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地方で出版10年

 東京在住の方が岡山に立ち寄って話しをしている中で、「岡山はなんか違いますね。ゆったりするような、昔に返ったような感じがする。東京とは随分違うし、京都とも違う」と言っていたという話をまた聞いた。「田舎だね」という意味もあるのだろうが、最近は好意的に受け入れている。この10年間、地方で本をつくってきて思うのは、東京の人が感じるこの地域特性こそ掘り下げていくテーマであり、こんな面白いテーマはない、ということである。

 自然の環境や人、地理的条件、歴史的背景などが醸し出す、地域特有の雰囲気というのは、どこの地方にもある。日本全体を面白くするには、各地でこうした地域の特性を際立たせ、地域にいる人たちが主張していくことではないだろうか。その中で地域の出版社は、大きな役割を担えるのではないかと感じている。地域出版の編集活動は、特殊なテーマを扱うのなら別だが、東京で本をつくるよりも面白いことかもしれない。

 地方で本をつくるのは、例えば東京に比べて読者人口が少ない、著名な著者がいない、印刷や製本、デザインや流通など、ハンディキャップは意外と多い。しかし10年もやってくると、これらもやり方によって少しずつ克服できてくる。重要なのはテーマとその切り方である。幸い岡山には古代に吉備の国として栄えた歴史がある。そして桃やマスカットに代表される農産物が採れる温暖な気候や魚介類が採れる瀬戸内海のある自然があり、そこで育った人がいる。これで扱うべきテーマは十分である。

 地方出版では、古くから「地域を耕す」という言い方をよくしてきた。本にすべき内容を土を返すように掘り出し、文化の育つ土づくりをしていくということであろうか。それは地域の人と関わり合いながら、企画して編集し、誰でも気軽に読める本というパッケージにして後世に残すことである。読者が著者になり、著者が読者にもなる。地域の人とその地域の文化をネタに本をつくり、消費もその地域でする。地域でつくり地域の人が利用するわけだから、文化の地産地消ともいえる。もちろん関心がある人なら、それは全国どこからでも手軽に取り寄せることができる。地域出版は田舎でやる仕事としても面白い。

 ただ、地域出版でその経営をみてきて思うのは、本をつくるだけでは成り立たないということである。行政や企業の仕事も請け、パンフレットや記念誌、ホームページの編集も手がけ、10年目を迎えることができた。地域文化全般を扱い、本は表現手段の一つと考えることである。これからも地域の特性を生かし、さらに地域でしかできないことを追究していきたい。そして本にこだわりながら本だけにとらわれず、地域の人と文化を編集する会社を目指したい。  
 最近は次の10年を見据えて、出版企画の業務を兼ね、著者探しと読者の開拓という観点から、文化教室を手がけていこうと計画している。地域出版の模索は続く。

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