お気に入りの一冊は?
皆さん、はじめまして。プロダクション・エイシアの大兼久です。
小社の本業は映像制作。ドキュメンタリーのテレビ番組や映画を制作し配給しています。
こうした映像制作の過程で、「多くの人に紹介したい」と強く思った時に、本が生まれました。
本格的な出版は、フィンランドの木々や森の写真と共に、地元に伝わる詩や神話を紹介した「フィンランド 森の精霊と旅をする」です。
http://www.asia-documentary.com/finland/
北欧人気と共にフィンランドの写真集は沢山ありますが、短期間で撮ってきた写真とはちょっと違います。フィンランドの二人の女性写真家が、フィンランド各地に残る古い木とその歴史を訪ね15年かけて撮りためたもの。彼女たちがファインダーの向こうに捉えたのは、森の精霊への畏れ、木をめぐる不思議な風習、木と人が深い関係を結んでいたことを示す、たくさんの詩や神話でした。フィンランド人と木の関わりを深く感じられる一冊で、どこか日本人と似ているように思います。
本国フィンランドでは、原書の「Tree People」が「もっとも美しい本賞」を受賞しています。
この本を作るきっかけは、フィンランドを一年かけて取材し、番組を制作したことでした。
小社の代表が初めてフィンランドを訪れた際に、本屋で手にしたのが原書の「Tree People」。写真の世界観に引き込まれ、高額ながらも購入しましたが、正解でした。その後の番組取材の礎となったのです。
「日本語訳があったら。日本の皆にも読んで欲しい。」と大手出版社に売り込みましたが「写真集は売れないよ」とあっさり却下。諦めきれずに、ならば自分達で、と本を出すことにしたのです。
若い人にも買いやすいようにと、原書のデザインを一新。小ぶりで価格を抑えて、しかし妥協せずギリギリまで贅沢に。これぞ、という一冊に仕上がりました。
はてさて、発行すると多くの雑誌に取り上げられ、6年目の現在も時おり紹介されています。本の宣伝や営業は中々出来ないのですが、ブログでの紹介や口コミもあり、不思議とコツコツと売れて三刷になりました。
本業の映画の場合は、公開まで宣伝に走り回るのですが、この本は自分自身で営業をしているかのようです。親孝行な一冊です。
2011年、震災の1週間前に劇場公開映画「森聞き」(もりきき)を封切りました。
映画には、フィンランドの著名なアカペラグループ、LAJATON(ラヤトン)が曲を提供してくれました。
「森聞き」は日本の森を舞台に、山で生きてきたお年寄りと高校生が心を通わせていくドキュメンタリーです。映画を彩るラヤトンの歌声は、英語とも違う聞き慣れないフィンランド語ですが、なぜか日本の森の風景と心地よく響き合いました。震災の混乱のまっただ中でしたが、スクリーンに広がる山村の風景とあいまって、心穏やかに染み渡るようでした。
「ラヤトンの歌声を、もっと日本の人に届けたい」と、CDアルバムと絵本がセットになった一冊「ラヤトン 無限の森へ」を映画の公開に合わせて出版しました。
http://www.asia-documentary.com/rajaton/index.html
こちらも又、内容にこだわり贅沢な一冊に仕上がりました。
絵でラヤトンとコラボしたのは、イラストレーターの三田圭介。フィンランドの自然や厳しい冬、摩訶不思議な生き物たちがファンタジーの世界に引き込んでくれます。
この二冊の本は小社を旅立ち、あちこちのお宅に居場所を得たようで、持ち主さんから読者カードで近況が寄せられます。
「フィンランド 森の精霊と旅をする」を鞄にしのばせ、実際にフィンランドを旅した人。
「ラヤトン」の歌を聴きながら、寝る前のひととき絵本をめくっている人。
読者の皆さんの様子を思い浮かべながら、嬉しく思うスタッフ一同です。
私にとってのお気に入りの二冊、になりました。