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第21回 教文館「こちわしょ」

東京・銀座の真ん中に、こんなすてきな本屋さんがあることを、それも、一般書だけでなく、洋書・キリスト教書・児童書の専門売り場にカフェやホールまでをそろえた、まさに「本の館」と呼びたくなるような本屋さんがあることを、本屋好きとして本当にうれしく思います。

今回紹介する教文館は、明治創業の老舗書店。銀座に用事のあるときは、必ず立ち寄ることにしている、大好きなお店の1つです。

同店発行のフリペが、今回紹介する「こちわしょ」。同店1・2階の和書部で発行されているので「わしょ」なんでしょうか。ひらがな表記ということもあって、本屋フリペとしてはなかなかにユニークなネーミングと字面になっています。

「こちわしょ」、内容は、店内のフェアの紹介、今月の1冊、店長のひとことと、シンプルなつくり。奇をてらったところのない、本屋フリペの王道といっていいストレートな内容で、デザインも読みやすくまとまっています。

A4判横置き両面で、どのように使い分けられているのかはわかりませんが、3つ折りになっているときと、2つ折りになっているときがあるようです。

写真右下が3つ折りのNo.46(2017年3月号)、他3つは2つ折りの号。

上の写真、右が本稿執筆時点での最新号、No.55(2017年12月号)。クリスマス仕様になっています。昨年もこの時期はクリスマス仕様でしたから(写真左、No.43)、毎年12月は定番なんでしょうか。同店はキリスト教系のお店ということで、この季節はお店全体がクリスマスモードに包まれています。書籍の売り場ではそれぞれ関連のフェアが展開されているほか、9階にあるウェインライトホールでは毎年恒例のクリスマスグッズのフェアが開催されています。

同店は、ペーパーを使った情報発信に力を入れているようで、「こちわしょ」のほかに、「おすすめ本●月」という本の紹介をまとめた書評集のようなフリペもあります。月刊で、●のところには発行月の数字が入り、副題(のようなもの)が毎回添えられています。No.74(2017年12月号)には「おろかなる犬吠えてをり」とあります。「除夜の鐘」と続く、山口青邨のよく知られた俳句の一部ですね。過去の号では、歌詞の一部が引かれていたりするものもありました。セレクトに、選者の好みやセンスが感じられますね。

本の紹介といっても、ひとことコメントのような簡単なものではありません。A4判で4ページ。1ページに2冊を取り上げ、1冊につき、700〜800字ほどを割いて、しっかりと紹介。新聞で紹介された本には新聞書評掲載情報も添えられています。文章を手がけているのは、同店スタッフの伊藤豊さん。

これだけでもけっこうな分量ですから、「こちわしょ」と「おすすめ本」の両方を継続定期刊行していくのは大変なことのはずですが、先日(2017年12月初旬)訪問したときは、店頭で「2017 読書の収穫 話題の本」というフェアが開催中で、そのフェアのペーパーというか冊子まで配布されていました。

「おすすめ本」に似た感じのフォーマットで、A4判で20ページにもおよぶもの。「おすすめ本」と同じく伊藤豊さんのお名前があります。フェアのペーパーがつくられること自体はめずらしいことではありませんが、複数の定期無料紙を発行しているお店で、さらにこのボリュームのものをつくって発行するというのは、そんなに簡単にできることではないはずで、情報発信への力の入れぶりには驚かされます。

同店は、前述の通り、ホールやカフェ、キリスト教書・児童書・洋書などが別フロアにあるマルチフロア型店舗ですので、各フロアの案内をまとめたお店全体の紹介パンフレットもあります。こちらは、ワープロや手描きでつくったものではなく、きちんとデザインして印刷された立派なつくりのものになっています。こちらも、この季節配布のものはクリスマス仕様になっていますね。

フロア・売り場が異なりますが、このほかにも、子どもの本関係のフリペをまとめて紹介した第4回で取り上げた「ナルニア国だより」があります。しかも、6階、児童書売り場の「ナルニア国」では、下の写真のように、店内のイベントや展示の案内チラシにも力を入れていて、お店を訪ねると、入り口のところに、常に、複数のイベント案内チラシが並んでいるのです。

1つのお店、それも非チェーンの単独店で、これだけの種類の無料配布物が常時つくられている例は、全国的に見てもめずらしいのではないでしょうか。

教文館・ナルニア国は、店内を散策しているだけで楽しい気分になれるお店です。それは、棚の高さや角度、棚の配置、本の並べ方などに工夫が行き渡っているから、というのは当然あるとして、それだけでなく、店内のあちこちで配布されている無料紙誌から、情報発信に労を惜しまない同店の姿勢というか熱意というかが自然に伝わってくるからではないかと、そんなふうに思うのです。
 

発行店:教文館
頻度:月刊(「こちわしょ」「おすすめ本」)
 

お知らせ:
本連際第8回では、東京・吉祥寺の書店5店(BOOKSルーエ、パルコブックセンター、啓文堂書店、ジュンク堂書店、ブックファースト)の書店員有志の集まり、吉祥寺書店員の会「吉っ読(きっちょむ)」が作成・発行しているフリーペーパー「ブックトラック」を紹介しました。その吉っ読が、吉祥寺の新刊書店の情報をまとめた地図「吉祥寺書店マップ2018年版」が完成しました。配布店などの詳細は、当方のブログ「空犬通信」の記事をご覧ください。

