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『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』という翻訳書が2000年に翔泳社から出ていました(現在は品切れ)。インターフェースのデザインが悪いことや用語の使い方が適切でないことで、いかに多くの人がコンピュータやソフトウェア、ハイテク家電などを使うときに苦労・苦痛を強いられているかを語った本です。毀誉褒貶相半ばする山形浩生氏の翻訳・あとがきであったのでこの本の評価も大きく割れてしまったようですが、この手のことを取り上げた一般向けの本としてはかなり早い時期のものだったでしょう(今なら「ユーザビリティ」の本、と分類されるかもしれません)。
 あれから6年以上が過ぎて、事態はめざましく改善されたでしょうか。
 残念ながらそうでもなさそうです。

 版元ドットコム事務局の運営に関わるようになって1年近くになりますが、折に触れて上記の本のことを、何度も思い出しました。版元ドットコム関係でお問い合わせを受けるたびに「そもそもこのような問い合わせが発生したのはなぜか?」と考えました。
 次のように分類出来そうに思えました。

  1. 当然期待される(ことが予測される)機能がそもそも備わっていない。
  2. 機能はあるが、その利用法を分かりやすく説明したFAQなどが不足している。
  3. 機能のためのデザイン(そこに使われている用語、ボタンの名前、画面上で存在している場所などなど)がよろしくない。
  4. 利用する側とのコンピュータやインターネットに関する基礎的な知識のずれ。

 1.に関しては解決法はある意味単純で、せっせと開発にいそしめばよいわけです。2.に関してもそのようなものを増やしていく努力をすることである程度解消されます。問題は3.と4.です。そして、3.と4.は実のところすっぱり分割はできず、からまり合っています。
 たとえばどのような「用語」を使えば最適なのかということひとつにしても、利用する人がどのくらいコンピュータやインターネットに関する基礎知識を持っているかによって変わってきます。『実行』というボタンをひとつつけるにしてもこれまでほとんどコンピュータやインターネットを使ったことがない人に対しては:
「以上でよろしければ下のボタンをマウスで一度だけ押してください↓」
と添え書きをすべきかもしれません。
 一方インターネットに慣れ親しんでいる人々の場合は、こういう仕組みのほとんどが実はボタンをクリックする必要さえなく、最後の入力窓に記入を終わったらEnter(Return)キーを叩くだけでいい、ということを知っているかもしれません。
 どちらか一方に合わせれば、一方の極にいる人々にとっては全く理解できない操作画面になるでしょうし、他方にとっては分かり切ったことが延々と無駄に繰り返される鬱陶しくて効率の悪い操作画面になるでしょう。

 コンピュータ操作は難しいと感ずる多くの人がいると同時に、「コンピュータなんだからそれくらいは当然出来るだろう」という過剰な期待というものが存在しています。「いや実はそれはできないんですよ」ということになると「なんで ?!」と不満が爆発することもあります。それなりにコンピュータの利用に慣れている人々の間にもけっこう見受けられることです。
 今現在の技術で出来ないことはどうしたって出来ないのですが、これもある面ではコンピュータの利用を促進する言説の責任かな、とも思います。コンピュータやインターネットを積極的に利用してもらおうとする時、どうしても「何が出来るか。それはどれくらい簡単で便利か」ということばかり語りがちになります。100メートルを10秒程度で走りきるオリンピック選手であっても滑空は出来ないというのは当たり前なのですが、コンピュータにからむ話となると(できますとはひと言も言っていないのですが)どうも滑空もできるかのように伝わってしまう。滑空しつつ朝ご飯の用意もしてくれてついでに人生相談にものってくれるような壮大な勘違いをしている方もいます。

 ほんとうは、版元ドットコムにめったに問い合わせの電話がかかってこない、という状態にするのが最善です。問い合わせなくても利用する人がその場で分かる、分からなくてもちょっと調べればすぐ分かる、という状態にしていくことが一番大切なことです。
 確か社内の会議で「今年はサポートに力を注ぐべき」と力説したはずの私でした。今年それに関してどのくらい進展させられたのか、いささか心許ないですが。
 努力を続けていきますが、事務局に問い合わせなくてもよい日が来るまでは遠慮なくメールや電話を寄せてください。問い合わせてくだされば私たちにも「人は何が分かりにくいのか」が分かります。それが分かれば改善でき、その改善はおそらく問い合わせてくれた人以外の多くの人の利益にもなるでしょう。

※タイトルは「非常に多くのコンピュータ・ソフトでヘルプを表示するためのキーが共通してF1 キーである」という意味ですが・・・説明しなければならないようなタイトルをつける私がいけないと思います、すみません。

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