あらためまして、長野の出版社です。
先日、久しぶりに東京都心の大型書店、とくにガイド本売場を集中的にまわって、我ながら、このことを再認識しました。今回は最新刊『出張サラリーマンの信州イチ押し温泉紀行』の営業なので、どこへ行っても「長野の出版社オフィスエム…」と、話を始めるわけです。
実際は、大書店の、「ガイド・紀行」のような地方出版物が集まる棚でも、小社の本は良くて2、3冊の在庫という状況ですから、今回のようなズバリ信州の本は、むしろ少ないぐらい。胸を張って言えるほどの「信州の出版社」ではないかも知れません。
地元本が少ないのは、反面、何が何でも地元にこだわらない、ということでもあります。比較的早くから地方出版が盛んだった長野県内では、自分たちはまだまだ「若造の」出版社です。ほかの老舗各社とは違った本づくりをしようと、テーマも著者も信州に限らず、どしどし本にしてきました。
振り返ってみると、「信州にぜんぜん関係のない本」が実に多い。例えば、『僕らはみんなキレている/脳からみた現代社会論』の著者はたまたま長野県在住ですが、『からだと心を診る/心療内科からの47の物語』の著者は関西在住です。
これらは、いずれも「信州」というキーワードだけでは、当たり前の話ですが、まったく「ヒット」しない本でありまして、これは書店においても同じではないかと、時おり不安に思うことがあります。
流通面で言えば、小社の取次が「地方・小出版流通センター」のみということも、一長一短があるわけです。上記の『〜信州温泉紀行』や、『信州・蕎麦学のすすめ』といった本は、「地方・小」取扱品として連想しやすいと思うのですが、『カンタンにできる/100の介護食』『生きる力を育む・幼児のための/柳沢運動プログラム』ではどうでしょうか。小社にとって、「地方出版物」が利点になる本と、そうでないものがある。この使い分けが難しい。本の特色づけが、読者の知るチャンスをかえって狭く、限定してしまうものでは意味がありませんから。
だからこそ、所在地でもテーマでも、あらゆる要素をキーワードに取り込んで、読者や書店が本にヒットする可能性を広げてくれる「版元ドットコムのデータベース」が必要なんですね。と、ひとり書店を巡りながら、あらためて感じた次第です。