第20回 メリーゴーランド「メリーゴーランド新聞」/メルヘンハウス「ひろばメルヘン」

「読書の秋」などと言ったりしますが、秋は本関係のイベントが全国各地で開かれますから、本好きにとっては忙しい、そしてうれしい季節ですね。11月3日(金)、4日(土)、5日(日)の3連休、東京では、神田古本まつり、神保町ブックフェスティバル、しのばずくんの本の縁日(3日のみ)が開かれていましたので、これらも気になってはいたのですが、名古屋の地域ブックイベント「ブックマーク」が今年で最後だと聞き、これはぜひ見ておかねばと、名古屋に出かけてきました。

名古屋の書店のものとしては、これまでに、カルロバの「パーマネント」精文館書店の「次読むならこれにしや〜」を紹介済みですが、今回も名古屋で出会った本屋フリペを2つ紹介します。いずれも児童書専門店のものです。
 

まずは、子どもの本専門店メリーゴーランド。開業は1976年。三重県四日市市に本店があり、2007年には京都店ができています。四日市のお店は残念ながら訪問したことがないのですが、京都店は昭和初期に建てられたという古びたビルの中にある、すてきなお店でしたよ。

店主の増田喜昭さんは、書店の経営以外にも、絵本塾・童話塾を主宰したり、児童書関連の執筆・講演活動にも力を入れたりなど、子どもの本の世界を広げることに長年力を注いできたことで業界では広く名を知られている方。『子どもの本屋、全力投球!』『子どもの本屋はメリー・メリーゴーランド』(共に晶文社)といった著書もお持ちです。

「メリーゴーランド新聞」は、同店発行の月刊本屋フリペ。名古屋にお店はないのですが、「メリーゴーランド新聞」はカルロバの店頭でも配布されていますので、同店訪問時に入手してきました。手元にある2017年9月1日発行の10月号には、No.427号とあります。創刊時から月刊ペースだとすると単純計算で35年以上になりますから、開店数年後からずっと継続発行されてきたわけですね。

サイズはB5判で8ページ。一部に写真が使われているのをのぞくと枠線も含めてすべて手描きです。児童書の新刊案内はもちろん、「ひげのおっさん」こと店主のコーナー、グッズやフェア・イベント情報に、4コママンガまで。情報量が多いだけでなく、読んでいて楽しい、読者をあきさせない内容になっています。

名古屋のカルロバ以外に配布店があるのかどうか、サイトには情報がありませんのでわかりませんが、入手ご希望の方はお店に問い合わせてみてください。年会費を払えば郵送による定期購読もできるようですよ。定期購読についてはこちらをご覧ください。


 

もう1つは、名古屋・千種の児童書専門店、メルヘンハウス。1973年の創業で、日本で初めての子どもの本の専門店だとされています。千種駅から数分歩くと、高畠純さんの絵が大きく描かれた、店舗の外壁が目に飛び込んできます。子どもの本好きの方ならば、この外観だけでもうれしくなることでしょう。

同店発行のフリペが「ひろばメルヘン」。この連載では、担当の方が個人的につくっているような、手作り感あふれるタイプのものを取り上げることが多いのですが、この「ひろばメルヘン」はきちんとデザインされ(コピーではなく)印刷されたオールカラーの小冊子です。A5判横置き8ページ。月刊で、手元の2017年11月号にはNo.422とあります。こちらも先の「メリーゴーランド新聞」同様、35年以上続いている計算になりますね。

内容は、エッセイ、連載読み物、新刊案内、ギャラリー(同店には2階にギャラリーがあります)での展示案内、スタッフの方の日記などなど、こちらも情報量の多い読みでのあるフリペになっています。同店を訪問された方は、ぜひ忘れずに入手してください。
 

すてきなお店とすてきな本屋フリペの紹介だけで本稿を終えられればよかったのですが、同店に関しては、1つ残念なお知らせもあります。メルヘンハウスは来年、2018年3月末に閉店することが決まっているそうです。ちょうど45周年のタイミングだといいます。

閉店までにはまだ数か月あります。名古屋でたくさんの子どもたちに本を届けてきたこのすばらしいお店をまだご覧になったことがないという絵本好き、児童書好きの方がいらっしゃったら、この機に、ぜひ足を運んでみてください。

(*本連載は、お店でフリペを入手して読む、一般読者の立場でフリペを紹介していますので、通常は発行店に取材はしないのですが、今回は、同店の閉店情報に関し、同店に内容を確認したうえで、フリペを本連載で紹介すること、その際に閉店のことにふれることについて、事前に了承を得ています。)


 

発行店:(メリーゴーランド新聞)メリーゴーランド
頻度:月刊
発行店:(ひろばメルヘン)メルヘンハウス
頻度:月刊
 
 

お知らせ:
本連際第10回で紹介したTSUTAYA寝屋川駅前店で発行されていた「ぶんこでいず」。残念ながら休刊になってしまったことは記事でもふれましたが、その「ぶんこでいず」をつくっていたねこ村さんが、フリペの世界に復帰されたようです。

フリペの名前は「えほんでいず」。内容は、絵本紹介とご本人の出産レポという組み合わせになっています。現時点では、継続刊行されるのかどうかはわかりませんが、楽しみですね。詳細は、ねこ村さん名義のツイッターアカウント(@nekomurabook)をご覧ください。

