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電子書籍『木で軍艦を作った男』を絶賛編集中

 はじめて版元日誌に寄稿するボイジャーの酒泉ふみです。ボイジャーは電子書籍の制作や販売を行っている創業20年の会社です。昨年からボイジャーも版元ドットコムに参加することになりました。どうぞよろしくお願いします。

 ボイジャーは昨年、ブラウザベースで読書ができる「BinB(ビーインビー)」という新しい読書システムを発表しました。その際に発表した作品が、『シナリオ準備稿「虎 虎 虎」』という40年間以上、消失してしまった黒澤明監督のシナリオです。


※表紙の左側をクリックするとダイレクトに本が読めます。

 私たちは『シナリオ準備稿「虎 虎 虎」』に続く作品として、映画「虎 虎 虎」の美術を担当された近藤司さんという男性のインタビューをBinBで発表しようと考えています。きっかけは、BinB発表時に行ったUSTREAM中継の際に、近藤さんのご子息をゲストにお招きしたことでした。貴重な資料を近藤司さんがお持ちだと聞き、翌年に仕切り直しをして年明け早々、近藤さんに会うため大阪へ向かいました。初の版元日誌は、目下編集中の往年の美術スタッフについての企画を綴ってみます。企画の中心にいる社長の萩野正昭の言葉と共にお伝えします。

「正月七日、松の内が去らんとするなかに、私たちははじめて出会いました。こんな出会いってあるんだろうか。ともに七草粥をすすり、気持ちを和ませ、けれど初対面の頑さを崩すことはありませんでした。言葉は選ばれており、決して乱調な物言いはありません。私は言葉に隠されている何かを探ることをしなければなりませんでした」(萩野)。

 近藤さんは、映画『虎 虎 虎』で軍艦を作った美術スタッフでした。その軍艦が、木で作られていたことをご存知でしょうか? 砂の上に建てられた軍艦。映画という虚構の中に再現される建造物の儚くも空しい宿命に、果敢に向かい合うことの矛盾。それが生きるという道なのかもしれません。
 近藤さんを取材した萩野からは取材時の写真や、もくじ案のメールがバンバン届き、熱量の高さを感じました。私はボイジャーで編集業務を担当しているのですが、萩野のスピードに驚くばかりでした。
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実際のロケ現場の風景。無数の杭の上に戦艦長門は構築されました。この杭、実は九州各地で集められた電信柱! その時代、木の電信柱はコンクリート製のものへ切替えられようとしていました。電信柱は虚構を支える役割を最後に担ったことになります。本当にお疲れさま。

「近藤さんはご病気を患っているとうかがっていたので、かなり深刻な事態を覚悟していましたが、お会いした表情はさわやかで、言葉もしっかりしており、随所に小気味いい弁舌を耳にしました。ああ、映画屋さんだナ、活動屋だナと、古き仲間に触れる想いです。スタッフジャンパーを着ていただけますか、とお願いしたら、気軽にそれを羽織ってくれました。真っ赤なジャンパーを着た御仁が近藤司さんです」(萩野)。

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このジャンパーを着て椅子に座ってもらいました。そこに何気なくガラスのテーブルがあったのです。でもよく見ると船の舵取りリングが見えますよネ。これはセットとして再現された空母赤城の操舵室に利用されたものだったのです。近藤さんが捨てるに捨てられず、大道具にお願いして作ったものでした。撮影終了後、テーブルにしたらいつまでも残るだろうと考えたそうです。こんなところに思いもかけない遺品が残っていたとは……。

「地に刺さる無数の杭のように、もしかしたら私たちは日々を生きているのかもしれません。近藤さんのお話をうかがって、軍艦の底にある本質をはじめてこの目で見たような気がしました。それはなんだか電子書籍をめぐる一連の流れにも似たものです。さまざまな想いを込め、この電子書籍のタイトルは『木で軍艦を作った男』としました。もうすぐ皆さまにご覧いただけます。 儚い夢を仰ぎながら自分もまた日々老いさらばえる道を突き進んでいるのでしょうが、それを何とすることもできません。願わくば限りない拍手をもってこれを励まそう。決して多くはない人のまばらな音であってもいい、人の手がなす音の響きを聞くことこそ、生きることそのものなんですよね。想って立つ姿こそ人の尊厳だと」(萩野)。

 口伝電子書籍ともいえる『木で軍艦を作った男』、完成しましたらご報告させていただきます。どうぞお楽しみに!
 
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