですが、吉村昭以外にも数人の作家について、このような作品リストがその著者の作品が並んでいるあたりにさしてありました。

フェアに連動しているわけでも、おすすめ作品や代表作がセレクトされているわけでもなく、作成時点で入手可能な文庫を一覧にしたものとのこと。作品数が多く、複数の出版社のレーベルにまたがっている作家の場合、お客さんが既刊を店頭で探すのは意外に大変ですし、お店も店頭に全部は並べられません。そのようなお店側・お客側双方にとっての機会損失を少しでも防ごうという試みだといえるかもしれません。

作品リストなんてすぐに検索できるじゃん、などと思われる方もいるかもしれませんが、吉村昭ぐらいの作品数になると、単純検索ではこのようなきれいなリストアップはできませんから、こうして一覧にまとまっているのはやはり便利なもの。フリペのうまい使い方の一つだと思います。

↑東京・吉祥寺のジュンク堂書店吉祥寺店で2017年に開催されたフェアに合わせて発行された「ジュンク堂書店吉祥寺店企画“吉祥寺な人たちの一冊”ご参加店街歩きMap」。

一見、1のタイプのようですが、フェア参加者と選書は一覧にまとめてあるだけで、店頭には手描きPOPのかたちで公開されていた選書コメントの掲載はなし。その代わりに、三つ折りを開いた内側全面(A4横置き)に、タイトルにある「ご参加店街歩きMap」が掲載されています。フェア終了後も街歩きマップとして活用できるフリペになっています。

↑連載第2回で「コンノコツウシン」を紹介した東京・西荻窪の今野書店が、2018年で創業50周年を迎えるとのことで、50周年記念バージョンのフリペ「コンノコ 50th edition」が発行されています。通常号とは別扱いということか、Vol.1となっています。表紙イラストは江口寿史さん、中には山田詠美さんの書き下ろしエッセイ掲載、表紙・裏表紙はカラーと、豪華なつくりです。

1月から毎月発行されるとのことで、12号までそろえると、江口寿史オリジナルイラスト付きバインダーが今野書店ポイント600ptと交換してもらえるのだとことです。ファンは毎月通って、「コンノコ」を入手しないといけませんね。

↑「静岡書店大賞」。これは本屋フリペに含めていいのか、やや迷いますが、店名の記載はないものの、「静岡書店大賞」の実行委員会は静岡の書店員有志の集まりのようですから、複数の書店発の本屋フリペとしてもいいでしょう。

↑東京・千駄木の往来堂書店から、同店の名物フェア「D坂文庫」開催時に作成、店頭配布される小冊子「D坂文庫2017夏」。本来であれば、1のタイプとして紹介すべきものですが、昨年夏の回から有料(税込108円)になり、厳密には「本屋フリペ」でなくなりましたが(文庫フェアから3冊買うと無料でもらえます)、フリペから有料メディアに拡大発展した例として紹介しておきます。以前は文庫サイズで、手作り感あふれる体裁でしたが、この回からA5判で36ページと、出版社のPR誌並の造りとボリュームとになっています。

↑同じく往来堂書店から「往来堂書店コミック部2017年88タイトル」。「往来堂書店・三木雄太」さんの名前が発行者としてあがっています。同店のツイッターアカウント「往来堂書店(コミック部)」(@ohraido_comic)の2018/1/4付ツイートによれば、《2017年の往来堂コミック部を振り返る巻物》と、タイトルの通りの内容になっています。A4判の用紙両面で12枚もあり、書影はカラーになっています。綴じずに巻物状にしてあるのは、製作者のこだわりでしょうか。写真も店頭に置かれていたのと同じ状態にしてあります。

同店訪問の際にはチェックを、とおすすめしたいところですが、《常備品ではないので運が良ければでお持ちくださいませ》とありますので、入手を希望される方が遠方から行かれる場合は事前に問い合わせたほうがいいかもしれません。

↑最後はちょっと変わったタイプを。東京・荻窪の本屋Title発行の「2016年の毎日のほん」。これは、同店店頭およびWEB SHOPで店主辻山良雄さんの著書『本屋、はじめました』(苦楽堂)を購入した人に特典として配布されていたもの。

店主辻山さんが、ツイッターで「毎日のほん」を発信していることは、同店利用者だけでなく、本好きの方の間ではよく知られていることかと思います。

この冊子は、その「毎日のほん」1年分をまとめたものですから、個人で作成している無料誌としてはちょっと驚くような分量になっています。しかも、デザインもすっきりした読みやすいものになっていて、本文の字こそ小さいものの、読みにくさを感じさせません。

この連載が、やがて『365日のほん』(河出書房新社)という本のかたちに発展していったのは、ご存じの通り。本屋フリペ(およびツイッターという無料媒体)で発信されたものがそのまま書籍になったというわけではないものの(本書は毎日の本をそのまままとめたのではなく、「書き下ろし」だとされています)、新刊書店から発信された情報が、こうしていったんフリペのかたちを経由しつつ、最終的には商業出版物にまとまった、というのはきわめてめずらしい例かもしれません。

情報発信に熱心だというだけでなく、本のセレクトやそれを短文で簡潔に紹介する文章力、プレゼン力を兼ね備えたTitle店主、辻山良雄さんだからこそ可能になったことなのかもしれませんが、本屋フリペ関連のエポックとして最後に紹介しておきたいと思います。
 
 
以上、定期刊行物ではないタイプの本屋フリペを紹介してきました。毎月出すのは大変でも、フェアに合わせて、特定の新刊に合わせて、ということであれば、作成のハードルも少しは下がるのではないでしょうか。こうした例を参考に、これまでフリペを手がけたことがないというお店のみなさんも、ぜひチャレンジしてみはいかがでしょうか。
 

