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ブックオフに営業へゆく日??

山手線のある学生街、駅から徒歩7分、黄色い看板が目印の新古書店を訪れた。
思わずこちらがうつむいてしまう、黄色い声で「いらっっしゃいませー」の大合唱を覚悟して、店内へ足を踏みいれると・・・。んぅ?店内を見渡すと、大きなカウンターに学生アルバイトとおぼしき店員が3人。作業の手を止めて軽く会釈しながら、「いらっしゃいませ」。すぐにそれぞれの仕事に戻る。んんぅっ、なんか違うぞ。

近くに弊社の取引先の大型書店もあるが、今日、この駅で降りたのは、このブックオフが目的だ。
「あのブックオフは、すごい!」と、業界通の知人に教えられてやって来たのだ。例のマニュアルで出迎えられなかった私は、少し拍子抜けしつつ店内を見渡した。漂う雰囲気は新古書店というより古書店。神田神保町とか早稲田の専門性の高いそれではなく、古書店というより、カジュアルな古本屋さんと言った方がしっくりするだろうか。200坪ほどの店内を見渡すと、入り口近くにCD、飾り気のない床に置かれたボックスは映画のパンフレットだろうか。奥の方はコミック売り場のようだ。

お目当ての人文書コーナーを横目で見ながら、まずは店内を一周。平日の午前中、当方スーツにネクタイ姿につきアダルトコーナーは遠慮したが、なかなか整理が行き届いている。100円均一の文庫棚に、表紙が見えるように陳列してアクセントを付けてあったり、おすすめ本コーナーもある。反対に、ない!ない。新古書店に付物のゴミが。これには驚いた。じっくり隅々まで確認したわけではないが、少なくとも人文書の棚には、一目でわかるそれは見当たらなかった。

出版関係者には、新古書店を毛嫌いする人も多い。もちろん万引きの問題、著作権料の問題はある。
でも本当は、商品価値の無いものに値札つけて売っている、その光景が許せない。という感情的理由もあるように思う。誤解の無いように申し添えるが、本の良し悪しは、読んだその人が判断すればよい事だ。でも何年も前の学校案内や、某大先生作、宗教的自伝小説の不揃い巻などは、売る側だって商品としては、ゴミ同然だと判断していないはずがない。ゴミにカネを払ってくれるお客がいれば、儲けもんといったところだろう。

しかし、ここのブックオフ、どうも本を選んで置いている。いわゆる「棚」を作っているのだ。吉本隆明が棚一段あったり、中沢新一の隣に『人間と神話』(せりか書房)なんて本が差してある。本に関する本のコーナーもあった。「本の雑誌」や「レコレコ」のバックナンバーも売っている。よく判らないが、美術書のコーナーなんかも時間をつぶせそうだ。

しかも見てしまった。一人の客に「○○の本はどこにありますか」と尋ねられた店員が、まっすぐに単行本の棚へ進み、次に文庫の棚の前へ行き、「こことここに無ければ、あいにく在庫がございません」と答え、にこやかに元の持ち場へ戻る姿を!

売る商品を選ぶといっても、新古書店ゆえ仕入の制約もあるだろう。しかし、この本屋さんは、明らかに一冊の本に価格の安さだけではない付加価値をつけて顧客へ提供している。

新刊書店への営業の途中だったので、ブックオフの黄色いビニル袋をさげているのは憚られて、小さな本を2冊だけ手にとってレジへ向かった。店員さんへ尋ねると、4、5年前から営業していて、都内に数店の支店があるという。「またお越しください」という言葉とともに本を受け取り、数年ぶりに足を踏み入れた新古書店を後にした。もちろん、「ありがとうーございましたー」の合言葉はない。

ところで、周囲の新刊書店4店には、2000年以前の「吉本」本は一冊しかなかった。「中沢」本も最近の刊行のみ、さっき見かけた氏の出世作「チベットのモーツァルト」はどこにも置いていない。(もっとも講談社学術文庫版の在庫は確かめなかったけれど・・・)

新刊と古書、リメンダー(日本でいう非再販本)を同じ棚に並べて売る、アメリカの伝説的な書店、パウエルズ・ブックスのような売場をつくる書店は、ひょっとしたら新古書店から出てくるのかも知れないと感じてしまった。ブックオフが、私の営業コースに組み込まれる日が、遠くない将来、やって来るのかも知れない。

*先の業界通の知人によると、このブックオフはフランチャイズ店で、かなり特殊な店だそうです。

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