江戸の崖 東京の崖
創業9年目になったとは言っても、相も変わらず女房と二人だけで、ようやく「株式会社」を「維持」しているだけの状態。かつて素晴らしい内容と装丁の本に魅了されて、その版元を訪れたら、木造アパートの奥の一室で、オシメがぶら下がっている空間のほとんどを在庫が占領していた・・・という話があって、これこそ出版の「原点」と思ったものですが、「原点」を「忘れない」のではなくて、いつまでも「原点」でしかないというのもほろ苦いことです。
だらだらと「小口バクチ」をしつづけるのではないとすれば、ある程度の資本力と販売力の二つともに集中することが必要なのですが、両者ともプアーでは如何ともしがたい。そこでひねり出したのが、自分で書いたものを、その両者を兼ね備える他社から出すと言う方法。ただし、原稿を出して本になるまで、2年以上待たされましたがなんとか上梓、刊行2ヶ月で3刷りというところ。題して『江戸の崖 東京の崖』(講談社)。文字通り崖っぷち人間が書いた、崖っぷちの本。版元から著者側に転じることになり、ために焦ったり困ったりすることも出来、立場が変わると以前なら気が付かなかったこともあり、こういう著者だと編集者もやりにくいだろうなあと思ったりもしましたね。
できるだけ売れてほしいから、著者自身が書店に「営業」に出かけると、担当者が小部屋の椅子と机に案内。何かと思ったら、傍らに拙著をあるだけ積んで、サインしてくださいと。
サイン本として売るのだそうです。サイン本の方が売れるのですと。ありがたいことです。
刊行後は『日経新聞』の「春秋」欄にとりあげられたり、『東京新聞』の読書欄の「書く人」に登場したり、某文化センターの講座依頼があったり、講演依頼があったりと結構反応もあって、「目標10万部」も夢ではないか・・・? ただし拙著が置いてあるのは都内の主要書店にかぎられますねえ。また別の版元に出してある原稿はまだ本にならない。拙著が二三冊同時に平積みになっていれば販売効果が増加するのにとも思うのです。本の素材原稿はまだまだ手元にあるから、どこかの版元さんから出版依頼が来ないかな?