厳密には本屋フリペではないかもしれませんが、本屋フリペをつくっていた元書店員によるフリペで、ねこ村さんの知り合いがいる書店店頭での配布も始まっているようですので、ここで紹介しておきます。


 

第17回 「本おや通信」

本連載では、主に新刊書店で発行されているフリーペーパーを紹介していますが、古書店にもフリペを発行しているお店はあります。書店情報がぎっしりのムック『本屋へ行こう!!』(洋泉社、2015)に「書店員がつくるフリーペーパーがおもしろい!」という記事が掲載されています。同記事で、当方は、本連載で紹介済みのものを含むおもしろフリペを新刊書店発行のものからいくつかセレクトしていますが、南陀楼綾繁さんは、神戸のトンカ書店他の古書店のフリペもセレクトしています。

古書店の場合、フリペをつくるにあたって、新刊書店に比べると難しい点もあります。基本的に一点ものの古本を扱う古書店では、本屋フリペではおなじみの新刊・近刊情報や売上ランキングなどは、フリペのネタとしては使えません。本を紹介する場合も、その本を常に在庫しておけるとはかぎりませんので、セレクトやタイミングに工夫が要ります。

ただ、定番のネタが使えないからといって、古書店発行の本屋フリペが情報的に劣ったりおもしろくなかったりするわけではなく、むしろ逆で、読み物を中心にした、作り手の個性的が存分に発揮されたおもしろフリペがいくつもあります。今回紹介する「本おや通信」も、そうしたユニークな古書店発のユニークな本屋フリペです。
 
 
利用者には「本おや」の略称で親しまれている「本は人生のおやつです!!」。店の名前には見えないかもしれませんが、「!!」も含めて正式名称です。大阪・堂島(本好きには、ジュンク堂書店大阪本店のある街ですね)にある書籍と雑貨を扱う小さなお店で、書籍は新刊・古書両方の扱いがありますが、メインは古本。雑貨は、複合型のセレクトショップでよく見かけるようなおしゃれ文房具ではなく、一筆箋、ポチ袋など紙ものが多めで、オリジナルのものも扱っています。

同店発行の本屋フリペ「本おや通信」はA4判、(毎回そうなのかはわかりませんが)両面ともカラーで、厚手のしっかりした紙が使われています。紙面は新聞調の3段組で読みやすいレイアウト。店主坂上さんがFacebookに寄せた説明によれば、《さまざまな職業・年齢の方々に、「自分の人生を豊かにしてくれた本」についてお話してもらい、たまーに作っては店内にてお配りして》いるもの。基本的には1枚に1人の方がフィーチャーされたものになっていて、最後にお店の案内が小さく載っているのを除き、他の記事はありません。

過去には、『「本屋」は死なない』(新潮社)の石橋毅史さんや、店主のお友だちだという芥川賞作家の藤野可織さんも登場。現時点で最新号となる2016年3月発行の第27号には、本好きにはブログ「神保町系オタオタ日記」でおなじみの「神保町のオタさん」が登場し、「自分の人生を豊かにしてくれた本」について語っています。

最新号が1年以上前の発行と少し時間が経っていますが、休刊になってしまったわけではありません。店舗営業、古書展出店、自店イベント開催などの合間をぬっての作成なので、なかなか発行できないようですが、しばらく前に店主さんにお会いしたときに「本おや通信」についてうかがったところ、今年じゅうに出したい!と言っていましたから、まもなく最新号を読めるかもしれませんね。

「公開☆本おや通信!」という名称で、「本おや通信」の「公開バージョン!」という位置付けのトークイベントも不定期で開催されています。書店でのトークイベント自体はめずらしいものではありませんが、同店は、お店のサイズと店主の人柄もあって、お客さんとの距離がものすごく近いので、トークイベントも、独特のアットホームさに包まれた、参加者全員が知り合い(笑)とでもいった感じの、居心地のいい空間と時間とになっています。

「本おや通信」は、同店で無料配布されていますが、現在は最新号27号を含め、過去の号の在庫もないようでした。同店のサイト他でのファイル公開もしていませんので、最新号が発行されたときに店頭で入手するようにしてください。

お店自体、とてもすてきなところで、本好きの店主とおしゃべりをするだけでも、本好きならば幸せな時間を過ごせますから、フリペの有無に関係なく、お店を訪ねるのもいいと思いますよ。


 
 
発行店:本は人生のおやつです!!
頻度:不定期刊

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第16回 「往来っ子新聞」

街歩き好きに人気の高い東京屈指の散歩エリア、千駄木。地下鉄千駄木駅から徒歩数分、千駄木通り沿いにある往来堂書店は、一見ふつうの町の本屋さんですが、その見事な棚作りで全国の本好き、出版書店関係者に人気の高いお店です。同店がすごいのは、そうした玄人に「だけ」愛されるような、敷居の高いお店になっていないこと。地元の老若男女にとってのふだん使いのお店、文字通りの町の本屋さんとしてきちんと機能し、町にとけこんでいるのがすばらしい。筆者も大好きな本屋さんの1つです。

同店で長く発行されてきたフリペが「往来っ子新聞」。紙面は、A4判横置き両面。店頭では3つ折りの状態で、レジや入り口の看板に置かれています。すべて手書きで、新刊やおすすめ本の紹介、文庫などの売上ランキング、フェアやイベントの紹介などの情報が両面にぎっしり詰まっています。