第22回 (番外編)「本屋フリペ」いろいろ

本連載では、新刊書店で定期刊行されているフリーペーパーを主に紹介していますが、新刊書店の店頭では、定期刊行物以外にも、多くのペーパー類が配布されています。今回次回と2回にわたり、そうした定期刊行物ではない本屋フリペをいくつか紹介してみたいと思います。

「定期刊行物ではない本屋フリペ」にはいくつかタイプがあります。(筆者の私見による勝手な分類です。)

1)店で開催されているフェアに合わせてつくられたもの
2)特定の作家・作品・ジャンルなどをおす目的でつくられたもの
3)その他

1のタイプは、開催されているフェアの概要・主旨、選書リストや選定者のコメントなどが掲載されているもので、定期刊行フリペ以外だと、このタイプをいちばんよく見かけます。

新刊書店店頭でのフェアは、多くの場合、期間限定、一時的なものですから、その内容や選書は開催時を逃すと後で確認することができません。フェアの内容をまとめたペーパーが1枚あれば、フェアの内容が記録として残ることになります。

お客さんは、フェア開催時には手持ちの都合で買えなかったり、迷って後回しにしてしまったものを、後で確認したり、別の機会に買い直したりすることができます。また、書店・出版関連の仕事をしている人であれば、フェアフリペを、自店・自社のフェア企画の参考資料にすることができるかもしれません。

2は、書店の担当スタッフが、この本を売りたい!、この作家をプッシュしたい!という情熱から、応援ペーパーをつくってしまうタイプ。新刊の刊行記念としてつくられるパタンが多いようです。フェアと連動している場合もありますが、1と違って、フェアの有無とは関係なくつくられているものもあります。

3はそれ以外ということで、どういうものとまとめにくいのですが、たとえば、ぼくが目にしたものだと、開店何周年に合わせてつくった店内外のマップ、SNSで発信している情報を一定期間分まとめたもの、などがありました。

では、実際にどのようなものがあるのか、実例をいくつか紹介したいと思います。数が多いので、今回は主に1のタイプを紹介します。

 

 ※「開催中」と明記したもの、開催期間が示されているもの以外はすべて過去のフェアに関連するものです。ペーパーも入手できないものがほとんどです。
 ※フェアフリペには、書店で作成・発行しているもののほかに、版元によるものもあります。本連載は前者を紹介するものですので、今回も原則として、書店発のもののみとしますが、フリペのなかには作成者・発行者が記載されていないものもあり、内容を見てもどちらによるものなのかがわからない場合があります(選書リストのみのものなど)。これまで同様、入手店への取材はせずに取り上げていますので、もしもお店発行のものでないものが混じっているなどがありましたら、ご教示いただけると幸いです。

 
まずは、東京・吉祥寺のBOOKSルーエ。同店には、5分あればフリペを1枚つくってしまうというフリペ職人、花本武さんがいることは、以前の回で紹介済みですが、その花本さんが雑誌売り場そばのコーナーで手がけているフェアでは、ほぼ毎回、フェア連動フリペが配布されています。

↑「バッタ博士」として昨年大ブレイクした前野ウルド浩太郎さんの選書フェア「バッタ博士をバッタ博士たらしめた20冊『バッタを倒しにアフリカへ』の道」。このペーパーがユニークなのは、表紙にもあるように、著者本人による本書の企画書が掲載されていること。たくさんの本屋フリペを見てきましたが、本の企画書が掲載されているフリペというのは初めて目にしました。

↑同じくルーエから「『この地獄を生きる(のだ)』ための20冊 小林エリコ選書フェア」のペーパー。作家本人による選書コメントのほか、書き下ろしエッセイも掲載。このように、選書コメントやエッセイを寄せるなど、作家本人が本屋フリペに協力する例も最近では多く見られます。

↑「自伝『屈折くん』刊行記念 人間椅子・和嶋慎治 選書フェア in Umeda選書リスト」。大阪・堂島のジュンク堂書店大阪本店店頭で入手したもので、タイトルにも「in Umeda」とありますが、このペーパー自体は、他店も共通なんでしょうか、選書コメントの末尾には「2017.4.20〜5.31ジュンク堂書店池袋本店」とあり、「ホンシェルジェの一部抜粋です。詳細はホンシェルジェのホームページへ」とあって、URLが記載されています。

さらに、その後には、「この夏に読みたい怪談本」というコーナーもあり、コメント付きで数点があがっています。

「ホンシェルジェ」というサイトとの連動フリペだから、ということなんでしょう、発行店・作成者などの記載がなく、また選書コメントも、フェア開催店スタッフによるものなのか、作家によるものなのか(両方のパタンがあります)の明記がなく、末尾の「この夏に読みたい怪談本」とフェア本体・選書コメントとの関係もわからないつくりになっているのが、フリペ好きの目から見るとちょっと残念なところ。

サイトとの連動は、フリペの利用・活用の幅を広げる意味で大いにありだと思いますが、その場合でも、フリペはフリペで、それだけで情報が完結している、それだけを読めば必要なことがひと通りわかる、そんなふうになっているほうがいいのではないかなあ、と新刊書店の本屋フリペを情報ソースとして利用している者としては思います。

↑東京・神保町の東京堂書店で入手した「kotoba「わが理想の本棚」で紹介されている書籍リスト」。集英社の季刊誌『kotoba』の特集に合わせたフェアが同店店頭で開催されていたときに配布されていたものです。選書コメントはなしで書目リストのみになっています。(作成者・発行者の明記がないため、版元作成の可能性もあります。)

