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書店員さんの目利き力

 9月2日に発売した弊社の『努力する人間になってはいけない―学校と仕事と社会の新人論』(芦田宏直著)がよく売れている。初版3000部があっという間になくなり、9月26日に重版出来。いまも書店から毎日追加注文が入っているので、もう少し伸びそうな勢いである。
「努力する人間になってはいけない」表紙 496ページの分厚い本で、定価が2940円(本体2800円+税)。若者へのメッセージ、教育論、ツイッター論…などなど、とにかく中身がぎっしり詰まっている。内容の良さは間違いないが、軽いシュークリームのような本が主流の時代に、こんな羊羹のような密度の濃い本が売れるのだろうか…と、正直、発売するまで自分でも予想がつかなかった。
 この本には、約50ページの索引がある。できるだけ安い価格の本をつくりたかった私は、当初「索引はなくてもいいんじゃないですか?」と言ってみたが、著者は「文章同士を関連付けるのに索引は絶対必要だ」と譲らなかった。
 この本の索引は一風変わっている。たとえば「就職」という項目を引くと、「就職」だけでなく「就職活動」「就職センター」「知識や試験点数がいいからといって就職がいいということにはならないと平然と言う教員」「適性にあった就職」「一括採用」「一般職、専門職」「地頭がいい」「自分の夢、将来の夢」「職務ローテーション制」「ジョブ型、メンバーシップ型」「潜在的な失業人口のプール」「総合職」「抽象的な指標選抜」「奉公制度」といった項目が並んでいる。つまり、同じ語句でなくても、関連する項目がどのページにあるかが、すぐにわかるようになっているのだ。
 この索引をつくってくれたのは、著者の優秀な側近たち。IT系の専門学校講師をしている中心人物は、索引のために、オリジナルプログラムまで開発し、膨大な数の項目を整理していった。著者は本の最後に、「このアプリ設計は、何よりも、すべての原稿に目を通した意味論的な読解が前提になっている。誰にも作れないアプリだと思う。下手な、私の追加の解説よりも、この索引語体系の方がはるかに何かがわかるような体裁を保っている。〈検索〉と〈索引〉とは違うのだということに対する、電子書籍派への、私たちの少しばかりのイヤミでもある」と書いている。著者と側近の方々の強いこだわりで完成した希有な索引なのだ。
 発売前の営業で書店をまわっていたとき、この索引に注目したのが紀伊國屋本店新刊担当の木村さんだ。立ち話でほんの5分程度だったと思うが、索引を見ながら「面白そうですねえ。読みたくなりますねえ…。これは売れそうな気がします」といきなり100冊の注文をくれたのだ。発売直後には、さらに60冊の追加注文。そんな大量の注文に慣れていない私は、事前注文分の配本が届かなかったのではないかと心配したぐらいだった。
 発売後しばらくして紀伊國屋書店本店を訪れ、「無名の著者で、零細出版社なのに、よく売れるって見抜けましたねえ」と木村さんに聞くと、「売れるか売れないか考えて、売れるほうに賭けただけですよ」とさらりとおっしゃっていたが、優秀な書店員さんの目利き力というのは、大したものだなあと実感した。
 それにひきかえ、編集者としての自分はどうなんだ…と考えると、ただただ恥じ入るばかりである。
 
 
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