倉敷市児島は国産ジーンズ発祥の地
「国産ジーンズの発祥の地」は、岡山県倉敷市の児島(こじま)です-というお国自慢をさせてください。
ジーンズは、もともとアメリカ西部でゴールドラッシュ時代に、炭坑夫の丈夫なズボンとしてリーバイスらが考案したもの。そのアメリカ製の衣料を日本で国産化したのが、倉敷市児島にあった「マルオ被服」という、学生服を製造している会社でした。
この会社の経営者が学生服からジーンズの製造に切り替えを図かり、国産ジーンズを完成させたのは、1960年ごろのこと。当時、学生服はビニロンという繊維でつくっていたのですが、より丈夫なテトロンという新繊維が登場。同社はこの新素材を入手できず、業態の転換を迫られていました。そこで社長は常務と専務に相談し、ジーンズの生産を決意したのです。厚手の生地を加工する技術を生かして「ビッグジョン」という社名(ブランド)で急成長し、70年代にはテレビの月曜ロードショーのスポンサーになるほどになっていきました。記憶にある方も多いのでは。ちなみにボブソン、ベテイスミスなども児島の企業です。
小社の新刊『日本ジーンズ物語』はビッグジョンの元専務(83歳)と元常務(73歳)との対談も収録。国産ジーンズ誕生の経緯を語っています(当時の社長は亡くなっています)。この対談が実に面白く、ジーンズファンの方なら、ぜひとも知っておきたいところ。本書では、こうした歴史的背景や、現在活躍する「キャピタル」「藍布屋」などファッション業界で注目を集める新しい企業トップの取材記事などを掲載してあり、デニムに関心のある方には興味深い内容になっています。
この「ジーンズの聖地」児島では、今もジーンズ関連の100以上の関連企業が集積しています。最近では、染色工場やメーカーの直営店などを巡る、ジーンズの写真が全面にプリントされた「ジーンズバス」が運行され、観光スポットとしても注目されています。例えば、ジーンズの復刻品を展示や歴史や製造工程を紹介する「ジーンズミュージアム」、生地やデザイン、リベットなどのパーツを選べたりするオリジナルジーンズを作ってくれるメーカー、ハンカチやTシャツなどの藍染め体験ができる染色工場なども見学できます。
この産地体験ツアーが好評で、観光客が増えているそうです。