年の瀬
年末になると京都では南座に勘亭流のまねきがかかったりするせいか、この日頃の想定するイメージが、歌舞伎の夜の場面、太鼓の音が小さく遠く鳴り響き、どんな背景かも見えない暗い舞台のなか、上手い具合に犬の遠吠え。そんなことを思いながら、日を過ごす。自然と気持ちも焦りだす。
2009年は振り返ってみれば歴史に残る年となるか、民主党へと政権交代した。
といっても社会党が政権をとった年もあった。第二次世界大戦前のワイマール共和国などは・・・・・・などと考えてしまうが、それでも画期的な年であった。
この流れに際して、ここ数年、「反貧困ネットワーク」の中で活動してきた、生活保護裁判連絡会という、現場のケースワーカーや弁護士で組織する団体があり、そのカリスマ的弁護士、竹下義樹氏を編集代表としてつくった『いのちくらし生活保護Q&A50プラス1』(現在7刷、近日改訂新版発行)、また先の「反貧困ネットワーク」の中、中心的に活動する尾藤廣喜氏を編著者とする『これが生活保護だ』を出版するのが小社である。
このような年に売れ行きはどうかというと、やはり世間にいわれるようにやっぱり希望どおりにはいかずと言わざるをえないが、それでも本の価値に変わりはない。日本のセーフティネットを支える生活保護に関しては、現状への詳説とあるべき姿を提示し、事典として手元に置きたい本であると定評をいただいている。
それに続く新刊は、指をたくさん折り曲げたいがそうもいかず、中野敏子著『社会福祉学は「知的障害者」に向き合えたか』、金澤誠一編著『「現代の貧困」とナショナル・ミニマム』他数点というところになる。前者はこれも政権交代の影響で「障害者自立支援法」の見直しということで、この機に乗じて読んで欲しい一冊である。過去の文献研究から、「知的障害者」の当事者性について触れ、障害を論ずるのではなく「人」としてどのような支援があるのか真摯に問い直すものである。また後者は貧困論ブームの中、流行に惑わされずに「貧困とはなにか」研究を続けてきた編著者の成果が見られる本である。まず貧困といっても何を貧困というのか、最低生計費を割り出し、国民の生存権を守るナショナル・ミニマムを考える。
相変わらずそのような本を出版しているが、大海のなかの一滴にも満たないような活動だなとも思います。自分たちの生活を良くするためにという流れを支えていけるのは、他の誰かではなくて、自分なのだと思う今日この頃。無力に涙。若田氏が宇宙滞在を果たしたのも2009年。それから宇宙に眼が向く年でもありましたが、近々では、月に有人基地に適したトンネル発見とな。月から地球を眺める新年もいつの日にかあるのかしら。しかし、地球という星の上でこの生命を生きる幸せはここにしかないはず、とも思う。まとまりのないことで・・・・・・
最後に、差し迫った年末は、本の話で盛り上がらなくちゃ。現状を変えることは難しくても、話をすればどんなに心強いか、版元ドットコムのお陰でよくわかりました。一年間、みなさん努力して培われたものを見てみたい。版元ドットコム関西支部の忘年会にどうぞおこしやす。