今年も1年が終わります。
北斗書房の山本です。衆議院選挙も終わり年末モードに突入しました。もうすぐお正月ですが、今年は全国的に寒波の到来が早く、各地で雪害の状況がニュースで流れます。北国では近年にない積雪で「雪下ろし」の作業に苦労され、正月を迎えるあたり日本全国津々浦々、追い上げる毎日です。第3次安部内閣の組閣も終わり・・・前回とほぼ同じ顔ぶれにがっかり。あの選挙は何だったのか。
12月の初めにこの「版元日記」をお引き受けした時には、選挙結果でも大いに語ろうと考えていたのですが、終わってみれば何てことはない、ただの“空しさ”だけが残ってしまいました。マスコミが騒ぎすぎだ。選挙の開票が始まる午後8時からは、NHKを含めたどのテレビ局も、「わが局は」とばかりに特番を組んでいました。見たくなくてもどこにチャンネルを変えても“選挙特番”にうんざりしてしまいました。それにしてもマスコミは“お祭り気分”になっている、もっと真面目に放送してほしい。
私の場合、決まった政党があるわけではない「無党派層」です。それでも必ず投票に行っているのが自慢です。ところが、とうとう「戦後最低の投票率」となってしまった今回の選挙。前回の選挙(第46回衆議院)でも59.32%で最低記録を更新していたのに、今回はそれをさらに下回る52.66%となった。なんじゃ、この数字と嘆いてしまう。実に有権者の半分が棄権する選挙って意味があるのか。民主主義を諦めているというか、世の中どうなってもいいと思っているのか。しかしこの結果を、「予想をはるかに上回る国民の力強い支持を得ることができた(首相談)」と応えるあたりが、感覚的に“シラケる”というか、“政治から離れる庶民の心”が解らない政治家の悲しい現実だと思う。こんな状態はおかしい、この制度がおかしい。構造的におかしい・・・。
構造的に「おかしい」というところでようやく本題。北斗書房は「水産業」の問題を主に扱っている出版社です。外的要因・内的要因、さまざまな問題を扱いながら今日まで来ました。今の最大の問題は「資源の減少」よりも就業者問題。これが漁業・漁村環境に深く問題を投げかけています。儲かっている所でさえ、いわゆる“3k”業種として就業者を探すのが一苦労。ましてや若い世代が独立して生計を立てられるような収入が確保できない漁業(早い話が年収3百万円以下)では、高齢漁業者が細々と営んでいるのが現状です。もちろん後継者はなく途絶える。農業のように“土地”という資産も残らず、個人の“漁労技術”は消えてしまいます。それでも、高齢者になっても働ける場所が保てるのだから「良いではないか」という声が聞こえます。たしかに「昔取った杵柄(?)」で元気に働ける高齢者は幸せです。生きがいを感じながら漁業を営んでいます。ただ元気といわれてもそこはご老人、働く時間もその日の天候や気分に合わせてあまり無理をしないのが常です。それが長生きの秘訣ですから当たり前の行動だと思うのですが、ここに問題があります。漁業では“働く日数”がその権利を左右するのです。それは、ある一定の日数をクリアしないと「漁業をしてはいけない」決まりになっています。裏を返せば、この法律があるから漁業秩序はキチンと守られているのです。ただ今となっては、このハードルが高すぎる。先祖代々続いたその地(前浜)を守ってきた本当の漁業者が、“漁師はく奪”の憂き目にあっているのです。これが日本全国、どこの地域で起きているのが現状です。何とかしなくてはいけない構造的な問題です。
北斗書房は小さな出版社、今年は2冊の本を出しました。
『変わりゆく日本漁業‐その可能性と持続性を求めて』
『東南アジア、水産物貿易のダイナミズムと新しい潮流』
2月にもう一冊でる予定です。
『水産漁業者高齢化と十年後の漁村』
この本は、ただいま編集作業の真っ最中。肝心な表紙のデザインと目次の作成が残っています。思えばこの3冊はすべて、日ごろお世話になっている水産問題を研究される大学の先生方の「共著」となった作品が続きました。現代の問題をしっかりと見据えた内容に自画自賛すること。
来年はどんな年になるか。まずは、地道に頑張りたいと思います。
最後になりましたが、版元ドットコムの会員の皆様、よいお年をお迎えください。
来年もよろしくお願いいたします。
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