東京堂書店のフェアは規模が大きく点数が多いので、フェア開催期間だけではチェックしきれないこともありますから、買わなかったもの買えなかったものを後でチェックできるこういうリストは重宝します。

↑同じく東京堂書店のフェアから。「《特集:〈ポスト68年〉と私たち》フェア冊子」。『〈ポスト68年〉と私たち「現代思想と政治」の現在』(平凡社)の刊行に合わせて開催されたフェアのようです。長文のブックフェア宣伝文と、編著者が選書したという書目の一覧が掲載されています。選書コメントはなし。こちらは東京堂書店の発行である旨の明記があります。

連載第2回で紹介した東京・西荻窪の今野書店では、お店の入り口すぐ脇のスペースでいつも小規模ながら興味深いテーマのフェアが開催されていますが、こちらもそのようなフェアに合わせて発行されたもの。

「柳下毅一郎 ぼくを作り上げた十冊」。フェアに対する本人のコメント+選書一覧というシンプルなもの。選書コメントは、すべてではなく、一部の書目にだけつけられています。
A5判用紙横置き片面と、中身だけでなくつくりもシンプルですが、気になる作家・翻訳家ならばこのわずかな情報だけでもファンにはうれしいもの。つくりがシンプルなのも、フェアで買った本にはさんでとっておくのにはむしろぴったりだったりします。

↑今回紹介するなかではもっとも分量のあるフリペ、というか冊子、がこちら。「岩波文庫創刊90年 三省堂書店スタッフ厳選 永遠の定番 岩波文庫」。

岩波文庫創刊90年の記念フェアは、全国あちこちの書店で開催されていましたが、三省堂書店は、チェーンをあげて取り組んだのでしょう、入手したのは三省堂書店神保町本店の店頭ですが、本冊子には発行店の記載はなく、中を見ると全国の店舗のスタッフ、それこそ店舗担当でない事務方のスタッフまでが選書コメントを寄せています。ナショナルチェーンならではのフリペ活用法ですね。


ジュンク堂書店の利用者にはおなじみですね。池袋本店の1階で開催されているフェア「愛書家の楽園」。

写真は2017年の9月から10月にかけて開催されていたVol.70「アイドル 情熱と冷静のあいだ」のもの。フェアの主旨と、選書一覧+選書コメントが掲載された、フェア連動ペーパーの典型例になっています。同フェア、ぼくはいつも池袋本店でチェックしていますが、ペーパーにはジュンク堂書店福岡店丸善名古屋本店丸善京都本店の店名があがっていて、単店でもチェーン全店共通のものでもなく、グループ内の特定店舗連動フェアのペーパーであることがわかります。

 
お知らせ:
本連載の第17回で紹介した、大阪の本屋さん「本は人生のおやつです!!」発行のフリペ「本おや通信」。

本稿執筆時点(2018年1月)での最新号となる28号が、2017年12月に発行されました。登場しているのは、なんと、わたくし空犬太郎です。2017年11月15日に同店で開催されたトークイベントの内容をまとめたものになっています。ご興味のある方は、「本は人生のおやつです!!」にお問い合わせください。年刊くらいのペースのフリペなので、(ある意味)貴重です(笑)。
 

第21回 教文館「こちわしょ」

東京・銀座の真ん中に、こんなすてきな本屋さんがあることを、それも、一般書だけでなく、洋書・キリスト教書・児童書の専門売り場にカフェやホールまでをそろえた、まさに「本の館」と呼びたくなるような本屋さんがあることを、本屋好きとして本当にうれしく思います。

今回紹介する教文館は、明治創業の老舗書店。銀座に用事のあるときは、必ず立ち寄ることにしている、大好きなお店の1つです。

同店発行のフリペが、今回紹介する「こちわしょ」。同店1・2階の和書部で発行されているので「わしょ」なんでしょうか。ひらがな表記ということもあって、本屋フリペとしてはなかなかにユニークなネーミングと字面になっています。

「こちわしょ」、内容は、店内のフェアの紹介、今月の1冊、店長のひとことと、シンプルなつくり。奇をてらったところのない、本屋フリペの王道といっていいストレートな内容で、デザインも読みやすくまとまっています。

A4判横置き両面で、どのように使い分けられているのかはわかりませんが、3つ折りになっているときと、2つ折りになっているときがあるようです。

写真右下が3つ折りのNo.46(2017年3月号)、他3つは2つ折りの号。

上の写真、右が本稿執筆時点での最新号、No.55(2017年12月号)。クリスマス仕様になっています。昨年もこの時期はクリスマス仕様でしたから(写真左、No.43)、毎年12月は定番なんでしょうか。同店はキリスト教系のお店ということで、この季節はお店全体がクリスマスモードに包まれています。書籍の売り場ではそれぞれ関連のフェアが展開されているほか、9階にあるウェインライトホールでは毎年恒例のクリスマスグッズのフェアが開催されています。

同店は、ペーパーを使った情報発信に力を入れているようで、「こちわしょ」のほかに、「おすすめ本●月」という本の紹介をまとめた書評集のようなフリペもあります。月刊で、●のところには発行月の数字が入り、副題(のようなもの)が毎回添えられています。No.74(2017年12月号)には「おろかなる犬吠えてをり」とあります。「除夜の鐘」と続く、山口青邨のよく知られた俳句の一部ですね。過去の号では、歌詞の一部が引かれていたりするものもありました。セレクトに、選者の好みやセンスが感じられますね。

