情報量の多い実用書からiPhoneアプリを作ってみました。
試行錯誤。
最近、社員数名の極小出版社・虹有社の進むべき方向について考えていると、なかなか結論を出せずに、ついこんな言葉が浮かびます。
次の本の企画は? 電子書籍にどう取り組むのか? 販売チャネルを増やすには? 流行の有料メルマガは? 会員制の有料webサイトもおもしろそうだなと、全方面的にいろいろ気になりつつも、日々のご飯代を稼ぐ仕事も目白押しで…。
そんななか、「やったことがないからやってみたい」という理由だけで、書籍をベースにしたiPhoneアプリを作りました。
ベースの書籍は2011年5月に出した『日本ワインガイド 純国産ワイナリーと造り手たち』です。単純にいうと、日本のブドウだけでワインを造るワイナリーとそのワイン、そのワインが買える酒屋さんを紹介しています。
判型はA5判変型で、536ページ、重さは約650g、厚さ3cmで、重いです。ちょっと辞書っぽい雰囲気もあります。
厚くて重くて情報ぎっしりという実用書は、体裁的にも、内容的にも、スマホに入れて使えるアプリ向きだと思います。ほかには、辞書や図鑑など、検索して使うようなものも向いています。
今回アプリを作るうえで重要視したのは「検索性」と「デザイン」です。
読者(ユーザー)が、どんな目的で検索するか、どういう検索項目があれば便利か、実際にどのように役立つかということを考え、検索性に優れたものであることを目指しました。
また書籍のアプリ化ですから、元々ある本のデザイン・テイストをアプリに生かすことも考えていました。途中何度もデザイン案を見せてもらい、修正を重ねていきました。このあたりの感覚は、紙の本の制作と同じだと思います。
ほぼ半年かけてアプリを制作しましたが、本の制作と最も違ったのは、いい意味でも悪い意味でも、「アプリはアップデートできる」ということでした。
紙の本を長年作ってきた私は、完成形を出版しなければいけないという意識があります。一方、アプリ制作になれている人たちは「アプリはリリースして、ユーザーの声を聞きながら育てていくもの」という意見を持っていました。もちろんそれは事実で、そういった側面が重要なのは理解しているつもりなのですが、いざ自分たちがリリースするときにはやはり「完璧な完成形」を送り出したいという意識が強く、結局リリースがかなり遅れてしまいました。
この意識の差をどうとらえるべきか、実はまだよくわかっていません。今後の課題だと思っています。
弊社のように、年間の新刊点数が少なく(これも課題ですが)、情報系の実用書がメインのジャンルだと、アプリやwebでの展開は、今後必須だと感じています。
まずは売れる(読まれる)本を作り、その本の情報をベースにアプリやwebサービスを展開し、読者やユーザーのニーズに応えていく…。もう死語なのかもしれませんが、「ワンソース、マルチユース」で、極小出版社なりに、必死、かつ気楽にやっていきたいと思います。
実際にアプリ制作にかかった費用やダウンロード数などは、ここでは書きませんが、お会いできる版元の方なら、参考程度に情報提供します。気軽にご連絡ください。
最後に、今回、アプリの制作を一緒に進めてくれたのは、アライアンス・ポートという会社です。アプリ制作を検討中の版元で、もしご興味があれば、一度連絡してみるといいかもしれません。
参考までに、アライアンスポート社長のブログです。このアプリ制作について書かれています→ salvageship: 夏の宿題を漸く提出した気分 (iPhoneアプリ「日本ワインガイド」販売開始)