表面の下には、同紙の名物といっていいでしょう、新聞のサンヤツ(一面の下に並んでいる書籍の新刊広告;新聞の段、3段分を使って横に8コマ並ぶことからこう呼ばれます)のように、手書きの広告がずらりと並んでいます。地元のお店の広告あり、新刊広告あり。書影まで手描きのイラストになっています。手書きなので、本文と同じテイストで広告を「読めて」しまうのがおもしろいですね。

創刊は2009年6月。前回紹介した「次読むならコレにしや〜!」も60号超と、長く続いている本屋フリペの1つですが、こちらはなんと本稿執筆時点で通算150号をゆうに超えています。

2013年には、創刊号から109号までをまとめた合本版『往来っ子新聞 創刊号−一〇九号』が刊行されました。税込2,000円。表紙はミロコマチコさんによるシルクスクリーン。1枚ずつ刷ったそうで、いくつか色違いのバージョンがありました。同じスタイルで長く継続して刊行し続けてきたからこそ可能になったものですよね。こちらは完売で、残念ながら現在は在庫がないようですが、また200号記念のときなどにまとめたものが作られるかもしれませんから、ファンの方は要チェックですね。

「往来っ子新聞」は、同店で無料配布されているほか、版元ドットコムでPDFをダウンロードすることもできます。バックナンバーの一覧はこちらをご覧ください。

往来堂書店といえば、なんといっても「往来っ子新聞」が有名ですが、同店にはメルマガ「往来堂ももんが通信」もあります。こちらは週刊で、「本日の一冊」「これから出る本の予定 ピックアップ」「編集後記」などからなっています。まぐまぐで配信されていますので、登録はこちらからどうぞ。バックナンバーはこちらで読めます。

  
発行店:往来堂書店
頻度:(往来っ子新聞)月刊;(往来堂ももんが通信)週刊

●Googleマップ 「本屋フリペの楽しみ方」掲載書店
 
  
 
【お知らせ】
往来堂書店のオリジナル文庫フェア「D坂文庫2017」が7/15(土)に始まりました。同店にゆかりのある選者64人が、とっておきの文庫をセレクト。わたくし空犬太郎も選者の一人として参加しています。読み応えたっぷりのフェア冊子(ブックカタログ)は100円で販売されるそうです。フェアは8/31まで(予定)。

もう1つ、往来堂書店にも関連のあるイベントを。

7/29(土)に「帰ってきたブックンロール(ブックなし)」を開催します。出版・書店業界関係者による音楽ライヴイベントで、往来堂書店の笈入建志さんが登壇するショートトークのコーナーもあります。荻窪ルースター・ノースサイドにて。詳細は当方のブログの案内記事をご覧ください。
 

第15回 「次読むならコレにしや〜!」

愛知県豊橋市に本社をおく、大正創業の老舗、精文館書店。愛知県を中心に店舗展開をしているチェーンで、関東だと、千葉・埼玉・神奈川には支店がありますが、都内にはありませんので、都内近郊の書店好きにはあまりなじみがない名前かもしれません。

ただ、名古屋市中川区にある精文館書店中島新町店の名を知る書店人・出版人は関東にもたくさんいることでしょう。というのも、同店には、目的地にたどり着けないという、ただそれだけのことを、おもしろサバイバルな文章にまとめて、WEB連載で人気を博し、あげくのはてには単行本にまでなってしまったという名物書店員さんがいるからです。ひさだかおりさん。連載をまとめた本は、こちら。『迷う門には福来る』(本の雑誌社)。

その《「活字に関わる仕事がしたいっ」という情熱だけで採用された妻母兼業の時間的書店員》(本の著者紹介より)、ひさださんが手がけ、同店で発行されているフリーペーパーが「次読むならコレにしや〜!」です。

A4判裏表に、手書きとワープロ文字混在で、主にエンタメ系フィクションの情報がぎっしり。創刊当初から、ひさださんが一人で手がけていますが、途中、児童書を紹介するコーナー「えほんの力」が裏面に掲載されていた時期がありました。同店の児童書担当の方の協力を得ていたようで、絵入りの記事はなかなか楽しく読ませてくれるものでしたが、残念ながら休載となってしまいました。

現在は、またひさださんの一人体制に戻り、あいかわらず裏表に情報がぎゅっと詰まった紙面をすべてひとりで手がけています。

本屋フリペを発行している人の多くが感じているのではないかと思いますが、いちばん大変なのは、発行を続けること。それも定期的に続けることでしょう。本連載で紹介している本屋フリペの多くは一人の書店員さんの手になるもので、しかも、業務時間外に作られているものがほとんどです。正規の業務として認められ、輪番制になっていたり、担当者が変わっても継続発行されたりすることはまれで(ないわけではありませんが)、そのため、担当者の方が異動になったりやめてしまったりすると、フリペも続けられなくなってしまう、ということにしばしばなってしまいます。

そんななか、「次読むならコレにしや〜!」は、本稿執筆時点の最新号が66号。月刊ですから、5年以上継続発行されていることになります。個人発行でこの数字はすごい。現在、ぼくが定期的にチェックしている本屋フリペのうち、個人で出しているものとしては、最長の1つになるでしょう。がんばって続けてほしいなあ。