本の紹介といっても、ひとことコメントのような簡単なものではありません。A4判で4ページ。1ページに2冊を取り上げ、1冊につき、700〜800字ほどを割いて、しっかりと紹介。新聞で紹介された本には新聞書評掲載情報も添えられています。文章を手がけているのは、同店スタッフの伊藤豊さん。

これだけでもけっこうな分量ですから、「こちわしょ」と「おすすめ本」の両方を継続定期刊行していくのは大変なことのはずですが、先日(2017年12月初旬)訪問したときは、店頭で「2017 読書の収穫 話題の本」というフェアが開催中で、そのフェアのペーパーというか冊子まで配布されていました。

「おすすめ本」に似た感じのフォーマットで、A4判で20ページにもおよぶもの。「おすすめ本」と同じく伊藤豊さんのお名前があります。フェアのペーパーがつくられること自体はめずらしいことではありませんが、複数の定期無料紙を発行しているお店で、さらにこのボリュームのものをつくって発行するというのは、そんなに簡単にできることではないはずで、情報発信への力の入れぶりには驚かされます。

同店は、前述の通り、ホールやカフェ、キリスト教書・児童書・洋書などが別フロアにあるマルチフロア型店舗ですので、各フロアの案内をまとめたお店全体の紹介パンフレットもあります。こちらは、ワープロや手描きでつくったものではなく、きちんとデザインして印刷された立派なつくりのものになっています。こちらも、この季節配布のものはクリスマス仕様になっていますね。

フロア・売り場が異なりますが、このほかにも、子どもの本関係のフリペをまとめて紹介した第4回で取り上げた「ナルニア国だより」があります。しかも、6階、児童書売り場の「ナルニア国」では、下の写真のように、店内のイベントや展示の案内チラシにも力を入れていて、お店を訪ねると、入り口のところに、常に、複数のイベント案内チラシが並んでいるのです。

1つのお店、それも非チェーンの単独店で、これだけの種類の無料配布物が常時つくられている例は、全国的に見てもめずらしいのではないでしょうか。

教文館・ナルニア国は、店内を散策しているだけで楽しい気分になれるお店です。それは、棚の高さや角度、棚の配置、本の並べ方などに工夫が行き渡っているから、というのは当然あるとして、それだけでなく、店内のあちこちで配布されている無料紙誌から、情報発信に労を惜しまない同店の姿勢というか熱意というかが自然に伝わってくるからではないかと、そんなふうに思うのです。
 

発行店:教文館
頻度:月刊(「こちわしょ」「おすすめ本」)
 

お知らせ:
本連際第8回では、東京・吉祥寺の書店5店(BOOKSルーエ、パルコブックセンター、啓文堂書店、ジュンク堂書店、ブックファースト)の書店員有志の集まり、吉祥寺書店員の会「吉っ読(きっちょむ)」が作成・発行しているフリーペーパー「ブックトラック」を紹介しました。その吉っ読が、吉祥寺の新刊書店の情報をまとめた地図「吉祥寺書店マップ2018年版」が完成しました。配布店などの詳細は、当方のブログ「空犬通信」の記事をご覧ください。

第20回 メリーゴーランド「メリーゴーランド新聞」/メルヘンハウス「ひろばメルヘン」

「読書の秋」などと言ったりしますが、秋は本関係のイベントが全国各地で開かれますから、本好きにとっては忙しい、そしてうれしい季節ですね。11月3日(金)、4日(土)、5日(日)の3連休、東京では、神田古本まつり、神保町ブックフェスティバル、しのばずくんの本の縁日(3日のみ)が開かれていましたので、これらも気になってはいたのですが、名古屋の地域ブックイベント「ブックマーク」が今年で最後だと聞き、これはぜひ見ておかねばと、名古屋に出かけてきました。

名古屋の書店のものとしては、これまでに、カルロバの「パーマネント」精文館書店の「次読むならこれにしや〜」を紹介済みですが、今回も名古屋で出会った本屋フリペを2つ紹介します。いずれも児童書専門店のものです。
 

まずは、子どもの本専門店メリーゴーランド。開業は1976年。三重県四日市市に本店があり、2007年には京都店ができています。四日市のお店は残念ながら訪問したことがないのですが、京都店は昭和初期に建てられたという古びたビルの中にある、すてきなお店でしたよ。

店主の増田喜昭さんは、書店の経営以外にも、絵本塾・童話塾を主宰したり、児童書関連の執筆・講演活動にも力を入れたりなど、子どもの本の世界を広げることに長年力を注いできたことで業界では広く名を知られている方。『子どもの本屋、全力投球!』『子どもの本屋はメリー・メリーゴーランド』(共に晶文社)といった著書もお持ちです。

「メリーゴーランド新聞」は、同店発行の月刊本屋フリペ。名古屋にお店はないのですが、「メリーゴーランド新聞」はカルロバの店頭でも配布されていますので、同店訪問時に入手してきました。手元にある2017年9月1日発行の10月号には、No.427号とあります。創刊時から月刊ペースだとすると単純計算で35年以上になりますから、開店数年後からずっと継続発行されてきたわけですね。

サイズはB5判で8ページ。一部に写真が使われているのをのぞくと枠線も含めてすべて手描きです。児童書の新刊案内はもちろん、「ひげのおっさん」こと店主のコーナー、グッズやフェア・イベント情報に、4コママンガまで。情報量が多いだけでなく、読んでいて楽しい、読者をあきさせない内容になっています。

名古屋のカルロバ以外に配布店があるのかどうか、サイトには情報がありませんのでわかりませんが、入手ご希望の方はお店に問い合わせてみてください。年会費を払えば郵送による定期購読もできるようですよ。定期購読についてはこちらをご覧ください。


