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書店があって旅がある

こんにちわ。左右社の東辻と申します。2009年末から左右社で編集、その他諸々の業務を担当しています。

さて、何を書かせていただこうかと考えたのですが、これまでで印象に残っている書店の話を紹介しようと思います。書店といっても国内ではなく、外国の。左右社に入る前、半年ばかり無職となって旅行に出、行った先々でついつい本屋に入ったり古本市を冷やかして、読めもしない本を買ったりしたのですが、そのときの話です。

どこの国でも、その国のことばをしゃべることさえ覚束ない人間が書店へやってくるというのは面白いもの(?)なのでしょうか、不審の眼差しで見られることはありましたが、追い払われることはありませんでした。

クレタ島の詩の専門書店では、イスとワインをすすめられて片言のギリシャ語&英語で、やれ俳句がどうとか(芭蕉から石田波郷なんかも収録した俳句の翻訳書が刊行されていました)デモがどうとか(ギリシア経済危機の前から銀行への投石なんかが起きていました)、2時間くらいおしゃべりした後、いいから持ってけ、と現代詩のアンソロジーをいただいてしまいました。もらうばかりでは悪いので、店主がお薦めというエリティスの詩集を1冊買ったのですが、読み終えるのはいつになることやら‥‥‥。
博物館の真裏、ちょっと陰になったところにある狭い事務所のような一室。壁面に棚を巡らせ、世界中の詩人のギリシア語訳詩集が面出しにされている様は壮観でした。ときおり博物館はどこだ(スグソコ!)などと訪ねる観光客が飛び込んできます。そういう人向けにガイドブックもほんの少し外に並べているけど、中の本=詩集は全然売れないね、と店主も苦笑していました。

アルバニアの地方都市で新聞を買おうと思って入ったお店でも、会話こそほとんどなかったのですが(あちらは英語ダメ、こちらはアルバニア語ダメ)、君のように勉強熱心なヤツにはこれがお薦めだ(タブン)と差出されたのは、英語とアルバニア語の簡単な単語帳。学校用のノートや鉛筆も売っているお店だったので、中学生くらいが使うのでしょうか、ごく簡単でコピーのような印刷の小冊子。
首都ティラナの書店とはそもそも流通事情が異なる様子で、新聞やテレビ雑誌のような雑誌以外は、あまり本をたくさん置いていませんでした。マケドニアとの国境付近のそれなりに歴史もある街でしたが、もう少し探索しないと、書店そのものにアクセスできなかったのかもしれません。

そしてベトナムはフォンナム文化が展開するPNCという書店。いってみればベトナムのジュンク堂でしょうか。フエやニャチャンでは1本のビルに入っていて、英語のペーパーバックから美術書のようなものまできっちり揃えてある大型書店。
とくに印象的だったのは、最上階に素敵なカフェがあったり、ブランドマーク入りにバッグをつくっていたりと、本の販売+αの部分に力を入れているようだったこと。子ども連れでゆっくりと本を選んでいたり、学校帰り風の学生が参考書のコーナーにいたりと、落ち着いたいい雰囲気。私はついつい連日入っては、棚を眺めて、最上階のカフェへ、と通ってしまいました。
チェーンとしての特長を探すとすれば、子どもの本のコーナーの広さや明るさでしょうか。狭いお店でも入り口すぐに児童書が面出しされていたり、子どもが座れるソファを置いていたり、若い人へ書物をという姿勢が伝わってきました。

何という書店か、どういった形態で商売をしているのか、そもそも知らずに気の向くままに入ってみただけですが、都内をはじめ書店へ営業にまわりながら、時折、あちこちの書店のことを思い出します。
書いていると、また旅に出たくなりますが、旅といえば、管啓次郎さん。オセアニア、メキシコなど魅力的な土地を旅し続け、どの書籍からも異国の風、土地の匂いを伝えてくれるまことに稀有な文学者です。左右社でも書評・エッセイ集『本は読めないものだから心配するな[新装版]』(このたび装丁を改め、引き続き好評発売中です!)、そして世界の土地を踏んできた管さんならではの大きな感覚で、新しい詩人の誕生と話題になった『詩集 Agend’ars』を刊行しています。これから旅に出ようという方へ、この2冊をお薦めします。
 
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