通常号を出し続けるだけでも大変なのに、ひさださんは、これまでに何度か読書感想文対策用の特別号も発行したりしています。題して「勝手に課題図書新聞」。以前の情報では、年に1回の発行で、過去に発行された号を見ると、表はオススメ本の紹介、裏面は「イケてる読書感想文の書き方」という記事になっていました。

「次読むならコレにしや〜!」は、同店で配布されているほか、ひさださんご本人がPDFにして、書店仲間や当方のような出版関係の知り合いに直接配布もしているようです。お問い合わせは、精文館書店中島新町店店のひさださんまで。

 
発行店:精文館書店中島新町店
頻度:月刊

●Googleマップ 「本屋フリペの楽しみ方」掲載書店

 
【お知らせ】
まもなくこんな本屋本が出ます。『東京 わざわざ行きたい街の本屋さん』(ジー・ビー)。

書き手はBOOKSHOP LOVERのハンドル名で本屋情報を熱心に発信していることで知られる和氣正幸さん。

その和氣さんの本屋フリペに関する取材を受け、わたくし空犬も少しだけ本書に情報を提供しています。本連載で紹介してきたフリペの実物を例に引きながら、本屋フリペのおもしろさについての話をしました。コラムとして掲載されているようですので、本屋さん情報に興味のある方はぜひ手にとってみてください。6/20ごろ発売です。

刊行後には、こんなイベントも予定されているようです。「7/7(金)19:30〜 本屋100連発 本屋の良いトコロをこれでもかと紹介する会@双子のライオン堂」(Peatix)。会場は赤坂の本屋さん「双子のライオン堂」。要予約のイベントです。近隣の本屋好きの方はぜひお出かけください。

第14回 「放課後本屋さん」

当方がふだんよく通っている本屋さんの1つ、東京・吉祥寺のBOOKSルーエ。同店の2階には、常設のフリペコーナーがあるんですが、そこで出会ったフリペが「放課後本屋さん」。表紙には「書店員と元書店員が作るフリーペーパーです」とあります。書店員が所属のお店で作成・配布しているタイプのフリペではありませんが、これも「本屋フリペ」の一種だとしていいでしょう。

2016.7.31発行のVol.1の「おくづけ」によれば、寄稿者のサークル名は「野生の本屋さん」、発行者は「蒲山ヒポ麿」となっています。創刊からまだ1年にならない、できたばかりの本屋フリペですが、創刊以降順調に刊行されているようで、本稿執筆時点で10号(2017.5.4発行)まで出ています。

Vol.1の表紙にはこんな一文が載っていました。《本屋の業務が終わっても本屋をやめてしまっても仕事を離れてなお本と物語を愛し続けるそんな野生の書店員が集まって作ってみたフリーペーパーです》。職場を離れた立場を「野生の書店員」と表現しているのがおもしろいですね。

サイズは文庫判よりひと回り大きいB6判。手描きとワープロの文字が混在で、イラストも多用されています。号によってページ数が異なるようですが、最近の号でみると、「レビュー増量号」と謳われているVol.9、「レビュー微量号」と謳われているVol.10はともに32ページとなっています。

内容は、本のレビュー、文芸書・文庫の発売予定など。過去にはテーマ特集の号もあり、これまでに、ガンダム、ポケットモンスター、シン・ゴジラなどが取り上げられています。

この連載では、玄人はだしの画力・レイアウト力をほこる作り手によるフリペも紹介したことがありますが、この「放課後本屋さん」は、いい意味でゆるめのテイスト。レイアウトやイラストに素人っぽさが出ていて、全体に、昔ながらの同人誌、ミニコミっぽい雰囲気になっています(クオリティ云々の話ではなく、あくまで雰囲気、テイストが、です)。自分の好きなもの=本のことをもっと知ってほしいので、こんなのをつくってみました、という感じがストレートに出ていて、読んでいてほっとさせられます。

目を引くのはマンガ、それも数ページにわたるマンガ作品が掲載されていること。4コママンガを載せている本屋フリペは割によく見かけるのですが、9ページものマンガ(10号)、それも身辺雑記タイプではなくストーリーマンガを掲載している本屋フリペはめずらしいのではないかと思います。

フリペの名前や発行人名で検索しても、当方がツイッターで紹介したのが引っかかってくるだけで(苦笑)、公式サイトやツイッターアカウントなどはないようですので、BOOKSルーエ以外にどこで配布されているのか、そもそもよそで配布されているのかもよくわかりません。エリア外の方が簡単に入手できるものなのかどうかちょっと微妙ですので、気になる方は、東京・吉祥寺のBOOKSルーエの店頭をチェックするか、同店に問い合わせてみてください。

配布店:BOOKSルーエ
発行頻度:月刊

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第13回 「ダイワレター」と「BOOKMARK」

新刊書店で独自に発行されているフリーペーパー(=本屋フリペ)を取り上げて紹介するという本連載の趣旨からはちょっとはずれるのですが、連載が延長となったこともありますので、今回は番外編ということで、書店発ではない書店関連無料誌を2つ紹介したいと思います。

まずは、「ダイワレター」。コミックのシュリンク機(コミックは新刊書店では通常、ビニールをかけた状態で売られていますが、あのビニールをシュリンクと呼びます)を手がけるダイワハイテックスが発行している書店情報誌です。

