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今年はどんなデジタルな年に!?

 昨年12月に版元ドットコム主催で行われた「版元ドットコム入門 電子書籍の作り方」は、会の冒頭ポット出版の沢辺社長の報告によれば200人の定員が3日でいっぱいになったという活況ぶり。このことは間違いなくいま出版業界のなかでいわゆる電子出版への期待と注目が集まっていることを明らかになった。
 電子書籍に限らず、ネット書店の台頭とインフラの整備ということを考えても数年前の比でないぐらいに、出版業界のデジタル化が小さな版元にも押し寄せている。無理にでも乗らなければ遅れをとるのではないかとさえ思えるくらいだ。無論、版元ドットコムの活動というのは、こうした時代の流れとともにデジタルインフラ供給していき、つねに可能性を開拓し続けてくことだと思っているが、そのことがいよいよのんびりとしてはいられないことになりそうだ。
 はたしでどれだけデジタルな年にできるか。たぶんそんなことを思って新年を迎えた版元も少なくないはずだ。

 駿河台出版社では、昨年7月に編集長のパソコンが使えなくなったことを機に大々的なハードの入れ替えとシステムの刷新を行った。とは言っても所詮は小さな版元。全部で4台のマックを入れた程度のこと。ただ、そのほかにバックアップ用のハードディクスを2台、プリンタサーバを2台、ファイルメーカーのライセンス10台分等々規模としてはこれまでにないぐらいのハードやソフトの買い増しをした。これはもちろん今後のことを見据えた大きな投資だ(…そういえばCS4も買いました)。
 当初は、というか私個人としては8月ぐらいにやろうかと考えていたのだが、突然7月になり、予定返上で取りかかった。ハードのセットアップ自体はさほどのことではない。今回、全部で6台あるプリンターをすべて用途ごとに割り振り、コンピューター上で選択できるようにした。これは伝票用のプリンタ、ISBNプリント用のプリンタがすでに稼働していたので、それに住所ラベルプリンタ用などに割り振って紙を取り替える手間をなくした(割と手間なので)。
 それはよかったが、これまでOS9でFMPro5.5で動かしていた注文短冊ソフトをコンバートしてOS10.5FMPro10で動かしてみたところまったくダメで、急遽全面的に作り直すことにした。これが地獄の夏休み突入のきっかけとなった…。
 すでに伝票と請求のシステムは2年前から動いており、こちらがFMPro7ベースで作ったので、問題なくFMPro10に移行できた。しかし5.5のファイルは移行したとたんレイアウトの文字化け、リレーションがめちゃくちゃになり、まったく使い物にならなかった。でもそこで面白いこともわかった。FMPro7はソフト内でシフトJISとUnicodeを共有して使うようになっていて、10では完全なUnicode化されている。だからファイルの移行は、5.5→7→10とやらなければいけないのだ。ううん、これは勉強になった。
 結局、リレーションがダメになっているので、それをすべてつなぐのは至難の業(100近くあるリレーションを一つ一つ検証することはできないし、作った本人ももうなんのためのリレーションだったか覚えてない)。仕方がないのでゼロから作ることにした。
 ゼロから作ることのメリットは、これまでの不具合を調整できることだ。使い方の部分でも大きく変えられる。その一つに、採用注文用と通常注文用に二つ用意されていた注文短冊ソフトを一本化することと、これまで念願であった注文短冊ソフトと伝票・請求ソフトの連結だった。
 これまでは注文を受けてソフトに入力しても短冊が出てくるだけ。簡単に言えば短冊プリントソフトだ。それでも手書きでやるよりはるかに効率がよかった。書籍のデータはもちろんのこと書店名もデータベースから引いてくるので入力の手間がはぶける。しかし問題は予約注文など、出荷がすぐにされない書籍の場合、短冊をプリントアウトしても紛失したり、多くの短冊のなかにまぎれて客注なのにすぐに出荷されないなど、事故短冊になっていた。もっと最悪な場合には、ノートにメモをとっておきながらすっかり忘れてしまう。このことで頻繁に書店からの問い合わせがあった。しかも、書店からの注文の確認はできても出荷までの確認はできない。だからいつも返答は「出荷されたはずなんですが…」(小さい会社なので様々な業務のなかでのことなので…、書店さんすみません!)。
 今回の改善は、こうした事故がおきないようにデータベースとして蓄積し、出荷したかしないかを各々の判断でステータスを変える。出荷処理を終えるとかならず伝票化されるので、出荷されたかどうかも確認ができる。運用がはじまってまだわずか2ヶ月(あ、これ版元ドットコムの忘年会の日に書いてます)だが、この部分ではかなりの成果をあげている。
 また倉庫の出庫管理も合わせて運用できるようになった。自社で倉庫管理を行っていて、書籍の出し入れの状況は、重版のタイミングに関係してくる。これまでは倉庫で在庫は「少なくなっている」という報告のみで、何冊であるとか、いつなくなりそう、ということは報告されなかった。すると当然、知らないあいだに切れていて、誰だきらしたのは!という話になる。これでは重版のタイミングが遅くなってしまう。これには各倉庫間の出荷状況の把握と、日々の出荷状況の把握がある。これがようやく2週間ほど前に運用にたどりつけて試験的に運用している。うまく数字が出てないところがあるがデータ上では問題ない。
 もう一つ。昨日、ようやく実用化されたところで事前注文管理部分がある。これは事前注文をデータ化する部分で、データを入力する部分はできていたが(というよりすべての作業は同じ入力のインターフェイスを使う)、出力と編集をする部分がかけていた。出力とは、エクセルファイルで書き出す。この辺りが便利で書き出すだけでなくメールでも送ることができる。いま事前注文のデータは、デジタルデータで渡しているがその都度どうやって書き出せばいいんですかと聞かれていた。それがなくなるというだけでも助かる。
 このように、あまりにも機能を詰め込みすぎたために開発にはかなりの時間がかかってしまった。おかげで本当の仕事である編集の仕事が滞りがちで、今年出るはずの書籍が何冊かとんだ…(すみません、「フランス語でEメール」が出ない理由の一つはこれなんです。もう一つは、インデックス作成用に組んだソフトがちょっとばかり複雑でして、メンテしないと運用できない状況で…。ごめんなさい、読者の皆さま!)
 ほかにもこれまで以上に細に入りこだわって作ったインターフェイスはとても使い勝手がよい。入力した先から勝手に検索をしてデータの準備をしてくれるのもいい。また、見本を送るためのラベル印刷のインターフェイスもずっと改善され、住所録の更新履歴も細かく残るようになった。目的に応じたステータスのコントロールも明確になり、喪中にも対応した(翌年は自動的に解除される)。
 いよいよ今度は商品データの版元ドットコムのサイトへの書き出し部分に作業はかかってくる。印税のシステムもすでにできあがって組み込まれているので、これからはそのチェックも残っている。
 はたしてこの果てしなき理想ソフトは今年中に完成するのだろうか?

駿河台出版社の本の一覧

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