書誌データ・在庫データの重要性の認識が業界全体に広まってきたって話。
この1年、出版業界で、書誌・在庫データ(デジタル)が重要だ、っていう認識が格段に広がった感じが強くします。
5月の版元ドットコム会員集会には多数の参加者が集まったし、懇親会の会場で、取次会社とネット書店から「デジタルデータで送ってほしい」「送ってくれるところを優先しますよ」っていう発言があってますますその「感じ」が強まりました。
先日、「本屋の村」という、書店の販売管理システムを自分たちでつくっている「パソコン好き」の書店グループの人たちが東京に来たんで、一緒に昼飯を食ったんですよ。
パソコンにバーコードリーダーをつなげて、POSレジを実現しちゃってます。
お店のすべての在庫を単品で管理することもできます。売り上げデータをみれば、どの本がその書店で何冊、いつ売れたのかをみることもできます。
ユーザーたちのメーリングリストに入れてもらっていて、やり取りを読んでるんですけど、まあ、初心者的な質問があって、それにスタッフが答えたりしてます。電話で教えあったりもあるみたい。ほんとに大変だけど、パソコン好き書店だけの集団じゃないんですね。
で、その単品管理、ですけど、それを実現するのに一つだけネックがあります。だれもが使える書誌データがないってことです。
本に僕らがつけてるバーコードは、単に数字を示してるにすぎない。その数字(主にISBNコードですけど)をISBNコードを媒介にして書誌データに結びつけて、はじめてタイトル・出版社・著社名が出てくるんですよね。だから、あらかじめそのシステムに書誌データを入れとかなければならない(もちろん、ネットにつなげておいて、ネット上にあるデータベースみたいなところから瞬時に書誌データを引っぱってくることも可能ですが)。
で、その書誌データ、だれもが利用できるものがないんです。みんな有料だってことです。
日販・トーハンといった取次会社の有料サービスに入れば、その日その日の納品データなどもコミでネットワークからダウンロードして、取り込むことはできるんですけどね。他の取次会社から本を仕入れている書店はダメ。費用も覚悟しなきゃ。
昼飯を食いながら「本屋の村」の人たちに言われたのは、出版社が(あるいは業界で)そうした書誌データをだれでも使える形でネット上に公開してほしいってことでした。
もちろん、こうした要望に応えられるようにしよう、というのが版元ドットコムは発足の一つの動機なワケです。
なので「本サイトに掲載されている、書影を除く書誌情報は、販売・紹介目的での利用に限り利用を認めます」という一文を入れているのです。んで、さらに、よりダウンロードしやすいフォーマットでも公開することを約束してきました。
ネット書店が取り扱う本は、版元が在庫の有る無しを、デジタルデータで業界各社に送っているものに(ほぼ)限られています。
ですから、書誌データ・在庫データの整備と公開と送信が、本を売ることにますます大切なことになっています。
で、そうした「大きな(ネット)書店」に限らず、小さな書店にとってもこうしたデータが必要になっています。
一冊でも多くの本を売るためには、こうした小さな書店でも僕らの本を扱ってもらうことが必要です(ってここんところはホントは具体的なフォローが必要なんですけど、今回はそのことは無視して決めつけておきます。やっぱ小さな版元の本はどうしたって大きな書店が中心になってる実態と必然もあるんで)。
できるだけ早い時期に業界全体でデータの整備・公開を実現したいもんです。