無料の情報誌ですが、A4判12ページでオールカラーと、ぜいたくなつくり。年4回発行で、最新号に記された発行部数は5,000とありました。

新しくオープンとなった店や店頭でユニークな取り組みをしている店を紹介する書店レポートや、書店員インタビューなどの記事が毎号掲載されるなど、まさに書店情報誌としかいいようのない中身になっています。テーマに工夫をこらした特集が掲載されることもあります。過去には、全国の書店員の会や、本屋フリペの特集号もありました。

本稿執筆時点での最新号は50号。祝通巻50号ということで、表紙も赤字に金の水引をあしらった、お祝いモードになっています。過去の号に登場した関西の書店員が集まったトークイベントのレポート、昨年話題を呼んだ文庫Xと覆面BOOKSの特集記事を収録。そのほか、昨年リニューアルオープンとなったTSUTAYA LALAガーデンつくばの紹介記事、広島の中央書店の代表取締役、内藤剛さんのインタビューが掲載されています。

シュリンク機の会社が発行しているフリーペーパーではありますが、話題がコミックに偏ることもなく、シュリンクにまつわる専門的な記事が掲載されるわけでもありません。本屋さんに関心のある人なら誰でも楽しめそうな、新刊書店にまつわる話題が広くカバーされているのが、こうして50号の中身を列記してみるだけでもおわかりいただけるかと思います。

本屋好きには読みでのある内容になっていますので、ぜひ手にとってみてください。ただ、この「ダイワレター」、残念ながら書店店頭では入手はできません。同社のサイトに最新号+全バックナンバーのPDFがアップされていますので、そちらからダウンロードしてご覧ください。

もう1つは、「BOOKMARK(ブックマーク)」。海外文学の紹介に特化した無料小冊子です。本稿執筆時点で、7号まで出ています。発行は、翻訳家の金原瑞人さん。編集に同じく翻訳家の三辺律子さん、イラスト・ブックデザインにイラストレーターのオザワミカさんの名前もあがっています。

CD(のジャケット)と同じサイズの正方形で、24ページ、オールカラー。毎号特集が組まれ、特集テーマに沿った本が1ページに1点、合計で十数点紹介されています。

特徴的なのは、取り上げられているのがすべて翻訳文学であること、さらに、それぞれの本の紹介を、その本を翻訳した翻訳家が担当していること。端正で読みやすいデザインといい、一線の翻訳家がたくさん登場して自らの翻訳作品を紹介する中身といい、とにかく、豪華なつくりになっていて、毎号、手にするだけでうれしくなってしまいます。

毎号のテーマ選定にも工夫がこらされています。4号は「えっ、英語圏の本が1冊もない!?」というタイトルの通り、海外文学の特集で入れずに選ぶのが難しいはずの英語圏のものが1冊もないという特集になっています。最新7号は「眠れない夜へ、ようこそ」。「ホラーの味つけのあるミステリー特集」になっています。

「BOOKMARK(ブックマーク)」は、全国の書店、公共図書館などで配布されているようです。こちらに配布リストがありますので、入手を希望される方は、お近くで入手できるところがあるかどうかを確認する際の参考にしてください。

以上、いずれも厳密には本屋フリペではないのですが、書店愛にあふれる書店情報誌、書店で配布されている本関連の小冊子ということで、紹介しました。次回からは、また通常の本屋フリペ紹介に戻ります。

「ダイワレター」
発行:ダイワハイテックス
頻度:年4回

「BOOKMARK(ブックマーク)」
発行:金原瑞人
頻度:年4回

●Googleマップ 「本屋フリペの楽しみ方」掲載書店

第12回 元紀伊國屋書店本町店「青衣茗荷の文芸通信」(「文芸と文庫通信」)

青衣茗荷(「あおいみょうが」と読みます)さんは書店員ですが、この「青衣茗荷の文芸通信」は、これまで主に紹介してきた書店員が所属店の発行物として手がけているフリペとは違い、青衣茗荷さんが個人で制作・発行しているものです。

青衣茗荷さんは、かつて紀伊國屋書店本町店の文芸担当として腕をふるっていたことがあるのですが、そのころ同店で発行していたのが前身の「文芸と文庫通信」でした。その後、青衣茗荷さんの立場の変化やお店の事情などもあって、現在は改称、青衣茗荷さんが個人で製作・発行するかたちで継続されています。

A3の用紙を4つ折にしたつくりで、文字も含めてすべて手描き。中を開くと、独特のイラストと描き文字がA3の紙面いっぱいに広がっています。書影と書誌情報に簡単な紹介文を添えるという一般的な作品紹介を大きくはみ出したスタイルで、しかも、毎号、とりあげる作家・作品によって、イラストの感じも文章量もデザインも変わります。

ぼくが初めて青衣茗荷さんのフリペにふれたのは「文芸と文庫通信」時代のことですが、一読すっかりほれこんでしまい、以来、本人からフリペをもらい受けては、書店員や出版関係者に直接手渡したり、イベントや集まりで配ったりと、機会を見つけては、すごい本屋フリペがあるよと、勝手に宣伝をしてきました(「まるでマネージャーみたい」だと青衣茗荷さんご本人から言われたこともあります;笑)。

そのようにして多くの人に届けてきたんですが、このフリペを目にしたほとんどの人が、これはすごい!と驚いていました。とにかく、その独特の描き文字と、細部まで丁寧に描き込まれたイラストは、見る者、読む者に強烈な印象を残す出来で、完成度の高さに圧倒されること必至の一枚になっているのです。

