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現代フランス作家マリー・ンディアイ来日

現代フランス人作家でもっとも注目されているマリー・ンディアイ(Marie NDiaye)が10月20日から初来日する。今回の来日は、10月に刊行が予定されている『ロジー・カルプ』(早川書房)、『心ふさがれて』(インスクリプト)、『ねがいごと』(駿河台出版社)のプロモーションもかねて。11月まで滞在してその間に、講演等を行う。

現在までに決まっている講演は次の通り。

作家マリー・ンディアイを囲んで
10月22日(水)19:00
於:東京日仏学院 エスパス・イマージュ
聞き手:笠間直穂子(『みんな友だち』『心ふさがれて』『ねがいごと』訳者、上智大学非常勤講師)、ミカエル・フェリエ(作家、中央大学教授)

後援・協力:在日フランス大使館、中央大学、早川書房、インスクリプト、駿河台出版社

プレス取材日は10月20日、22日の午後。連絡先は下記の通り。

株式会社 早川書房
広報課 依光孝之(よりみつ・たかゆき)
tel 03-3254-1557 fax 03-3254-1550
編集部 山口晶(やまぐち・あきら)
tel 03-3252-3113 fax 03-3252-3115

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マリー・ンディアイが注目されるのは、まずその経歴にあるだろう。17歳で作家デビューをはたし、今回翻訳される『ロジー・カルプ』で2001年にフェミナ賞を受賞。
フランスでも評価が高い。すでに10冊以上の著作を持つ。

もう一つは、かつてのクレオール文学のような移民文学とは異なり、フランスで生まれた移民2世としての立場から書かれた文学であるということだ(じつは、現代フランスはすでに2世ではなく3世、4世と移民たちの層が存在する)。

ンディアイの著作は短編集『みんなともだち』(インスクリプト)がすでに翻訳されており、刊行時には、堀江敏幸、豊崎由美、宇野邦一などによって紹介された。いわば、海外文学にとっては待たれた作家の登場となったわけだ。

今回、そんな彼女の作品が3作品訳される。『ロジー・カルプ』は作家でもある小野正嗣氏によって翻訳される。『心ふさがれて』『ねがいごと』は、『みんなともだち』を訳した笠間直穂子氏。どの作品も--というよりもマリーの文学につねに通底する--家族というテーマがとりあげられているが、その世界は独特だ。

『ねがいごと』では、子どものいない夫婦が主人公。子どもが欲しい、欲しいと思っているとクリスマスの夜に、突如、子どもが姿を現す。ところが、子どもが現れると当のふたりは、こころ(=心臓)になってしまうのだ。そこから子どもとふたつの心の奇妙な生活が始まる。

子どもの登場、こころ(=心臓)への変化は、なんの断りもなく、なんの中断や盛り上がりもなく訪れる。しかも白人の両親のもとに移民の子ども。さりげなく養子の問題に触れている。この物語についてンディアイ自身は「子どものいない夫婦がいかにして親になるのか」がテーマと語っている(『ねがいごと』に特別に寄せていただいたメッセージより)が、複雑化していく現代の家族像を描いているのだろう。

『ねがいごと』は児童書として書かれてはいるものの、すでに紹介したとおり大人もじゅうぶんにに楽しんで読めるストーリーになっている。決して子どもだましのようなストーリーではない。むき出しの愛情とそれに困惑する子ども。バランスを崩していく愛情関係が調和をとりはじめ、最後にはお互いの愛情を認めあう…。おそらく他の作品に比してテーマがわかりやすく描かれているので、ンディアイ入門としても読める。

海外文学がふるわないなか、3冊が同時に刊行されるというのも異例なら、それに合わせて著者が来日するというのもめったにないことだ(もちろん刊行状況からフランス大使館をふくめ動いた結果ではなる)。この秋、ちょっとした話題になるにちがいない。

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