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「twitter」その俳諧的なるもの

 私の周りも「ツイッター、ツイッター」って声が大きくなってきたので、最近twitterに参加しぼちぼちつぶやいております。
 当初は「だから何?」の世界だったのですが、著名人や業界関係者を探して、その人たちの「なう」がわかったりちょっとした裏話が聞けたり、またリンクをたどると新しい発見があったりで、これはなるほど使えるなぁ〜と、面白そうな人をフォローしているうちに、というよりフォローリストに入れた瞬間からあっという間にフォローしてくれる人が膨らみ、さらに未だよくわからない「リツイート」のつぶやきまでタイムラインに表示されるものだから、しばらく目を放すとお目当ての人がどんどん過ぎ去ってしまい、こりゃ整理するのが大変という状況になっております。
 たぶんそのあたりを解決する機能はあるでしょうからそのうち何とかなるでしょう。ではまた。

・・・ということではなくて、「twitter」なんて遠の昔から日本人は、やっていたという話。

 小社が深くかかわっている俳句の世界、遡れば400年も昔の俳諧の時代から「座の文藝」としてtwitterと同じシステムが既に日本に存在しておりました。
 限られた文字数の中で如何に表現するかなんて、日本人の得意な短詩形文学そのものですから…。

 無理矢理自分の土俵に引っ張り込んでいるようで恐縮です。
 
ここで学術的なことは、はしょりますが、芭蕉という人たちがやっていた「連句(歌仙)」などはまさにtwitterそのもの。多少制約がきびしかった、つまり140字も使えず多くて17文字だったり、途中「月」や「花」「恋」をテーマに詠み込まなくてはいけないなどのルールはありましたが、型にはめることで共通意識を確かめ合いコミュニティとしての結びつきを強いものにしておりました。

 説明だけではわかりづらいでしょうからちょっと例をあげてみます。
 芭蕉七部集のうちの「炭俵」に収められている「空豆の」の巻。
twitter風にすると、

 いまどうしてる?

BASHO深川なう。(原文は「ふか川にまかりて」)

KOOKU@BASHO それでは参ります。

KOOKU「空豆の花咲きにけり麦の縁(へり)」(発句)

BASHO@KOOKU「昼の水鶏(くいな)のはしる溝川」(脇)

TAISUI@BASHO「上張を通さぬほどの雨降りて」

RIGYU@TAISUI「そっとのぞけば酒の最中」

BASHO@RIGYU「寝処に誰もねて居ぬ宵の月」(月の座)

KOOKU@BASHO「どたりと塀のころぶあきかぜ」

RIGYU@KOOKU「きりぎりす薪の下より鳴出して」(折立)

TAISUI@RIGYU「晩の仕事の工夫するなり」
     ・
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     ・

 つかず離れず従うかと思えば転ずる、これを見ただけでも見事な付け運び。なかなか味わい深い言葉の措辞ですよね…、よね!?
 まあこんなふうに「付け合い」を延々と続け、前後表裏四九36句目を挙句(あげく)として一巻きが終了します。ちなみに「あげくのはて」はこの挙句からきております。
 
 一巻の構成は起承転結がきちっとなされ、月・花・恋などの縛りも忠実に詠み込み、森羅万象、人生曼荼羅が織りなす小宇宙が歌仙には存在しました。江戸時代には庶民でさえもこんな優雅な世界を共有することができたのです。

 さて明治時代になると、のぼさん(正岡子規)がこの発句を独立させた俳句にハッシュタグ(#haiku)を付けてツイートし始めました。そして #haiku を付けた人たち同士で、気に入った句を「☆ふぁび(favorite)」る「句会」というスタイルを確立しました。
 そして、このスタイルは現在でも俳句を愛好する人たちの間に受け継がれております。

 つまるところ「twitter」なんてツールとしては新しいものかも知れませんがシステムとしてはすでに日本の先賢たちが開発済みだったのです。
 残念ながらすべてオフ会としてやっていたので、この俳諧連句や句会が爆発的に普及するということはありませんでした。
ネットにも繋いでおけばよかったのに……。

少々悪ふざけが過ぎましたか、おあとが宜しいようで。

注)KOOKU→孤屋、BASHO→芭蕉、TAISUI→岱水、RIGYU→利牛。#の前後は半角空き。
 
飯塚書店のTwitterのアカウント→ http://twitter.com/izbooks/

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