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来たくなったら自分で探そう

3月26日、北海道新幹線開業。
 地元道南の自治体、観光協会、商工会議所といった類いは、新幹線歓迎ムードで盛り上がり、地元紙も連日新幹線ネタのオンパレード。
 観光業への依存度の高い函館市はもとより、観光を町おこしの目玉にしたい各市町では、町の魅力度アップの取り組みや観光客招致のための情報発信とやらに余念がなく、市民に対しても「おもてなしの心」で旅行者を迎えるよう呼びかけている。
 しかし、どうなんでしょうかね。

 旅行で訪れた函館に惹かれて毎月のように函館通い。その挙げ句、函館の本をつくりたいと、京都から函館に移住して出版社を立ち上げたという私ではあるが、この一連の動きには戸惑いや鬱陶しさを禁じ得ないというのが正直なところ。
 だいたい町の魅力など、つくるものではなくできるもの。にわか仕立ての食のイベントごときで、魅力あふれる町になれたら苦労はいらない。富岡製糸場などはいい例で、真面目に殖産興業に励んだから世紀を経て世界遺産にまで押し上げられた。
 情報発信もどうですか。だいたい訪れる前から、ああだこうだと「町の魅力」を吹き込まれるなんて、推理小説の犯人を最初から教えられているようなものではないですか。
 それに私など、土地の人々のありのままを見たくて旅するほうだから、旅行者を見るなり、「おもてなし」だとかいって急に態度を変えられたら、「ギブ・ミー・チョコレートじゃあるまいに、控えおろう」と嫌味の1つも言いたくなる。本当に気に入った町なら、地元住民に石を投げられても、また来ますよ。
 そんなわけで北海道新幹線開業のお祭り騒ぎには我一切関知せず、と際の際まで頑なに沈黙を通してきたが、黙っていても悪しき風潮に歯止めはかからず、何もせず不平不満を腹に溜め込んでいるのは卑怯だしと(やっぱり地元出版社としては千載一遇のビジネスチャンスでもありますし)、1月も下旬にさしかかったころ、急きょ函館観光本の出版を思い立った。
 突貫工事で3月中旬、発刊にこぎ着けたそのタイトルは、『来たくなったら自分で探そう—超不親切 移住者による函館ガイド』
9784906833078_600
原題は『ここに来たけりゃ、自分で探せ』だったが、美辞麗句の好きな現代日本人には煙たがられるのが落ち、と踏みとどまった。
 旅行で訪れていたころから足かけ8年、肌で感じた函館のツボを写真と単文で綴ったもので、内容は超真面目だと自負しているが、いわゆる観光銀座は取り上げていないし、紹介した場所へのアクセスガイドは一切なし。名前すら出していない場所も多く、タイトル通り、来たくなったら自分で探そう。スマホ片手に町歩きするより、そのほうがよっぽど町をじっくり観察するのではありませんか。
 ちなみにキャッチコピーは、「口先だけのおもてなしも、余計なお世話も、もういらない。情報の海に溺れそうな現代人に贈る、案内しない町案内」。一部関係者、知人からは絶賛を博しているが、その数10名未満。さてさて、どれだけ売れるだろうか。

新函館ライブラリ本の一覧

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