「有名人の覚せい剤逮捕が相次ぐ中病んだ国民性が浮上、しかし真相究明はゲームとなる」
歌手のASKAに元プロ野球選手の清原和博、そして元俳優の高知東生など、相次いで有名人がドラッグの使用または所持で逮捕されている。元AV女優の麻生希も過日、麻薬及び向精神薬取締法違反などの容疑で逮捕されていたと報じられた。「堕ちた○○」として有名人叩きとして恰好のコンテンツとなっている感のある「ドラッグ漬け有名人」だが、一般人にドラッグが蔓延していかないためにも「どのようなプロセスで人はドラッグに溺れ、そして堕ちていくのか」について考察し、麻薬汚染を防御していくことが大切である。
弊社よりリリースした「芸能界薬物汚染 その恐るべき実態」(鹿砦社薬物問題研究会編著)
は、清原和博、ASKA、酒井法子、小向美奈子、岡崎聡子、田代まさし、清水健太郎、押尾学など「薬物事件 お騒がせの主役たち」53人がどのようにドラッグに走っていったのかを緻密に追いかけている。興味深いのは、「女の場合、まず男にドラッグを仕込まれる」という点だ。酒井法子は元夫の高相祐一に、小向美奈子も当時、交際していた男から薬漬けにされている。そこには、「刹那でも苦悩から開放されたい」というややメンタルが弱った側面があるのも否定できない。
およそ世間は、有名人がドラッグで逮捕されると、あたかも溺れた犬を叩くようにおびただしい報道を行う。高知東生の逮捕直後など、ネットニュースでは『乱交パーティをしていた』「実は愛人と住むマンションを探しており、そこがドラッグルームとなるはずだった」などと虚実ないまぜの情報が飛び交った。
誰かをドラッグにはめるには、「仲介者」「売人」そして「カバン屋」と呼ばれるルート開拓者、つまり〝問屋〟が必要だ。厳密には、これらのほかに「テスター」と呼ばれる、麻薬や覚せい剤の純度を調べる、いってみれば「毒味役」が存在するのだが、こうした人たちはお互いに決して交わらない。会ったことすらないはずだ。したがってドラッグのルートは全容の解明が難しい。厚労省のマトリ(麻薬取締部)は、じっくりと何ヶ月もかけてターゲットが確実にドラッグを楽しんでいる瞬間を暴き、ピンポイントで「現行犯」で逮捕することが求められる。もしも現場に踏み込んで、ターゲットがすでにドラッグをトイレに流した後なら、それは三流の捜査官のミステイクだ。
本書には「まさかあの人が」とわれわれが驚愕した文化人たちがドラッグに堕ちていく状況もこと細かくまとめてある。ただの事件簿だけでなく、「ドラッグ漬け列島」となっていく日本特有のメンタルの病み具合が、よくわかる国民性研究の書としても、是非読んでいただきたいと思う。だが、残念ながら多くの場合、真相解明は、国民にとって興味深い劇場型ゲームとなる。げに浅くて救いがたき存在、汝の名は大衆だというべきか。