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「版元品切れ」の正体

 書店で本を注文する。そして待つこと数週間。「その本は品切れです」と言われることがある。これはリアル書店でもオンライン書店でもよくあることだ。「無いなら無いとなぜ早く教えてくれないのか」とふつうの人なら怒る。さらにそのあとでべつの書店でその本を見つけたりする。または知人から「○○で注文したら届いたよ」と聞いたりする。そういう目に遭った人の、出版流通 への不信は根深い。
 この「版元品切れ」という状態にも、内訳がいろいろある。

真性の品切れ
 いちばん判りやすいのが「以前に出版したんだけども、あまり売れないので重版はせず、品切れのままにしてある」というパターン。版元にも取次店の流通 在庫にも本の在庫はない。これで版元が出版権を放棄すると、いわゆる「絶版」という状態になる。
 それでも版元には返品が戻ってくることもあるし、「返品の在庫はあるけれど、あまりにボロくなっているので商品として出せない」という場合もある。どうしても入手したければ(注文する本はたいがいそうだから)版元の営業部にダメモトで一度かけあってみるといい。品切れになってからの期間が長いと入手はむずかしいが、古書の検索サイト(インターネット古書店案内など)で探してもらうという手もある。

重版待ち・返品待ち
 比較的入手が簡単なのが、「予想外に売れてるので一時品切れ」[重版待ち]とか、「新聞書評や著者のテレビ出演など(パブリシティと言う)で一時的に注文が殺到して品切れになってるけど、書店が積んでる分の返品がそのうちドッと戻ってくるから重版はしない」[返品待ち]という状態。
 この場合、版元には在庫はないものの、書店によっては置いてあるところもある。だから、早く入手したければ足でまわればいいし、待つ気があるのならまた注文を出せばいい。しかし複数の書店で同時に注文を出すのはご法度。書店は客注品がキャンセルになっても返品できないので、損害をこうむる。それがイヤで客注を受けない書店もある。

流通トラブル
 悲しいながらけっこう多いのが流通トラブルだ。版元・取次・書店のどこがサボタージュしても本は届かなくなる。ルーズな版元が前述の「返品待ち」のために連絡なしに何日も注文を保留することがある。すると、取次や書店は「返事のないのは無い証拠」と受けとって、読者に「品切れです」と伝える。ほかにも注文のあがる過程、本の送られる過程のどこで事故が起きても、書店は「どうやら品切れらしい」と考えてしまう。
 もちろん客注品の流れを必死に追いかけてくれる書店員もいるが、すべての書店にそれを期待するには、客注受注は書店にとっての利が薄すぎるのも事実だ。
 言語道断なのが、少部数の専門書や小版元の本など取り寄せに手間のかかる本だと見るや、「品切れです」「その版元とは取引がありません」とごまかす書店員だ。怒り心頭に発する話だが、そういう書店はどのみち駆逐されていくのだろうと楽観している。

データベースの誤用
 ここ数年ひどく増えてきたのが、書店員がオンラインで本を探して「在庫無し」と表記してあったので「品切れです」と答える例だ。
 一見、すぐに返事が来て便利なようだが、現状では本の在庫状況について信頼のおける総括的なデータベースは存在しない。多くの書店が使っているデータベースでの「在庫無し」とは、取次と(出版VANというバカ高いシステムを利用している)大手版元に在庫が無いという意味であって(じっさいはそれすら不確か)、中小版元の本がほんとうに品切れかどうかはわからないのだ。しかし、データベースの表記の悪さもあって、書店員がそれに気づかないとき、いわば「ニセ品切れ」が起こる。これはすべての人にとって不幸なことだ。
 オンライン書店のなかにも、この「在庫切れ=品切れ」という勘違いをしてしまったところがあるが、すでに是正されている。とはいえ、それは「版元に発注書を出して問い合わせてみる」という旧来の方法に戻ったにすぎない。

 結局いまでもほしい本の在庫があるかどうかをたしかめるには、ちょくせつ版元の営業部に問い合わせるのがいちばん確実な方法ということになる。とはいえ、このままで良いはずがない。そこで版元ドットコムは……、とはじめようとしたが長くなってしまったので、また。

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