青衣茗荷さんは文芸担当だったこともあって、ご本人も熱心な小説読みで、幅広くいろいろなタイプの小説を読んでいますが、どちらかというと一癖も二癖もある作家・作品が好みのようで、フリペで取り上げる本のセレクトにも、そんなフリペ作者の好みが強く出ています。

玄人はだしのイラストや描き文字の腕をフリペ作成に発揮している「美術系書店員」(空犬の造語です)は、本連載でも紹介済みのねこ村さんでんすけさんら、この業界には数多くいますが、そんなフリペ職人のなかでも、最高峰の一人、最高峰の一枚と言っていいかと思います。

なにしろこの紙面ですから、当然ひとつの号をつくるのにもずいぶん時間がかけられているはず。発行頻度は不定期で、けっこう待たされてしまうこともしばしばですが、新しい号が届くと、時間がかかったのも当然としかいいようのないその出来映えに、ふたたび、はぁーっと感嘆のため息をもらすことになるのでした。

この版元ドットコムで紙面を見ることができますが(こちらからPDFをダウンロードできます)、この質感は写真やファイルでは伝わりにくいので、本屋フリペに興味のあるみなさんには、ぜひ実物を手にとってみてほしいと思います。青衣茗荷さんの個人紙ですので、勤務店(紀伊國屋書店本町店)のほか、東京・吉祥寺のBOOKSルーエなど、青衣茗荷さんが個人的にやりとりをしている複数のお店で配布されているようです。

ちなみに、当方は東京での配布係の一人を自認しているもので、毎号、ご本人から直接送ってもらっているのですが、その封筒がこれまたすごい。下に写真をあげておきますが、模様・柄を描き込んだクラフト紙を折ったり切ったり貼ったりした自作の封筒で、これ自体がすでに「作品」になっています。ほかのお店に送られた封筒を見せてもらったことがあるのですが、同じ号なのに、送る相手によって、デザインなどが使い分けられていて、驚いたことがあります。こうなるともう「職人」の域ですね。

    

 
発行店:紀伊國屋書店本町店
頻度:不定期

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本連載は、もともと1年ということで依頼をいただいて始めたものでした。取り上げたい本屋フリペはたくさんありますし、「パーマネント」「SF大作戦」のように、連載途中で新たに発見したものもありましたから、12回しかない紹介のチャンスにどれを取り上げるかは、これまで、常に悩みのタネでした。

本来なら今回が最後になるはずの連載でしたが、版元ドットコムのご厚意で、さらに1年、連載を延長することになりました。これで、限られた回数のために泣く泣く取り上げるのをあきらめていたいくつかを紹介できるチャンスができました。

引き続き、各地の本屋さんで出会ったおもしろい本屋フリペをご紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

なお、こんな本屋フリペがあるよ、とか、この本屋フリペを紹介してほしい、とか、本屋フリペについて情報やリクエストなどございましたら、ぜひ版元ドットコムまでお寄せいただければと思います。

第11回 蔦屋書店熊本三年坂「SF大作戦」

旅先で寄った本屋さんで、知らなかったフリーペーパーに出会えるとそれだけでうれしくなってしまう本屋&本屋フリペ好きの空犬です。今回紹介する「SF大作戦」は、昨年(2016年)の秋に訪れた熊本の本屋さん、蔦屋書店熊本三年坂で出会ったものです。

熊本市の中心街にある蔦屋書店熊本三年坂は、熊本に行く機会があると必ず訪問するお店の1つです。もともと昨年4月末に予定されていたリニューアルオープンが震災でいったん延期になりましたが、無事に6月10日にリニューアルオープン。お店がどんなふうに変わったのか、訪問前から楽しみにしていました。

前回訪問時とは様子の変わった店内の棚配置を確認がてら、端から棚を眺めていると、文芸の棚の上に、見慣れないフリペが並んでいるのが目に入りました。「SF大作戦」。創刊号から訪問時の最新号8号までが、ずらりと並んでいたのです。

タイトルに「SF大作戦」とある通り、本屋フリペとしてはめずらしい、SFに特化した専門フリペです。本屋さんの売り場や棚はジャンルごとに分かれていて、お店のスタッフもジャンルごとに担当が分かれているのがふつうです。それを思えば、各ジャンル担当が、自分の担当ジャンルに特化しつくったフリペがもっとあってもおかしくなさそうですが、実際には、ジャンル限定のフリペはあまり多くはありません。ジャンルを限定してしまうと、つくる側にも読む側にも、いろいろと難しいことも出てくるからです。

ジャンルを特定しないフリペなら、お店で扱う本はどんなものでも取り上げることができますし、特集なども組みやすくなりますが、ジャンルを限定してしまうと取り上げることのできる本自体の幅も狭まります。また、当然のことながらお客さんも選ぶことになり、本来、多くの人に手にとってもらうのが目的の無料配布物なのに、数が出にくくなってしまうという問題もあります。

過去に紹介しました通り、児童書に限定したものや、コミックに限定したものなど、ジャンル特化型のフリペがないわけではありませんが、数として少ないのは、やはりそのような事情もあるのだろうと思います。

