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当事者未満

– 『五体不満足』が身体障害に、『こんな夜更けにバナナかよ』が介護について奥歯に挟まったモノを引っこ抜いてくれた事を思い出しました。

これは「うつかもしれないと悩んでいた」という読者の方からいただいた手紙に書かれていた、『アカルイうつうつ生活』(小社)についてのコメントだ。

たしかに、『五体〜』や『こんな〜』はセンセーショナルで、おおかたの人たちが声に出しにくかった言葉を「引っこ抜い」た力があった。障害や介護の現場で苦しんでいる当事者の方にとっては、どうだったのだろう。

喘息やクローン病、うつ病。さまざまな病気の患者会を見学させていただく機会があった。気のおける患者仲間でしか吐露できない叫びやぼやき、切羽詰まった質問などを耳にして、聞く言葉ひとつひとつが不勉強ゆえショックで、当事者ではない自分はどこか気後れを感じた。ときどき、まるで患者自身が穢れているかのような自嘲的な発言をする人がいて、誰かに意見されることを拒んでいたようだった。

自分のような当事者でない人が「拒まれるのでは」と思い込み、勝手に引っ込めていたあやふやな疑問。障害や介護の当事者自身が本音で語り、そんな疑問を「引っこ抜い」てくれる場を作ったのが『五体〜』や『こんな〜』なのだろう。

– 「こころの風邪というより、こころの肺炎」ととらえつつ、ユーモアを忘れない著者のアドバイスは、うつ病の人や家族を温かく励ましてくれるだろう。(毎日新聞2004年4月8日 東京朝刊より)

すべての病気にその病気独特の悩みがあるように、こころというブラックボックスの病気とされている点にうつ病患者の悩みはある。捕らえ所のないこころについて悩む前に、うつ病は脳という臓器の機能不全であるのに、何かが壁になって語られる場所がない循環。どうもこころがうつうつすることが多く、「あれ、私はうつ病なのかな?」と不安になることがある。うつ病の当事者でもある上野氏の「ユーモアを忘れない」アドバイスが、誰にも相談できない、うつ病の当事者そして当事者未満の人が抱える悩みを、きっと「引っこ抜い」てくれるのだろう。

アカルイうつうつ生活』 上野玲著

毎日新聞 2004年4月8日 東京朝刊/書評

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