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変わりゆく出版業界と、変わらない志。キーワードは「芋蔓式」

皆さん、はじめまして。
昨年末に小さな小さな出版社として手漕ぎ舟で漕ぎ出しました、ブリコルール・パブリッシングと申します。よろしくお願い致します。
小社は、大阪と京都の境にある“天下分け目の天王山”の麓から、「希望をカタチにして届ける出版社」です。
出版社といってもひとりでやっているので、出版社じゃなくて出版ですが、「いろんな方とのご縁を通して、手に入るモノ、ネタ、見識を寄せ集めて、新しいものを編み出してカタチにしてお届けする」ということで、社名のとおり「ブリコルール・パブリッシング」でやっております。

 小社の第一弾の刊行となる『ももクロを聴け!ももいろクローバーZ 全134曲 完全解説』
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は、今月発売したばかりですが、ありがたいことに予想をはるかに超える予約注文を頂戴して、発売前にもかかわらず重版致しまして、発売してからもおかげさまで好調に売れ続けております。お買い求め頂いた読者の皆様には、改めて御礼を申し上げます。

小社は、取次ルートによる自動配本ではなく、書店さんやレコード店さんからの注文に応じた冊数を出荷する、トランスビューさんが主導されている、注文出荷制の版元のグループに参画しております。
街場の書店さんが次から次に廃業して激減している出版流通の現況に対して、書店さんの粗利の改善と流通の迅速化を目的に直取引を行うことで、書店さんと出版社が共存共栄していける道を模索しようと、書店さんとの関係性を築き上げてこられた「トランスビュー方式」と呼ばれる取り組みで、詳しくはトランスビューの工藤さんの版元日誌をご覧ください。

 私事ですが、四半世紀強の間、出版業界に身を置いてきましたが、対書店さんや対取次さんに向けた営業に関してはあまり経験がなく、またオンライン書店が登場して以降の出版流通の構造やシステムについては全然、見識がありませんでしたので、今現在もまさに手探り状態で、トランスビューさんをはじめ、業界の諸先輩の皆様のご助言ご支援を仰ぎながら模索している状況です。
しかし実状を知れば知るほど、出版業界も変わったなぁと感嘆している次第です…。
もう20年も昔に勤めた京都の出版社では、有名アーティストの6,000円のヘアーヌード写真集が百数十万部売れてビルが建ったり(一時、「マドンナビル」って囁かれたりしました)、パートワークという新しい刊行スタイルが大ヒットしたり(当時の先輩が現在、デアゴスティーニ社でヒット作を連発しています)、また前職の関西の情報誌の出版社では神戸や京都の街のガイドブックが数十万部のヒットを記録したり(その功労者は、版元ドットコムに加盟されている先輩社の140Bのボスのお二方です)、といったこともありましたが、そんな希望や可能性に満ちた出版業界の話って、今や遠い昔のような…。
出版業界がこれほど激変しているということを独り立ちして改めて思い知りました。