 

もう1つは、名古屋・千種の児童書専門店、メルヘンハウス。1973年の創業で、日本で初めての子どもの本の専門店だとされています。千種駅から数分歩くと、高畠純さんの絵が大きく描かれた、店舗の外壁が目に飛び込んできます。子どもの本好きの方ならば、この外観だけでもうれしくなることでしょう。

同店発行のフリペが「ひろばメルヘン」。この連載では、担当の方が個人的につくっているような、手作り感あふれるタイプのものを取り上げることが多いのですが、この「ひろばメルヘン」はきちんとデザインされ(コピーではなく)印刷されたオールカラーの小冊子です。A5判横置き8ページ。月刊で、手元の2017年11月号にはNo.422とあります。こちらも先の「メリーゴーランド新聞」同様、35年以上続いている計算になりますね。

内容は、エッセイ、連載読み物、新刊案内、ギャラリー(同店には2階にギャラリーがあります)での展示案内、スタッフの方の日記などなど、こちらも情報量の多い読みでのあるフリペになっています。同店を訪問された方は、ぜひ忘れずに入手してください。
 

すてきなお店とすてきな本屋フリペの紹介だけで本稿を終えられればよかったのですが、同店に関しては、1つ残念なお知らせもあります。メルヘンハウスは来年、2018年3月末に閉店することが決まっているそうです。ちょうど45周年のタイミングだといいます。

閉店までにはまだ数か月あります。名古屋でたくさんの子どもたちに本を届けてきたこのすばらしいお店をまだご覧になったことがないという絵本好き、児童書好きの方がいらっしゃったら、この機に、ぜひ足を運んでみてください。

(*本連載は、お店でフリペを入手して読む、一般読者の立場でフリペを紹介していますので、通常は発行店に取材はしないのですが、今回は、同店の閉店情報に関し、同店に内容を確認したうえで、フリペを本連載で紹介すること、その際に閉店のことにふれることについて、事前に了承を得ています。)


 

発行店:(メリーゴーランド新聞)メリーゴーランド
頻度:月刊
発行店:(ひろばメルヘン)メルヘンハウス
頻度:月刊
 
 

お知らせ:
本連際第10回で紹介したTSUTAYA寝屋川駅前店で発行されていた「ぶんこでいず」。残念ながら休刊になってしまったことは記事でもふれましたが、その「ぶんこでいず」をつくっていたねこ村さんが、フリペの世界に復帰されたようです。

フリペの名前は「えほんでいず」。内容は、絵本紹介とご本人の出産レポという組み合わせになっています。現時点では、継続刊行されるのかどうかはわかりませんが、楽しみですね。詳細は、ねこ村さん名義のツイッターアカウント(@nekomurabook)をご覧ください。

厳密には本屋フリペではないかもしれませんが、本屋フリペをつくっていた元書店員によるフリペで、ねこ村さんの知り合いがいる書店店頭での配布も始まっているようですので、ここで紹介しておきます。


 

第17回 「本おや通信」

本連載では、主に新刊書店で発行されているフリーペーパーを紹介していますが、古書店にもフリペを発行しているお店はあります。書店情報がぎっしりのムック『本屋へ行こう!!』(洋泉社、2015)に「書店員がつくるフリーペーパーがおもしろい!」という記事が掲載されています。同記事で、当方は、本連載で紹介済みのものを含むおもしろフリペを新刊書店発行のものからいくつかセレクトしていますが、南陀楼綾繁さんは、神戸のトンカ書店他の古書店のフリペもセレクトしています。

古書店の場合、フリペをつくるにあたって、新刊書店に比べると難しい点もあります。基本的に一点ものの古本を扱う古書店では、本屋フリペではおなじみの新刊・近刊情報や売上ランキングなどは、フリペのネタとしては使えません。本を紹介する場合も、その本を常に在庫しておけるとはかぎりませんので、セレクトやタイミングに工夫が要ります。

ただ、定番のネタが使えないからといって、古書店発行の本屋フリペが情報的に劣ったりおもしろくなかったりするわけではなく、むしろ逆で、読み物を中心にした、作り手の個性的が存分に発揮されたおもしろフリペがいくつもあります。今回紹介する「本おや通信」も、そうしたユニークな古書店発のユニークな本屋フリペです。
 
 
利用者には「本おや」の略称で親しまれている「本は人生のおやつです!!」。店の名前には見えないかもしれませんが、「!!」も含めて正式名称です。大阪・堂島(本好きには、ジュンク堂書店大阪本店のある街ですね)にある書籍と雑貨を扱う小さなお店で、書籍は新刊・古書両方の扱いがありますが、メインは古本。雑貨は、複合型のセレクトショップでよく見かけるようなおしゃれ文房具ではなく、一筆箋、ポチ袋など紙ものが多めで、オリジナルのものも扱っています。

同店発行の本屋フリペ「本おや通信」はA4判、(毎回そうなのかはわかりませんが)両面ともカラーで、厚手のしっかりした紙が使われています。紙面は新聞調の3段組で読みやすいレイアウト。店主坂上さんがFacebookに寄せた説明によれば、《さまざまな職業・年齢の方々に、「自分の人生を豊かにしてくれた本」についてお話してもらい、たまーに作っては店内にてお配りして》いるもの。基本的には1枚に1人の方がフィーチャーされたものになっていて、最後にお店の案内が小さく載っているのを除き、他の記事はありません。

