究極の営業?
はじめまして、の方がほとんどと思います。昨年より仲間に入れて頂きました「ほんの木」と申します。
「ほんの木」は、今年で創立21周年を迎える、現在スタッフ5名の小さな出版社です。
創立初期に出版した中森明菜の写真集の売り上げを元手に、環境問題、エコロジー、平和、障害者問題、ボランティア、シュタイナー教育、自然治癒力などのテーマを通して、NGOや市民運動を後押ししようと走り続けてきた、ある方の言葉を借りれば「市民運動のような出版社」です。(うれしい言葉でした)
私自身も、以前はNGOのような仕事をしていたので出版業界はズブの素人です。
あるきっかけからNGOの海外事情を「ほんの木」の本に書かせてもらうようになったものの、この本をなかなか書店で見かけない。ほかにも面白い本をたくさん出版しているのに、ほとんど見かけない。
「どうしてもっと本屋さんに置かないのですか?」
当時スタッフは2.5名で営業担当は長い間いないとのこと。
「…それなら私売りに行きます」
これが私のほんの木営業の始まりでした。
「こんなにいい本が売れないワケがない!」と今思えば無知ゆえの自信満々だった私も、細々ながら書店さんを回ってみて、本を売ることがいかに一筋縄ではいかないか、を思い知らされました。
書店に置いて頂く、しかもよい場所に長いことPOP付きで平積みして頂いても売れないとなるとアタマを抱えます。タイトルだろうか、装丁だろうか、テーマだろうか…
「広告打つお金がない? じゃあどうやって知ってもらうんですか?」との書店員さんの言葉にマスメディアへの露出がキーであることを痛感。でも広告など打てないのでパブリシティに力を入れるようになり、同時に編集にも携わり、売るためにデザインにも手を出し、在庫管理も…小さな出版社の苦楽を味わっています。
広告がすべてなら、小さな出版社はスタート地点にも立てないことになりますが、本という商品が魅力的なのは、たとえ一人の人でも、その人の心を深く動かすことができると、出版社の大小にかかわらず伝染しやすいという性質だと思います。
昨年末出版した「アマゾン、森の精霊からの声」という本は、20年近くにわたり、ブラジルアマゾンの熱帯雨林の保護と先住民支援をしている活動家の女性が書いた本ですが、彼女のダイナミックな人生と豪快な活動ぶりに共感した読者の方から「30冊下さい」「50冊下さい」と何人かからお電話を受けました。ある高校の先生は、ご自分の生徒たちにクリスマスプレゼントとしてあげたいから、ある女性はお年賀の代わりに…広告など出していないのに、です。
広告を打てば確かにもっと動くでしょうし、打てるにこしたことはないのですが、人の心が「動く」とき、本は自ら「動く」ものなのだ、ということを再認識した出来事でした。
NGOにいた頃から、「知られていないテーマをいかに人に伝えるか」に関心があり、その頃も「やっぱり広告か…」と思ったりしていましたが、このような本に出会うと、人の心を動かし、その人が自発的に動き始め、その連鎖が起きるような本が本当に「いい本」であり、恐らくそれが一つの商品の究極の広報、営業なのではないかと思わされます。きっと究極の営業は編集であり広報であり、それを入れ替えてもまた真なり、なのではないかと感じますが、これは営業の言い逃れでしょうか?!
「ほんの木」については、以前、ポット出版の沢辺様にも版元日誌でご紹介いただきましたが(ありがとうございました!)、小社代表が書いた本があります。
「売れない本にもドラマがある」柴田敬三(ほんの木代表取締役)著
すべての掲載本に販売実部数を明記してある珍しい本です。版元ドットコムからもお求め頂けます。
今後ともよろしくお願いいたします。