7月1日の閣議決定は「集団的自衛権行使容認」ではない?
この欄に政治マターを書くと「偏向しているからよくない」との声があのへんから起こるのは承知の上、今回は書かせていただきます。
7月1日の閣議決定で「集団的自衛権行使容認」が決まった。どのTVも新聞もネット上もそう報道し、認識している。ところが、「集団的自衛権行使容認」は決まっていない、と大声で叫び出した人たちがいる。他ならぬ与党の一角、公明党幹部の議員たちである。「集団的自衛権行使容認」に賛成する人も反対する人も唖然としている。問題の本質はここにある。
1.「集団的自衛権行使容認」は「日本が戦争をしかけること」もOK、という意思表示である。
日本と密接な国への攻撃がA国からあったとき、日本が攻撃されていなくても、日本がA国に対して先に武力攻撃できる。それを「集団的自衛権の行使」という。つまり日本が「集団的自衛権行使容認」するというのは、日本がA国に対して先制攻撃で戦端を開くことあり、と表明したのと同じである。A国から報復として日本中の原発へのミサイル攻撃が想定される。
2.安倍首相は「ありえない事態」ボードでの大熱演
安倍首相がイラストボードを掲げて「米軍艦船で運ばれる日本人母子を自衛隊が救えないのか」とやったのは単なる茶番。米国大使館では旅行中の自国民に対し「米軍艦船に救助されると思うな。そんなのはハリウッド映画の見過ぎだ」とするパンフを配っているのだ。
3.NYタイムズは「日本が戦争できる国になった」と報道した(7月2日)。
「集団的自衛権行使容認」したのだから、NYタイムズがそう報じるのは当然だ。ところが、7月12日付産經新聞は「NYタイムズは反日だ。中国共産党や朝日新聞と同じだ」と言い出した。安倍首相が「集団的自衛権の行使」で戦争することはありえない、とくりかえし発言しているからだ。
4.ベトナム戦争はアメリカが「集団的自衛権の行使」で始めた戦争だった。米兵戦死者4.5万人、ベトナム人死者100万人を結果した。
アメリカにとって、また世界各国にとって、「集団的自衛権の行使」イコール戦争である。そのアメリカが日本に「集団的自衛権の行使」を要請してくることは「自衛隊に参戦してほしい」ということであり、「自衛隊に一定の戦死者が出ることを覚悟してほしい」という意味である。それなのに、その自衛隊の犠牲者について、安倍首相は、7月14、15日の衆参予算委員会で何度も何度もくりかえし質問されたが、一度もまともに答えなかった。「集団的自衛権行使容認」は一定の自衛隊員の犠牲者が出る覚悟の上だ、と答えないから、安倍シンパの方からかえって「安倍は大丈夫か」と心配の声が出た。
5.「集団的自衛権行使容認」賛成者に多い「個別的自衛権」との混同。
尖閣列島や竹島が心配だから「集団的自衛権行使容認」賛成という声が多い。ところが、尖閣防衛は個別的自衛権の問題で「集団的自衛権」とは関係ないのだ。また、竹島は2014年5月の政府の発表で「日米安保条約の適用外」なのだ。逆に、米韓相互防衛条約によって、米軍は韓国のために竹島を守っている。
6.「自民党“公明派”」の「抵抗勢力サギ」
公明党は自民党に全国で選挙協力して「自民一強」の国会を生み出した。協力がなかったら、自民議席は衆院の過半数割れという試算もある。公明党票がなければ、「閣議決定」もなかったのだ。公明党は「自民党のブレーキ役になる」と主張して票を集め、自民に巨大議席を与えたが、特定秘密保護法でも「集団的自衛権行使容認」でも、絶対反対するフリをしながら結果的には自民党の思うままにさせた。つまり、「自民党“公明派”」の「抵抗勢力サギ」である。それでいて、冒頭のように、『公明党が頑張ったから「集団的自衛権行使容認」を許さなかった』などと勝手な「閣議決定の解釈変更」を吹聴して国民を惑わせているのだ。公明党の「何が何でも与党しがみつき」の最大理由は、実は、創価学会への宗教法人課税逃れである。
という次第で、解散総選挙もあるという2014年秋の日本の命運を考える本を、第三書館は『「自民党“公明派”」15年目の大罪—集団的自衛権行使への「抵抗勢力サギ」—』古川利明・著 定価926円+税
として8月5日に緊急出版することになりました。
みなさんの一読・一考をお願い致します。
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