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ある世論調査が教えているもの

 イラクに自衛隊を派遣しようという。そして、もっともっと「国際貢献」するために憲法改正するべしという声は、今やそれが当然のように政治では議論されています。憲法9条も風前の灯火という感があります。私は今、30代ですが、よもやこんな時代がくるとは思ってもみませんでした。
 では、護憲・改憲のバランスが「いつ」から崩れたのかでしょうか。「9.11」以降ではないかと言う人もいます。そうかな、と漠然と思っていました。
 しかし、ここに偶然目にしたひとつの世論調査があります。1992年と2002年、10年間を対比しています。調査では「あなたは、今の憲法を改正する必要があると思いますか、それとも改正する必要はないと思いますか」と尋ねています。「改正する必要があると思う」が10年前の92年は35%、02年は 58%。一方、「改正する必要はないと思う」は92年は42%、02年は23%に減少しました。この10年間に大逆転があったことを示しています。しかも、その中で注目すべき特徴は、30代が逆転をリードしているという事実です。憲法改正派の折れ線グラフを右肩上がりに押し上げているのは私と同世代の人たちだというのです。高齢層はむしろ逆転にブレーキをかける役割を果たしているという点があります。戦争を知らない世代と知っている世代の差でしょうか。う〜ん。
 いずれにしても、ハサミ状の2本の折れ線グラフは、93年から94年頃に交差し、以降はそれぞれ上方、下方に向けて離れていく一方のように見えます。この10年間に何があったのか。とりわけ私と同世代の人たち、30代から40代に至る人たちが、これまでの「常識」、少なくても私の中にある「常識」が覆るような、どんな出来事があったのでしょうか。
 バブルとその崩壊、冷戦の終結、湾岸戦争、阪神大震災、新しい歴史教科書、等々さまざまな劇的な変化はあって、どれも衝撃を受けたのですが、ただ、街にはモノがあふれていましたし、私自身は、酒、タバコ、ギャンブル(弱いけど)もいっぱしに覚えて、お気楽に過ごした10年でもありました。「なんか先行きがあぶなくなってきたなぁ、大丈夫かなぁ、でも、まだまだお気楽に過ごしたいなぁ」そんなお気楽な脳みそに、戦争がしたくてたまらない改憲派が、そっとすりこんできたのでしょうか。ある世論調査の結果についてそんなことを考えていたら、どこかの都知事がイラクで自衛隊が攻撃されたらという問いに対して「反撃して、殲滅してしまえ!」「日本軍は強いんだ!」と叫ぶのをテレビで見て、その後ろに300万の有権者の支持があるのかと思うとブルッときて背筋が寒くなったと思ったら本当に風邪をひいてしまった31才の誕生日の夜でした。

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