 とはいえ、時を経て出版流通の構造や出版業界が直面している課題は変わっても、本や雑誌といった出版物を通して、いろんなものの見方や価値観を提示して、読者の皆様に今まで知らなかった世界観や見識との出合いをお届けする、という出版社のあるべき基本は変わらないと思っております。
本も、音楽も、映画でもアートでも、あるいは学問でも、何でもそうですが、初めから目的意識やタスクありきではなく、たまたま何かの縁で巡り合った1冊、ひとりの作家やアーティストの作品から、その作品世界に登場する、あるいは関連する他の作家やアーティストの作品へと徐々に興味が広がって、手探りでいろんなものにアクセスしていくうちに“芋蔓式”に世界観が広がっていくものだと思います(この“芋蔓式”ってワーディング、小社『ももクロを聴け!』の中で著者が使っている言い回しですが、結構重要なキーワードなので、『ももクロを聴け!』のP140の本文4行目にマーカーでグイグイと線を引いといてください。必ず、赤、黄、ピンク、緑、紫の5色のマーカーで。1色でも欠けてはダメです。なぜなら、「どの色が欠けてもこの夢の続きは描けないから♪」
from『モノクロデッサン』 え、小社近刊がお手元にない? そんな方はスグにお買い求め頂くことをツヨクツヨクお勧め致します)。
私事でちょっと蛇足にはなりますが、小社の社名の「ブリコルール」に巡り合ったのも、沢木耕太郎さん→竹中労さん→船戸与一さん→平岡正明さん→今福龍太さん→レヴィ=ストロースという道のりだったし(そしてストロースからサルトル、ボーヴォワールやメルロー=ポンティ、ラカンやデリダ、ドゥルーズやガタリへと広がって…)、「ももクロ」に巡り合ったのも、ヘヴィメタやハードロックのスピード&重量感→パンク、オルタナティヴ・ロックのストリート感覚とカウンター精神→ニューウェーヴの時代感覚→プログレの構築美→マイルスやオーネットのカオティックな雑食感覚→Pファンクやスライ、ネヴィル・ブラザーズの身体性とファンクネス→ラテンの開放感→クラブミュージックのフロア感覚→ストリートやフロア感覚を消化したモー娘。やPerfume→それら全てを飲み込んだ「ポップカルチャー史
がまるっと収まりつつも、全く新しい“響き”を持って、歴史を更新し続ける唯一無二のアーティストとしてのももクロ」って道のりでしたし(その先の「ももクロから広がる音楽世界」については、ぜひ小社『ももクロを聴け!』をご覧ください)。
この「芋蔓式で広がる世界観」の話、もっと蔓を伸ばしてから収穫して、特性ダレで美味しく味付けして1冊にまとめて、小社からこの秋には刊行予定ですので、ご期待くださいませ。え、芋蔓ってこんなに美味しく食べられたのね、って驚くと思いますよ(間違っても、お料理のレシピ集じゃありませんのでご注意を)。
自分の好きな作家やアーティストの作品、その世界観で満足し、その中で留まってしまえば、そんなふうに視野や世界観が広がっていくことはありませんし、目的意識やタスク達成といったお題が先にあれば、人から見れば無駄とも思えるような寄り道はしないだろうけれど、でもそんな寄り道も含めて視野や世界が広がっていくということで、そこにマニュアルや近道はなく、効率や合理性を求めてしまえば、初めから世界の広がりも制限されてしまうような気がします。リミッターを外さないと、次元上昇はできませんからね。
それって店や街との関わり方も似たようなものであって、よく見知っている店や場所に行けばそりゃ間違いはないし、不味いもんを食べたり嫌な想いをしたりすることもないかもしれませんが、それじゃあ街で暮らす醍醐味の十分の一も享受出来ないような気がします。たまには、不味いもんを食べてしまって愚痴ったり、無粋な客と鉢合わせして嫌な想いをしたり、あるいはこっちが酔ってはめを外してしまって店主に注意されたり、といった失敗も含めて、街で暮らすことの楽しさだと思います。
そして人間関係も同じで、既存の関係性の中で終始留まっていれば、たとえ今、身を置いている場所、組織、コミュニティがいかにリスクがなく安心できて心地良かったとしても、そこで安息して自閉してしまえば、世界は拡大していかないし、いずれは萎んでいくような気がします。

 出版の世界に身を置く者の端くれとして、ひとりでも多くの読者に向けて、読者の皆様の視野や世界観が広がるきっかけとなる1冊をお届けできれば、と願いつつ、1冊1冊に全身全霊を込めて、創り続けていきたいとツヨクツヨク決意する次第です。
何らかのご縁で、小社の『ももクロを聴け!』を手に取って頂いた読者の皆様が、本書をきっかけに、あるいはももクロをきっかけに、その向こう側に広がる芳醇で濃密な世界に出って、今まで知らなかった価値観を享受するきっかけの一端をご提供できれば、出版元としてこんなにうれしいことはありません。

 ここで小社の次の刊行予定について。小社の第二弾は『I am flower』(仮題)。大阪・堺の華道家・片桐功敦さん(花道みささぎ流 家元)が、震災後、原発事故の影響が残る福島県に移住して、現地の方々と活動をスタートさせた、植物を身に纏うという行為を通して、アニミズムや弔いの儀式を遠望し、「自然と人間の繋がり」を再考するワークショップ。身近な植物との触れ合いから、希望の再生を試みる活動の姿やその想いをカタチにしてお届けする予定です(7月頃刊行予定)。
第一弾の「ももクロ」と全然、内容が違うと思われるかもしれませんが、私の中では繋がっておりまして…。というのは『ももクロを聴け!』でも解説している、ももクロの3rdアルバムは『AMARANTHUS(アマランサス)』(これ、とんでもない大傑作ですので、ぜひご一聴されることをお勧めします)。タイトルはメキシコの祝祭「死者の日」で供されるお菓子にその種子が使われるというヒユ科の植物から取られているんですが、本アルバムのコンセプトは「起きて見る夢」で、アルバムを通して「ヒトみな全ていずれ死ぬことまでを含めてが、生きるということである」という、ももクロ流のポジティヴなメッセージが貫流しています。  
ね、ちゃんと繋がっているでしょ(え、どうせ後付けやろって? 嫌やわぁ、そんないけず言わはって。あ、旦那はんが帰ってきはったんで、そろそろおいとまさせてもらいますわ。ほな、おおきに)。

 いろいろとっちらかって長くなっちゃいましたが、最後に、小社は小さな手漕ぎ舟で漕ぎ出したばかりのまだよちよち歩きの出版社ですが、たくさんの叱咤激励を賜りますよう、お願い申し上げます。

ブリコルール・パブリッシング本の一覧

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