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少し気が早いですが、2013年のことについてあれこれ

 来年(2013年)5月15日(水)〜5月26日(日)の12日間、ここ福岡市で、「水俣・福岡展」が開かれる。会場がJR九州ホール(JR博多駅ビル9F)なので多くの来場者を集めるべく、その準備会議が水俣フォーラム(東京・新宿・高田馬場、03-3208-3051)の主催で福岡市内で随時開かれている。9月14日(金)に第1回めの会議があり、参加してきた。若い人たち20〜30代も多く、40名近くが集まっていた。このことは何を意味するのだろうか。7月31日で、水俣病患者の救済申込みが締切られたが、政治的な表面的な措置と本質的な民間レベルの動きは、大きくずれている、ということを私たちの誰もが知っているということだろう。「水俣病問題」はほとんど何も解決していないということを。『なぜ水俣病は解決できないのか』(東島大、小社刊)によれば、「水俣病の被害者はどれくらいるのか」「水俣病とはどんな症状なのか」この2つの問いに明快に答えられる人が誰もいない、ということが現実である。
 「福島原発問題」と「水俣病問題」の根本は同じであることは2011年3月11日以降言われ続けている。だから「放射能汚染の被害者はどれくらいいるのか」「放射能汚染とはどんな症状なのか」この2つの問いに明快に答えられる人は誰もいない、という現実がこの後何十年も続くことになる可能性は大きい。
 この2つの問題を考え続けることは、日本について考えること、さらに人間について考えることにつながっていく。だから、「水俣・福岡展」にできるだけ多くの人が来訪してくれることを切に願っている。

 2013年は、関東大震災(1923年9月)から90年の節目の年でもある。この10月、『伊藤野枝と代準介』という本を刊行した。1923年9月に、この大震災の混乱の中で、大杉栄、伊藤野枝、橘宗一の3人が甘粕正彦ら憲兵隊に虐殺された、あの時代から90年が経つ。伊藤野枝については、いくつかの評伝もあり、よく知られているが、その野枝を、経済的にも精神的にも支え続けた叔父・代準介(だい・じゅんすけ)については今までほとんど語られることがなかった。この人物は、若く優秀な人材を経済的に支援する、いわゆる育英の精神に富んだ実業家である。野枝に対してもその育英の精神と親のような愛情を抱きながら、厳しくも優しく励まし続けている。
 大正という時代に、伊藤野枝という女性の「自由」を底辺から考え続けた才能の影には、やはり偉大な実業家がいて、生きづらい時代を試行錯誤しながら生きてゆこうとする姿に、大いに考えさせられるものがある。人の評価とは、その人物単独の業績では決めることができないということを改めて認識させられる。

 節目の年というものは人それぞれだが、2013年は、以上のことを忘れずにすごしてゆきたいものだ。

弦書房 の本一覧

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