過去には、『「本屋」は死なない』(新潮社)の石橋毅史さんや、店主のお友だちだという芥川賞作家の藤野可織さんも登場。現時点で最新号となる2016年3月発行の第27号には、本好きにはブログ「神保町系オタオタ日記」でおなじみの「神保町のオタさん」が登場し、「自分の人生を豊かにしてくれた本」について語っています。

最新号が1年以上前の発行と少し時間が経っていますが、休刊になってしまったわけではありません。店舗営業、古書展出店、自店イベント開催などの合間をぬっての作成なので、なかなか発行できないようですが、しばらく前に店主さんにお会いしたときに「本おや通信」についてうかがったところ、今年じゅうに出したい!と言っていましたから、まもなく最新号を読めるかもしれませんね。

「公開☆本おや通信!」という名称で、「本おや通信」の「公開バージョン!」という位置付けのトークイベントも不定期で開催されています。書店でのトークイベント自体はめずらしいものではありませんが、同店は、お店のサイズと店主の人柄もあって、お客さんとの距離がものすごく近いので、トークイベントも、独特のアットホームさに包まれた、参加者全員が知り合い(笑)とでもいった感じの、居心地のいい空間と時間とになっています。

「本おや通信」は、同店で無料配布されていますが、現在は最新号27号を含め、過去の号の在庫もないようでした。同店のサイト他でのファイル公開もしていませんので、最新号が発行されたときに店頭で入手するようにしてください。

お店自体、とてもすてきなところで、本好きの店主とおしゃべりをするだけでも、本好きならば幸せな時間を過ごせますから、フリペの有無に関係なく、お店を訪ねるのもいいと思いますよ。


 
 
発行店:本は人生のおやつです!!
頻度:不定期刊

●Googleマップ 「本屋フリペの楽しみ方」掲載書店

第16回 「往来っ子新聞」

街歩き好きに人気の高い東京屈指の散歩エリア、千駄木。地下鉄千駄木駅から徒歩数分、千駄木通り沿いにある往来堂書店は、一見ふつうの町の本屋さんですが、その見事な棚作りで全国の本好き、出版書店関係者に人気の高いお店です。同店がすごいのは、そうした玄人に「だけ」愛されるような、敷居の高いお店になっていないこと。地元の老若男女にとってのふだん使いのお店、文字通りの町の本屋さんとしてきちんと機能し、町にとけこんでいるのがすばらしい。筆者も大好きな本屋さんの1つです。

同店で長く発行されてきたフリペが「往来っ子新聞」。紙面は、A4判横置き両面。店頭では3つ折りの状態で、レジや入り口の看板に置かれています。すべて手書きで、新刊やおすすめ本の紹介、文庫などの売上ランキング、フェアやイベントの紹介などの情報が両面にぎっしり詰まっています。

表面の下には、同紙の名物といっていいでしょう、新聞のサンヤツ(一面の下に並んでいる書籍の新刊広告;新聞の段、3段分を使って横に8コマ並ぶことからこう呼ばれます)のように、手書きの広告がずらりと並んでいます。地元のお店の広告あり、新刊広告あり。書影まで手描きのイラストになっています。手書きなので、本文と同じテイストで広告を「読めて」しまうのがおもしろいですね。

創刊は2009年6月。前回紹介した「次読むならコレにしや〜!」も60号超と、長く続いている本屋フリペの1つですが、こちらはなんと本稿執筆時点で通算150号をゆうに超えています。

2013年には、創刊号から109号までをまとめた合本版『往来っ子新聞 創刊号−一〇九号』が刊行されました。税込2,000円。表紙はミロコマチコさんによるシルクスクリーン。1枚ずつ刷ったそうで、いくつか色違いのバージョンがありました。同じスタイルで長く継続して刊行し続けてきたからこそ可能になったものですよね。こちらは完売で、残念ながら現在は在庫がないようですが、また200号記念のときなどにまとめたものが作られるかもしれませんから、ファンの方は要チェックですね。

「往来っ子新聞」は、同店で無料配布されているほか、版元ドットコムでPDFをダウンロードすることもできます。バックナンバーの一覧はこちらをご覧ください。

往来堂書店といえば、なんといっても「往来っ子新聞」が有名ですが、同店にはメルマガ「往来堂ももんが通信」もあります。こちらは週刊で、「本日の一冊」「これから出る本の予定 ピックアップ」「編集後記」などからなっています。まぐまぐで配信されていますので、登録はこちらからどうぞ。バックナンバーはこちらで読めます。

  
発行店:往来堂書店
頻度:(往来っ子新聞)月刊;(往来堂ももんが通信)週刊

●Googleマップ 「本屋フリペの楽しみ方」掲載書店
 
  
 
【お知らせ】
往来堂書店のオリジナル文庫フェア「D坂文庫2017」が7/15(土)に始まりました。同店にゆかりのある選者64人が、とっておきの文庫をセレクト。わたくし空犬太郎も選者の一人として参加しています。読み応えたっぷりのフェア冊子(ブックカタログ)は100円で販売されるそうです。フェアは8/31まで(予定)。

もう1つ、往来堂書店にも関連のあるイベントを。

7/29(土)に「帰ってきたブックンロール(ブックなし)」を開催します。出版・書店業界関係者による音楽ライヴイベントで、往来堂書店の笈入建志さんが登壇するショートトークのコーナーもあります。荻窪ルースター・ノースサイドにて。詳細は当方のブログの案内記事をご覧ください。
 

第15回 「次読むならコレにしや〜!」

愛知県豊橋市に本社をおく、大正創業の老舗、精文館書店。愛知県を中心に店舗展開をしているチェーンで、関東だと、千葉・埼玉・神奈川には支店がありますが、都内にはありませんので、都内近郊の書店好きにはあまりなじみがない名前かもしれません。

