『レッド あかくてあおいクレヨンのはなし』
小社では、今回初めて翻訳出版に取り組みました。アメリカで発刊された『レッド』という絵本を見つけたとき、どうしても日本の子どもたちに届けたいと思ったからです。
レッドは赤いクレヨンなのに、赤い物がうまく描けません。先生や家族、友だちがアドバイスしてもだめです。「赤」というラベルを貼られていますが、本当は「青」クレヨンだからなのです。絵本を見れば、子どもたちはすぐにそのことに気づくでしょう。けれど周囲の大人や友だちは、ラベルの中身が見えずに様々なことを言い合います。
この絵本の作家は、元はデザインの仕事をしていました。クレヨンに顔が描いてあるわけではなく、シンプルさの際だったデザインです。日本の子どもたちはなじんでくれるだろうか、と少し心配になり、子どもの本を扱う方たちに見ていただくことにしました。
ある作家さんは、「シンプルで楽しい幼児絵本。子どもがレッドの味方をしていっしょに楽しめば、それでOK」と言ってくださいました。またある書店員さんは、「子どもは周りの理想と希望を叶えるために生きるのではなく、自分自身、ありのままに、幸せになるために生きてほしい。この絵本を全ての子どもたちへ手渡したい」と言ってくださいました。
「この絵本が心と体の不一致に悩む子どもたちの救いになれば、また、理解するきっかけになればいい。子を持つ親として、ぜひ、小中学校でこの絵本を取り上げてもらいたい」という書店員さんもいました。
トランスジェンダーの青年は、「外面だけで思いこんでしまうことはいっぱいあるけれど、大事なのは本人が自分の色を大切にすること」だと、感想を寄せてくれました。
みなさんからのすてきな言葉が集まったので、印刷して本にはさみこむことにしました。おすすめの言葉を書き込めるポップカードも数種類つくりました。こうして手探りで進めてきた初めての翻訳絵本『レッド』
の発刊がとうとう実現したのです。
改めて絵本を見直してみると、この絵本ではクレヨンの色で多様性が表現されていること、だれもがそれぞれの色を持っていること、そしてラベルにしばられずに自分の色を見つけてほしいという作者の思いが迫ってきました。心と体の不一致に悩む子どもたちはもちろん、すべての子どもたちに「ありのままで輝いてほしい」という願いをこめて、『レッド』を読者のみなさんに手渡したいと思っています。