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取材から販売までがワンセット。そしてワンモアセット!

こんにちは。はじめまして。アジアプレス出版部の李鎮洙(リ・ジンス)と申します。
日本生まれの在日コリアンです。聞き慣れない社名でしょうが、「アジアプレス・インターナショナル」とは元々はアジアをフィールドとするフリージャーナリストの集団です。発足は1987年。出版部ができたのは2008年、「リムジンガン」という北朝鮮内部情報専門誌を発刊する際のことです。

さて、今日はその「リムジンガン」を作る私の仕事について語らせていただきたく思います。北朝鮮内部情報誌、というと何やらおどろおどろしいですが、内容はいたった真面目、ずばり北朝鮮内部の記者たちが取材した内容を本にまとめたものです。創刊からこれまで6冊出ており、最新6号は今年2月に発刊しました。

「ん?あの国では自由な取材活動を認められていないはずでは…」
正解です。北朝鮮では国や党が運営するメディア以外には、民間の言論は全く許されていません。ですので、きらびやかなパレードではない、市民の本音や生活臭に溢れた姿を知るためにには、全て秘密裏に取材を行う必要があり、それが北朝鮮の国外へと持ち出されてやっと、外側世界は民衆の真の姿を知ることができるのです。

取材方法は多岐に渡ります。最も多いのは動画(秘密撮影したもの)、他には写真、録音などなどですね。ジャンルも三代世襲への想いといった政治的な内容から、庶民の生活、噂話にファッションの流行まで様々です。普段は北朝鮮に住む記者たちは、文字通り命がけで取材した内容を持って、これまた秘密裏に中国へと渡ってくるのです。これを中国まで受け取りに行くのがまず、出版社員たる私の仕事になります。

「おいおい、それ出版社の仕事ちゃうやろ!」
ナイスツッコミです。タネ明かしをすると、私も元々は北朝鮮をフィールドとする記者なんです。ですが北朝鮮国内に合法的に入った場合には、外国人に開放された観光地や首都平壌の一部を見られるだけで、隅々まで取材をして回ることができません。一方、北朝鮮人ならば、現地の人々の本音、普段の生活などをすべて記録し、取材することができるのです。もちろん危険ではありますが。それでこういった役割分担、共同取材のような形を取っているのです。

無事、取材内容を受け取り、あれこれ相談・情報交換をした後、次回の約束をして別れます。記者は再び北朝鮮に、私は大阪へとんぼ返りです。ここから仕事は「リムジンガン」最新号のための、編集・執筆へとシフトします。編集会議を繰り返しながら、北朝鮮内部記者が書いた原稿を読み易い形に整え、足りない原稿は取材結果を元に新たに書き起こす、動画をキャプチャし写真化する、デザイナーさんとやり取りする、校正に立ち会う、などなど。これは余談ですが、中国で北朝鮮人の記者と別れて大阪に戻る旅路は、グッとくるものがあります。何不自由ない日本と緊張の連続の北朝鮮…いつ自由に行き来できるようになるのかと思うと、車窓も自然と曇りゆき……。

そうこうする内に本が完成します。もちろんその間に別の北朝鮮人記者が中国に出てきたら、飛んで行って上記を繰り返します。「よーし、完成!拍手パチパチ!」ではありません。次に待っているのは販売です。定期購読読者さんにせっせと発送すると同時に、書店さんへの営業です。大阪の梅田、難波を初め関西一円の書店を回ります。その際に、ピチピチの取材結果をテレビやラジオのニュースで流すことも忘れません。そうすれば書店員さんの目も大きくなり、営業効果も倍増です。どれ位売れるのかは・・・企業秘密ということで(笑)。

ここまでやって、やっと私の仕事も一回り終了です。ですが、世界は決して私に合わせてくれません。情勢は常に動き、新しい情報、人、事件が北朝鮮の内外をぐるぐる回り続けていて、これを追うのに精一杯になります。で、気が付くと次号の発刊に向けて準備を始める時期に差し掛かり、空港に向かうことになるのです。それがずばり今なんです、ハイ。

取材、編集、そして販売。手がかかる子どものような本ですが、その分愛着があります。早く幸せ一杯な「北朝鮮グルメ特集本」が出せるような世の中が少しでも近づくよう、第7号のためにあちこち飛び回る毎日です。

アジアプレス・インターナショナル出版部 の本一覧

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