ただ、名古屋市中川区にある精文館書店中島新町店の名を知る書店人・出版人は関東にもたくさんいることでしょう。というのも、同店には、目的地にたどり着けないという、ただそれだけのことを、おもしろサバイバルな文章にまとめて、WEB連載で人気を博し、あげくのはてには単行本にまでなってしまったという名物書店員さんがいるからです。ひさだかおりさん。連載をまとめた本は、こちら。『迷う門には福来る』(本の雑誌社)。

その《「活字に関わる仕事がしたいっ」という情熱だけで採用された妻母兼業の時間的書店員》(本の著者紹介より)、ひさださんが手がけ、同店で発行されているフリーペーパーが「次読むならコレにしや〜!」です。

A4判裏表に、手書きとワープロ文字混在で、主にエンタメ系フィクションの情報がぎっしり。創刊当初から、ひさださんが一人で手がけていますが、途中、児童書を紹介するコーナー「えほんの力」が裏面に掲載されていた時期がありました。同店の児童書担当の方の協力を得ていたようで、絵入りの記事はなかなか楽しく読ませてくれるものでしたが、残念ながら休載となってしまいました。

現在は、またひさださんの一人体制に戻り、あいかわらず裏表に情報がぎゅっと詰まった紙面をすべてひとりで手がけています。

本屋フリペを発行している人の多くが感じているのではないかと思いますが、いちばん大変なのは、発行を続けること。それも定期的に続けることでしょう。本連載で紹介している本屋フリペの多くは一人の書店員さんの手になるもので、しかも、業務時間外に作られているものがほとんどです。正規の業務として認められ、輪番制になっていたり、担当者が変わっても継続発行されたりすることはまれで(ないわけではありませんが)、そのため、担当者の方が異動になったりやめてしまったりすると、フリペも続けられなくなってしまう、ということにしばしばなってしまいます。

そんななか、「次読むならコレにしや〜!」は、本稿執筆時点の最新号が66号。月刊ですから、5年以上継続発行されていることになります。個人発行でこの数字はすごい。現在、ぼくが定期的にチェックしている本屋フリペのうち、個人で出しているものとしては、最長の1つになるでしょう。がんばって続けてほしいなあ。

通常号を出し続けるだけでも大変なのに、ひさださんは、これまでに何度か読書感想文対策用の特別号も発行したりしています。題して「勝手に課題図書新聞」。以前の情報では、年に1回の発行で、過去に発行された号を見ると、表はオススメ本の紹介、裏面は「イケてる読書感想文の書き方」という記事になっていました。

「次読むならコレにしや〜!」は、同店で配布されているほか、ひさださんご本人がPDFにして、書店仲間や当方のような出版関係の知り合いに直接配布もしているようです。お問い合わせは、精文館書店中島新町店店のひさださんまで。

 
発行店:精文館書店中島新町店
頻度:月刊

●Googleマップ 「本屋フリペの楽しみ方」掲載書店

 
【お知らせ】
まもなくこんな本屋本が出ます。『東京 わざわざ行きたい街の本屋さん』(ジー・ビー)。

書き手はBOOKSHOP LOVERのハンドル名で本屋情報を熱心に発信していることで知られる和氣正幸さん。

その和氣さんの本屋フリペに関する取材を受け、わたくし空犬も少しだけ本書に情報を提供しています。本連載で紹介してきたフリペの実物を例に引きながら、本屋フリペのおもしろさについての話をしました。コラムとして掲載されているようですので、本屋さん情報に興味のある方はぜひ手にとってみてください。6/20ごろ発売です。

刊行後には、こんなイベントも予定されているようです。「7/7(金)19:30〜 本屋100連発 本屋の良いトコロをこれでもかと紹介する会@双子のライオン堂」(Peatix)。会場は赤坂の本屋さん「双子のライオン堂」。要予約のイベントです。近隣の本屋好きの方はぜひお出かけください。

第14回 「放課後本屋さん」

当方がふだんよく通っている本屋さんの1つ、東京・吉祥寺のBOOKSルーエ。同店の2階には、常設のフリペコーナーがあるんですが、そこで出会ったフリペが「放課後本屋さん」。表紙には「書店員と元書店員が作るフリーペーパーです」とあります。書店員が所属のお店で作成・配布しているタイプのフリペではありませんが、これも「本屋フリペ」の一種だとしていいでしょう。

2016.7.31発行のVol.1の「おくづけ」によれば、寄稿者のサークル名は「野生の本屋さん」、発行者は「蒲山ヒポ麿」となっています。創刊からまだ1年にならない、できたばかりの本屋フリペですが、創刊以降順調に刊行されているようで、本稿執筆時点で10号(2017.5.4発行)まで出ています。

Vol.1の表紙にはこんな一文が載っていました。《本屋の業務が終わっても本屋をやめてしまっても仕事を離れてなお本と物語を愛し続けるそんな野生の書店員が集まって作ってみたフリーペーパーです》。職場を離れた立場を「野生の書店員」と表現しているのがおもしろいですね。

サイズは文庫判よりひと回り大きいB6判。手描きとワープロの文字が混在で、イラストも多用されています。号によってページ数が異なるようですが、最近の号でみると、「レビュー増量号」と謳われているVol.9、「レビュー微量号」と謳われているVol.10はともに32ページとなっています。

内容は、本のレビュー、文芸書・文庫の発売予定など。過去にはテーマ特集の号もあり、これまでに、ガンダム、ポケットモンスター、シン・ゴジラなどが取り上げられています。

