書店員さんの声@mixi
私は業界紙『新文化』の携帯MLサービスを利用していて、たとえばこれを書いている今日4月25日の日中には、「渋谷Book1st撤退へ」なんてヘッドラインニュースが飛んできた。
ちょうど新宿ルミネ店を営業してきた夕方のMLで、なんだか笑えない冗談のような話だ。
会社のPCでは『文化通信』の速報をとっている。「週間総合ランキング1位・魔法先生ネギま! 18巻」なんてニュースを見て、店内ランキングの総合一位が『ケロロ軍曹』の侵攻を受けて嘆いていたのは、新宿の大手書店の文芸担当さんだったかしら……などと、小賢しく業界を憂う乾いた笑いを浮かべている。
ここ最近続いている版元や書店の事業停止情報も飛んでくるので、目先の仕事にもたついて週一回の業界紙にも目を通せない身にはありがたい。いや、ありがたかった、か。
過去形にしたのは、今はこれら業界紙MLよりも早く「あぶない版元情報」やら「売れ筋コミック情報」が入手できているためだ。ソースは、今や当たり前すぎて話題にもならないSNS・mixiである。(わからない方は、googleなどで調べてみてくださいませ)
さまざまな書店員向けコミュニティに、数百〜数千の参加者がいる。
「大手チェーン書店員」という集まりでは、「大手は大手なりのつらさがある」ことがわかるし、「売り場の裏でバカヤローと叫ぶ」という掲示板では『暴れん坊本屋さん』も真っ青の珍事・珍客の数々に泣き笑い、「万引き対策」という実用的な内容はハイレベルで勉強になる。参加者全員が書店員というわけではなくて、取次や版元の人間も混じり込んでの参加者数だが、そこで交わされる生の情報は、粗いながらも示唆に富んでいておおいに役立つものばかりだ。
たとえば、少し前に木村拓也の写真集『%』の入荷数の情報交換がなされていた。「入ってこねー!」「客注は蹴らないみたいよ」「だったらいっそ……(ごにょごにょ)」などなど、飛び交う悲喜こもごものネタについて、そのまま自社営業時のトークの種にさせていただいた。
ビジネス街ど真ん中のとある書店で、なじみの文芸担当さんが勇猛果敢なボーイズラブフェアを仕掛けた時には及ばずながら少し宣伝させていただき、以降もいいお付き合いをさせていただいている。
版元の事業停止情報は、まず「あれ、●●社って返品不可なの?みんなのところは?」といった声で表面化した。「あれ、ウチの棚にはまだ在庫あるぞ、だいじょぶかな?」「え、そうなんですか? 明日社員に話してみます」といった流れで、都心部も地方も巻き込んで書店員同士の情報交換がなされていく。公式発表があってニュースに載ったあとには、「取次の●●は大丈夫でしたよ」「返ってきた。がんばって売ります(泣)」など、リアルな事後処理報告が続いた。
なにより恐ろしいのは、版元営業マンの値踏みや出版社への意見などが、あけすけに展開されていることである。逆にありがたいのは、書籍レビューなどの機能で読者カードではわからない(または返ってこない)情報の補完ができることである。アマゾンのレビューがちっとも増えないのに、mixiのレビューが数十個もUPされて、しかも星が平均4.5もついていた、なんてことが弊社でもあった。あとは簡単。よく知る書店員さんに、そのリンクを送れば応急の営業は完了する。アマゾンの「さくらレビュー」に頭を悩ませるよりも(かつては弊社もそんなことしてました・笑)、よっぽど地に足のついた広報活動ではないかしらん?
こうした動きの本当の意味を、実はまだここで語れるほど理解はしていない。
「しょせんネット上の情報・付き合いなんて」と言ってしまえばそれまでではある。
ただ、メディアがネットの後塵を拝する現世の縮図が、こんなところでも表面化してきたか、と感心している。今ごろこんな話を版元日誌に書くのははばかられるくらい、「それ」は先へと進んでいるように思う。