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アフガン・シンポで何が起こったか。

 先日、朝日新聞社が主催した「アフガン復興の現状と課題」なるシンポジウムに行ってきた。
 アフガニスタン支援日本政府代表の緒方貞子さん、ペシャワール会・現地代表の中村哲さん、前国連難民高等弁務官事務所カブール事務所長の山本芳幸さん、JEN事務局長の木山啓子さん、徳島大学総合科学部助教授の饗場和彦さんの5人を集めた討論会だった。中村哲さんに関しては、以前、この版元日誌で亜璃西社の和田さんも紹介(こちらをご覧下さい。)しているので、いまさら説明の必要はない人だろう。当然、緒方さんも。

 会社を黙って抜け出し(ウソ)、昼飯も食わずに有楽町マリオンに向かう。知人と合流し、席を確保。あっという間に満席。立ち見までいた。これだけのメンツで、しかも「朝日新聞」で宣伝すりゃあ当然といえば当然か。それにしても、平日の午後なのに、こんだけ集まるのかと、かなりビックリ。無料の講演会好きのおばちゃんは当然だが、スーツ姿のサラリーマンがいるは制服姿の女子高校生もいるは。仕事、学校はいいのか?と思ったが、自分も同じ立場だからなにも言えず。
 司会者から「この会場は約800人収容ですが、このシンポジウムへの応募はここにいらしている方の3倍ほどありました」と説明があった(このシンポジウムははがきを出して整理券が当たった人と、招待状を持っている関係者だけが参加できた)。しかし、ワタシは2枚当たった。2枚しか応募はがきを出していないのに。話をふくらませていないか、司会者。しかも新聞では定員は700人と書いてあったはずだ。招待客は100人いなかったから、ますます怪しい。応募者全員来ているんじゃないのか?

 と不信感を持ったところで、緒方さんの基調講演が始まる。眠気を誘うような話し方で、睡魔がおそってくる。——いつの間にか拍手の嵐。ん? あっ、基調講演が終わってる…メモしたのは「治安、政治、復興」「軍事行動と復興が同時におこなわれている」だけ…。話したのはこれだけか? そんなわけがない。 どんなことを話していたのか知人に聞くと、「緒方さんは中村先生と意見がまったく違うから聞いていなくても大丈夫でしたよ」。彼はアフガニスタンでおこなっているペシャワール会の井戸掘りに参加したことがあり、昨年の9月11日は偶然(?)アフガニスタンで井戸を掘っていて、当然、中村哲さんの側に立っている。彼と会って、「アフガニスタンに行かなきゃ。井戸掘りに行くぞ」と決心した。が、再就職してしまったために、行けずじまい。ちょっと未練あり。

 休憩のあとに、討論会が始まる。コーディネーターからパネラーの紹介がある。「え〜、緒方さんはあ〜、さきほどお〜、お〜、あ〜基調講演をお〜」……。おまえは大平正芳か?! やばい、これがコーディネーターかよ。うまくまとめられるのか? 不安だ……。
 中村哲さんから話を始める。いつもの腰の低い、誰にでもわかるような話し方。それでいてアメリカや日本を過激に挑発したりする。「アフガニスタンを破綻国家って言いますが、我が国もたいして変わらないんじゃないですかねえ」「アフガニスタンに教育を、なんて言うけど、この国の教育を見るとねえ……」「こんな国(アフガニスタン)に空爆をしてなんの意味があったのか。有害無益だ」と大胆発言がつづく。さすが、中村さん。以前も「日本の新聞はウソばかり書くから、ぜったい読まない。読んでも意味がない。アフガニスタンで本当に取材をしているのか? テレビで放映されていることだけ書いているんじゃないのか?」といったようなことも発言していた。ワタシは好きだ、こういう人。
 木山さん、山本さん、饗場さんと話がつづく。コーディネーターは何をしているのか。討論会じゃないの? 「え〜、緒方さんは〜、え〜、あ〜」とあいかわらず大平正芳。話が進んでいるのに、「ちょっとお〜、話が行き過ぎてしまいましたのでえ〜、戻りましてえ〜、さきほどのお〜」。おい、ホントにコーディネーターか? 話が進んだらそのまま進めて、うまく戻すのがコーディネーターの役目じゃないのか? 不安的中。
 そして緒方さんが話し始める。またもや睡魔が……。寝ちゃあいかん、起きていないと。眠い、子守歌のようだ。
 軍事介入のこと、学校のこと、タリバンのことと、いつも緒方さんと中村さんの意見がことごとくぶつかる。緒方さんは首都カブールを中心に見て回っていて、中村さんはジャララバード、ダラエ・ヌールなど地方をメインに活動している。話が合わないのは当たり前といえば当たり前だが、視線の位置が違うことも関係しているだろう。けど、やっぱり緒方さんの話を聞いていると眠くなってくる。不眠症になったら、緒方さんの話を聞こうと固く決心する。

 無事(?)、討論会が終わり、なぜか、打ち上げというかレセプションに参加した。ホントは招待状をもらった人しか入れないはずなのだが、知人が招待状を持っていることと、入り口付近で石風社の代表・福元さんに会って話をしていたら「一緒になかに入りましょう。大丈夫ですよ」の一言で、受付を強行突破。亜璃西社の和田さんも書いたように、石風社は中村さんの著書『医者、井戸を掘る』『ペシャワールにて』『医は国境を越えて』などを刊行している九州は福岡の版元さん。版元ドットコムに誘ってみようか、とも思ったが、そんな話をできる状況ではなかった。こんど機会があったときに誘ってみよう。
 なかに入ると、中村哲さんがそばにいる! すぐ隣には饗場さん! 緒方貞子がこっちを見ている(たぶん、気のせい)!! けど、知人以外に知り合いもいないから、ペシャワール会の方と少し話をして、サンドウィッチを3切れ食べて退散。

 今回のシンポジウムで心に残った一言。「アフガニスタンには、まず食い物を。自給自足できる農村の復活を」。
 9.11を忘れないためか、アメリカによるアフガン空爆を忘れないためか、どちらを考えて開催したシンポジウムなのかという疑問は残ったが、アフガニスタンの現状もわかったし、石風社の福元さんにも会えたし、有意義な平日の午後だった。

追記)このシンポジウムの内容は、9月17日(火)付の「朝日新聞」朝刊に掲載される予定。また、アサヒ・コムで紹介されるほか、朝日ニュースター(CS放送)でも9月16日(月)、23日(月・再放送)のいずれも15時10分から放送予定とのことなので、このシンポジウムに興味をもった方はどうぞこちらを。

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