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「自殺」を迫られている、出版メディア

 『流出「公安テロ情報」全データ』は公安警察の違法捜査を告発する本です。
 同時に、その違法捜査の内容をすべての人々、わけても違法捜査の被害者のみなさんに知らせることを目的にしています。
 ネットに流出したこの膨大な「テロ情報」が本物だとすると、警察はイスラム教徒=「テロリスト」と決めつけた、あからさまなイスラム迫害を国を挙げて行なっているのです。
 モスクの前に43人の刑事が張り込んで、出入りする参拝者を片っ端から24時間尾行してまわり、行動を監視して全銀行の全口座について金の出入りをチェック。怪しい人物である基準が「熱心に礼拝している」とか「子どもが産まれたら、信心深くなった」という類ばかりなのです。それも現場の刑事の勝手な判断ではなくて、日本全体の方針としてそうしろ、という趣旨の文書もこの本にふくまれています。
 そのように莫大な税金を遣って調べ上げた、多くのイスラム教徒の公安警察版「テロリスト・リスト」がこの本のかなりの部分を占めています。信じる宗教だけを理由にしたこのような情報収集とリスト作りは憲法に違反し、個人情報保護法にも抵触すると考えられます。
 米露中英仏どの国にも数百万人以上のイスラム教徒がいます。アジアのムスリムは10億人以上です。日本政府・警察の国家的イスラム差別は大きな国際問題となるでしょう。
 この本にはそれらのデータ内容をそのまま収録しました。プライバシー情報が多いのは事実です。関係者には誠に気の毒なことです。でもそのプライバシー侵犯をした元凶が警察であり、今もそのままテロリスト・データとして警察に残っていることが問題なのです。
「あなたはテロリスト視されて、個人情報がこんなに警察にファイルされていますよ」
と知らせるためには、そのまま全部収録する必要があるのです。どれほどひどいものであるか、全データを示すことが重要だと判断したのです。
 名前を消して、写真を消して、住所、勤務先、ケータイ番号を消して出版すればいいという声があります。本人以外には特定できないようにするべき だ、という指摘はもっともらしく聞こえます。
 でも、そのように情報を取捨選択して出版することは、この違法捜査の被害者であるイスラム教徒たち(日本人も外国人もいます)が警察に抗議し、 情報抹消を要求し、賠償要求する根拠をどんどん小さくするだけのことになります。被害者たちがそうした行動をとるときの重要な書証として役立つこ とも想定して、この本は全データ収録で編集されているのです。
 それに、何よりも先に、この情報全部が既にネット上で広範に拡散し、新聞報道によれば、21ヶ国1万台以上のコンピュータにダウンロードされています。その何十倍何百倍の人がオリジナルデータを見ているのです。その意味では、この情報はすべて全世界に向かって公開されてしまった拡散済情報なのです。
 それなのに、そのデータを2000部印刷出版するときだけ、黒塗りだらけにして出せ、というのは、出版メディアに「自殺」を迫るに等しい要求に他なりません。
 11月29日、東京地裁は、プライバシー保護を理由に、この本の4ページ半を削除しなければ出版できないとする仮処分を決定しました。私たちは、とりあえず、その決定に従った第2版を作ります。しかし裁判所がその仮処分決定の中で、この本の目的とする公安警察の違法捜査の告発と違法捜査被害の実情公開という公益性が全くない、としたのは納得できません。
 公安警察情報流出という派手な外見にとらわれることなく、その情報の中身、違法捜査と国家的イスラム迫害という大問題にマスコミも読者も気付いていただきたい。
 そのためにも、サブタイトルを、
 ―――――イスラム教徒=「テロリスト」なのか?
としてあるのです。
 裁判長さん、やっぱり、公益性はゼロなんですか?

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