「SF大作戦」(このタイトルにぴんときた人は、それぞれの号の副題にもご注目を)の話に戻ります。A4判用紙を四つ折りにした8ページ(初期のものには片面4ページも)に手書きでぎっしりとSFの関連情報が詰まっています。本の紹介はもちろんですが、SF本のタイトルをめぐるコラムなど読み物も充実しています。紹介されている本の洋邦・新旧のバランスもいいし、映画など隣接ジャンルへの目配りもきいています。全編にこんなにもSF愛があふれているのに、マニア向けの独りよがりな内容にはまったくなっていなくて、とても読みやすい。これは、いいフリペだなあ、おもしろいなあ、と、入手したその晩に旅先の宿で8枚を一気読みしてしまいましたよ。

SF好きのみなさんは、同店を訪問する機会がありましたら、文芸の棚周辺のチェックをお忘れなく。

このSF情報満載のフリペを手がけているのは、同店のスタッフで「SF部長」を名乗る三瀬さん。ツイッター(@3nen-sf)でも熱心に情報発信ををされているようなので、フリペを手にするチャンスがない遠方の方は、まずはそちらをのぞいてみるのもいいかもしれません。
 
 

発行店:蔦屋書店熊本三年坂
頻度:?

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第10回 TSUTAYA寝屋川駅前店「ぶんこでいず」

大阪市の中心部から北東に伸びる京阪本線。大阪環状線の京橋から準急で十数分ほどの寝屋川市駅の駅前にあるのが、今回紹介する「ぶんこでいず」の発行店、TSUTAYA寝屋川駅前店です。(ちなみに、寝屋川市のお隣は蔦屋書店発祥の地である枚方市で、枚方T-SITEは、駅でいうと寝屋川市から数駅ほど先の枚方市駅の駅前にあります。)
 

さて、この「ぶんこでいず」、手にした人は、まずその情報量の多さに驚くことになるでしょう。A4判の用紙、裏表両面に、文庫を中心とした新刊情報が、隅から隅まで、一分の隙もなくあふれんばかりに、というかあふれ気味に、手描きでぎっしりと詰め込まれています。絵も文章も、その描き込みぶりとかけられた熱量が、とにかくすごい。目を通し終わるころには、すっかり圧倒されているはずです。現在流通している新刊書店フリペのうち、筆者が知るもののなかでは、もっとも「熱い」1枚ではないかと、「ぶんこでいず」を手にするたびにそんなふうに思います。

版元ドットコムでは、いくつかの本屋フリペについては、PDFデータが公開され、全文が読めるようになっています。「ぶんこでいず」もこちらにデータがあがっています。何度も書いていることですが、本来、本屋フリペはその発行店で入手していただき、フリペだけでなく、お店の棚や平台も一緒に楽しんでいただくのがいちばんなんですが、それがかなわない方もいらっしゃるでしょうから、そのような方はぜひこちらで、どんなフリペかを体感いただければと思います。

さて、そんな現在の本屋フリペを代表する1つといっていい「ぶんこでいず」ですが、大変残念なことに、2017年1月に発行された号が最終号となってしまいました。通算67号。同紙は月刊ですから、5年超にわたって発行されたことになります。棚担当をふつうにこなすだけでも忙しいはずなのに、本業の合間をぬって、自分の時間もフル活用しながら、「ぶんこでいず」を作り続けてきたのは、同店の文庫・文芸担当、ねこ村さん。この情報量のフリペを5年超もの間一度も欠けることなく、定期的に発行し続けるというのは並大抵のことではありません。ねこ村さんの熱意には、あらためて驚かされるとともに、頭が下がる思いです。

通常号は先に書きました通りA4の両面でしたが、最終号はA3の裏表を使った特大号になっています。ねこ村さんによれば、もともと、A3で4ページのつもりで作成していたのが、経費削減のためにA3両面1枚に収めることになってしまったため、字が大変に小さく、こまかくなってしまったとのこと。たしかに当方のような小さな字がつらくなってきた身には読むが大変な感じがしないではありませんが、「ぶんこでいず」のファンならば、これぐらいはなんでもありませんよね。この1枚で、これまでの同紙の歴史もわかるものになっています。

ねこ村さん、長らくおつかれさまでした。そして、これまで、すてきな本屋フリペをありがとうございました。ねこ村さんが、将来、ふたたび本屋さんの仕事に復帰される日を心待ちにしたいと思います。また、「ぶんこでいず」に刺激を受けた、第2、第3のねこ村さんが、本屋フリペの世界に登場してくれることを願ってやみません。
 

なお、フリペだけでなく、お店の様子もぜひご覧いただきたいので、昨年11月にTSUTAYA寝屋川駅前店を訪問したときの店内の様子を、当方のブログ「空犬通信」で写真入りで紹介しています。こちら

店内の文庫棚には、最新号だけでなくバックナンバーも並べられるよう、フリペの陳列スペースが設けられています。棚には、フリペで紹介した本が並べられていたり、フリペと同じテイストの(手がけている担当者が同じですから当たり前なんですが)イラストや描き文字が踊るPOPやチラシがところ狭しと貼られていたりします。売り場とフリペが見事に連動、連携しているのです。

ねこ村さんが棚を担当していた時代に同店を訪問することができなかったという方は、「ぶんこでいず」をつくっていた人が手がけた棚がどのようなものであったのか、こちらの記事で雰囲気を感じ取っていただければと思います。
 

発行店:TSUTAYA寝屋川駅前店
発行頻度:月刊

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