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北国の出版社

 初めまして、(株)亜璃西社の代表をつとめる和田由美です。
ホームページ(http://www.alicesha.co.jp/)を見て頂くとわかりますが、1980年代末(88年)に、北の地・札幌で産声を上げた出版社です。小さな出版社の例に漏れず、青息吐息の自転車操業で、 14年目を迎えています。もともと、3度の飯より本が好きで、編集プロダクションを基盤に書籍の出版社を旗揚げした訳ですが、実際には資金が潤沢に無ければ、自在に本が作れないという“悲哀”を身にしみて感じています。同業の方には当たり前のことでしょうが、たまには愚痴ってみたいのです。

 ところで、最近のアフガン問題について、各テレビ局は、膨大な時間を費やして報道しています。本来なら「映像の力は凄い」と言いたいところですが、知りたい情報はなかなか届かず、何がなんだかさっぱりわかりません。そんな時、手に入れた一冊の本、中村哲著『医者井戸を掘る−アフガン旱魃との闘い』(石風社・定価1800円)は、私の素朴な疑問に対し、誠実に答えてくれました。何よりも、国際社会から見捨てられたアフガンの現状を、これほど温かい眼差しで伝えてくれる中村さんという人物に、大きな感銘を受けました。わたしとしては、自信喪失しつつあった「活字の力」ですが、まだまだ底力があることを、この本が実証してくれたような気がします。この本の著者はもとより、出版社並びに編集者の方に敬意を表したいと思います。

 話は変わりますが、亜璃西社の最新作は、友人の前川公美夫さん(名著『北海道音楽史』の著者でもある)が書き上げた、異色のノンフィクション『響け「時計台の鐘」』(定価2000円+税)です。“♪とけいーだいのーかねがなる”で始まる「時計台の鐘」は、古くから住む札幌市民なら誰でも知っている名曲です。けれども、この名曲が“いかにして生まれたか”を知る人は、ほとんど居ません。前川さんは偶然にも、時計台の建物の中にテスト盤のSPレコードが保存されているのを発見。それを機に、名曲が生まれるまでを徹底的に取材し、知られざる逸話まで探り出しています。また、レコード会社の協力を得て、SP盤の復刻をディスク化、巻末にCDを付けました。CD付きの本は、亜璃西社としては初めての試みです。まだまだ、思い通りの本造りはできていませんが、石風社さんに勇気をもらったことでもあり、先達の皆さんを見習いながら、北国の出版社ならではの本を出し続けていきたいと思っています。

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