『けいかいくいき ぶたまるさんがいく』出版のこと
「3.11」という日から、早くも二年が経とうとしている。
日本中を揺るがせた東日本大震災・原発事故であったが、私たち西日本、それも四国は愛媛という土地に暮らす者は、直接に家を失ったり命の危険に曝されたりしたわけではなく、当事者として何かを語ろうとするのはおこがましい立場であることは、承知している。それでも、「3.11」という日は日本中を襲ったことには違いなく、その意味では起こったことと今後への責任も含め、私たちも当事者であり、私たちも今、「3.11以後」の日々を生きている。それは復興・再生を目指し営まれる日々であるはずなのだが、2年を経過し、どうも単純にそうとは言えない日々が刻まれていくようで、なんとも落ち着かない思いをしている。阪神淡路大震災の1.17以後とは明らかに違う空気のなか、日本は未だに五里霧中のなかを手探りで歩んでいるかのようにみえるのである。
理由は明らかだ。起こったのが地震・津波のみでなく、原発事故までもであったからだ。そして、その事故の総括も、今後の方針も定まらないまま、時間だけが流れているからだ。
原発絡みのことは、あまりに多岐にわたり、また、あまりに個々により立場が違うためだろうか(ということにしておこう)、マスコミを通しては被災地の現状がなかなか正確に伝わってこない感があるが、「警戒区域」とされた地域をはじめ、3.11から時が止まってしまったかのような土地もある。そうした土地は、日本のなかにありながら見捨てられ、違う時間軸を歩むことを余儀なくされている。そうして、見捨てられたのは土地や人々ばかりではなく、そこに生きる動物たちも、また…。
今回、縁があって、そうした見捨てられた動物たちの救護活動をしている人たちの手になる絵本を出版することになった。3.11から2年を経た今なお続いている動物たちの被災、そのことに目を向け、助けの手をさしのべて欲しいと願っての出版である。
おそらく、こうした種類の出版は、現場に近いところからの発信のほうが、広まりやすいことだろう。現地の痛みは想像するしかない隔たった地からの出版で、どの程度の役割が果たせるかは心許ない限りだが、一人でも多くの人の手元に届けたいと思っている。
「けいかいくいき ぶたまるさんがいく」(文・マオアキラ 絵/写真・さかもとひろかず 定価1200円)、3月11日の刊行である。
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