この連載では、玄人はだしの画力・レイアウト力をほこる作り手によるフリペも紹介したことがありますが、この「放課後本屋さん」は、いい意味でゆるめのテイスト。レイアウトやイラストに素人っぽさが出ていて、全体に、昔ながらの同人誌、ミニコミっぽい雰囲気になっています(クオリティ云々の話ではなく、あくまで雰囲気、テイストが、です)。自分の好きなもの=本のことをもっと知ってほしいので、こんなのをつくってみました、という感じがストレートに出ていて、読んでいてほっとさせられます。

目を引くのはマンガ、それも数ページにわたるマンガ作品が掲載されていること。4コママンガを載せている本屋フリペは割によく見かけるのですが、9ページものマンガ(10号)、それも身辺雑記タイプではなくストーリーマンガを掲載している本屋フリペはめずらしいのではないかと思います。

フリペの名前や発行人名で検索しても、当方がツイッターで紹介したのが引っかかってくるだけで(苦笑)、公式サイトやツイッターアカウントなどはないようですので、BOOKSルーエ以外にどこで配布されているのか、そもそもよそで配布されているのかもよくわかりません。エリア外の方が簡単に入手できるものなのかどうかちょっと微妙ですので、気になる方は、東京・吉祥寺のBOOKSルーエの店頭をチェックするか、同店に問い合わせてみてください。

配布店:BOOKSルーエ
発行頻度:月刊

●Googleマップ 「本屋フリペの楽しみ方」掲載書店

第13回 「ダイワレター」と「BOOKMARK」

新刊書店で独自に発行されているフリーペーパー(=本屋フリペ)を取り上げて紹介するという本連載の趣旨からはちょっとはずれるのですが、連載が延長となったこともありますので、今回は番外編ということで、書店発ではない書店関連無料誌を2つ紹介したいと思います。

まずは、「ダイワレター」。コミックのシュリンク機(コミックは新刊書店では通常、ビニールをかけた状態で売られていますが、あのビニールをシュリンクと呼びます)を手がけるダイワハイテックスが発行している書店情報誌です。

無料の情報誌ですが、A4判12ページでオールカラーと、ぜいたくなつくり。年4回発行で、最新号に記された発行部数は5,000とありました。

新しくオープンとなった店や店頭でユニークな取り組みをしている店を紹介する書店レポートや、書店員インタビューなどの記事が毎号掲載されるなど、まさに書店情報誌としかいいようのない中身になっています。テーマに工夫をこらした特集が掲載されることもあります。過去には、全国の書店員の会や、本屋フリペの特集号もありました。

本稿執筆時点での最新号は50号。祝通巻50号ということで、表紙も赤字に金の水引をあしらった、お祝いモードになっています。過去の号に登場した関西の書店員が集まったトークイベントのレポート、昨年話題を呼んだ文庫Xと覆面BOOKSの特集記事を収録。そのほか、昨年リニューアルオープンとなったTSUTAYA LALAガーデンつくばの紹介記事、広島の中央書店の代表取締役、内藤剛さんのインタビューが掲載されています。

シュリンク機の会社が発行しているフリーペーパーではありますが、話題がコミックに偏ることもなく、シュリンクにまつわる専門的な記事が掲載されるわけでもありません。本屋さんに関心のある人なら誰でも楽しめそうな、新刊書店にまつわる話題が広くカバーされているのが、こうして50号の中身を列記してみるだけでもおわかりいただけるかと思います。

本屋好きには読みでのある内容になっていますので、ぜひ手にとってみてください。ただ、この「ダイワレター」、残念ながら書店店頭では入手はできません。同社のサイトに最新号+全バックナンバーのPDFがアップされていますので、そちらからダウンロードしてご覧ください。

もう1つは、「BOOKMARK(ブックマーク)」。海外文学の紹介に特化した無料小冊子です。本稿執筆時点で、7号まで出ています。発行は、翻訳家の金原瑞人さん。編集に同じく翻訳家の三辺律子さん、イラスト・ブックデザインにイラストレーターのオザワミカさんの名前もあがっています。

CD(のジャケット)と同じサイズの正方形で、24ページ、オールカラー。毎号特集が組まれ、特集テーマに沿った本が1ページに1点、合計で十数点紹介されています。

特徴的なのは、取り上げられているのがすべて翻訳文学であること、さらに、それぞれの本の紹介を、その本を翻訳した翻訳家が担当していること。端正で読みやすいデザインといい、一線の翻訳家がたくさん登場して自らの翻訳作品を紹介する中身といい、とにかく、豪華なつくりになっていて、毎号、手にするだけでうれしくなってしまいます。

毎号のテーマ選定にも工夫がこらされています。4号は「えっ、英語圏の本が1冊もない!?」というタイトルの通り、海外文学の特集で入れずに選ぶのが難しいはずの英語圏のものが1冊もないという特集になっています。最新7号は「眠れない夜へ、ようこそ」。「ホラーの味つけのあるミステリー特集」になっています。

「BOOKMARK(ブックマーク)」は、全国の書店、公共図書館などで配布されているようです。こちらに配布リストがありますので、入手を希望される方は、お近くで入手できるところがあるかどうかを確認する際の参考にしてください。

以上、いずれも厳密には本屋フリペではないのですが、書店愛にあふれる書店情報誌、書店で配布されている本関連の小冊子ということで、紹介しました。次回からは、また通常の本屋フリペ紹介に戻ります。

「ダイワレター」
発行:ダイワハイテックス
頻度:年4回

「BOOKMARK(ブックマーク)」
発行:金原瑞人
頻度:年4回

●Googleマップ 「本屋フリペの楽しみ方」掲載書店